乳幼児の後頭部全体が平らになる絶壁頭などの症状
頭の形が気になったことは?
「頭と顔のかたち外来」のヘルメット療法について

 子どもの“頭のかたち(形)”が気になったことは? 頭の形は、顔のゆがみにまで影響するといわれています。和歌山県立医科大学附属病院形成外科に乳幼児対象の「頭と顔のかたち外来」が開設されて半年。頭のゆがみの原因や治療について話を聞きました。

朝村真一教授

朝村真一教授

医療機関での受診も視野に入れて

頭蓋骨は1つの骨で形成されているのではなく、前頭骨、側頭骨、後頭骨など、多くの骨が重なるようにして形成されています。頭蓋骨は脳の成長とともに、それぞれの骨のつなぎ目(成長線)が少しずつ広がり、大きくなっていきます。

頭の形が決まるのは1歳ごろまで。「乳児の頭蓋骨は脳の成長に対応できるよう、大人よりも柔らかいのが特徴的です。そのため、外部から圧力がかかると、頭がゆがむことがあります」と話すのは、和歌山県立医科大学医学部形成外科学講座・朝村真一教授(写真)。続けて、「1日のほとんどを寝て過ごす乳児にとって向き癖があると、向いている方向の頭蓋骨に長時間の圧力がかかるため、そこが平らになりやすいです」と説明します。

頭のゆがみのタイプは、後頭部全体が平らになる短頭(絶壁頭)と、右左どちらか片側だけが平らになる斜頭の2つがあります。朝村教授は「短頭も斜頭も運動や言語の発達にも影響がないので病気ではありません。しかし、本人にとって今後、丸坊主にすると格好が悪かったり、帽子をかぶると片方にずれたり、眼鏡がずれたり、頭のゆがみは日常生活の不便さだけでなく、コンプレックスにもつながります」と伝えます。

治療には、頭蓋形状誘導法といわれる「ヘルメット療法」が用いられます。一人一人の乳児の頭蓋骨の成長に合わせたオーダーメードのヘルメットをかぶり、平たくなった部分の成長を促し、自然な頭の形へと近づけていきます。外力を加えて矯正するのではないので、体に侵襲をあたえません。

ヘルメット療法は、乳児の首がすわる生後半年から1歳頃まで、通常、半年間行われます。「1歳を過ぎると、頭の形がおおかた決まります。また、生後数カ月で成長線が無くなってしまう頭蓋骨早期癒合症という、頭の形が短頭や斜頭と似ている病気があります。この場合、手術が必要となることがあるので、早めの受診をおすすめします」と話します。

ヘルメット療法は保険外治療となるので、初診時に診療の進め方や費用(全額で40万円ほど)について説明を受けます。通院は月1回程度、通院中はヘルメットの微調整に加え、皮疹などの肌トラブルがないか診察が行われます。

和歌山県人口調査によると、2023年の出生数は5039人(同年10月1日現在)。朝村教授は、斜頭・短頭の乳児は全体の約半分、ヘルメット療法の適応となる乳児は4%ほどいるといい、県内で約100人と推測します。その上で、「“子どもの頭の形が気になる”という、ご両親やご祖父母は、まずはかかりつけの小児科や保健所などに相談し、医療機関で頭のゆがみの原因や程度を診てもらうことも視野に入れましょう」と話しています。

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