今年4月から、遺伝性の乳がん、卵巣がん患者の検査や発症予防の手術の一部が健康保険の適用の対象になりました。日本赤十字社和歌山医療センターの遺伝専門外来の医師・豊福彩さんに話を聞きました。
検査や手術の自己負担額が大幅に軽減
環境だけでなく、遺伝的要因も関係して発症するがん。近年、遺伝子の解析技術が進み、血液検査で遺伝性のがんが分かり、それぞれに応じた予防や治療を行うなど、選択肢の幅が広がっています。しかし、全てに健康保険が適用されるわけでなく、自己負担が高額になることも。
そんな中、今年4月から、生まれつき遺伝に変異があるために、乳がん・卵巣がんのリスクが高くなる「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」の検査やリスク低減手術などについて、条件を満たす乳がん・卵巣がん患者に健康保険が適用されるようになりました。
臨床遺伝専門医で日本赤十字社和歌山医療センター遺伝外来の医師・豊福彩さん(写真)は「HBOCの人は、がんの治療後、反対側や他の部位のがん発症のリスクがあり、乳房や卵巣・卵管を予防目的で切除するリスク低減手術が効果的とされています。手術は、遺伝カウンセリングを受け、本人が予防切除を希望する場合だけ。希望しない場合は、フォローする方法を相談していきます」と説明します。
遺伝性のがんには“若年発症”“親族内に同じ種類のがんになった人が複数いる”などの特徴があります。豊福さんは「親族に乳がん・卵巣がんの人がいてもHBOCでない場合もあり、逆もあります。がんや遺伝に関する不安がある人は、まずは遺伝外来でのカウンセリングを考えてみてはいかがでしょうか」とアドバイス。
がんを発症していない場合、HBOCの遺伝子検査に保険は適用されません。しかし、変異が見つかれば、予防・治療に向けての方向性が見えてきます。豊福さんは「自身のこと、家族のことめ、さまざまな相談に乗ったり、情報提供や支援を行ったりしながら、今後のことを一緒に考えていきます」と話します。
“もしかして”と、気になる人は、遺伝外来のある病院での受診を検討してみては。
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