立ち上がったり、階段を下りたり…、膝や足のつけ根など、関節の曲げ伸ばしをするときに痛みを感じる症状「関節痛」。痛みの原因や治療法などについて、日本赤十字社和歌山医療センターの整形外科で話を聞きました。
体形や関節周りの筋肉の維持が大切
関節とは、骨と骨のつなぎ目にあたり、スムーズに関節を動かすことで、座る、立つ、歩く、走るなど、日常生活に必要な動作が可能になります。人間の体には数多くの関節がありますが、痛みを訴えるのは、膝関節と股関節です。
その理由について、日本赤十字社和歌山医療センターの整形外科・古川剛副部長(写真)は「関節の中でも膝関節と股関節は、全身の体重を支える大切な役割りがあります。関節に問題が起こると、動きが悪くなったり、歩くときに痛みが出たり、日常生活に支障が出てきます」と話します。
原因はケガ、スポーツによる関節への負担もありますが、近年、加齢や肥満によるものが増えてきています。疾患では、変形性関節症、関節リウマチ、外傷などがあり、日本人に多いのは変形性関節症。古川副部長は「関節は軟骨というなめらかな層で覆われ、骨と骨が直に接触しないようになっています。しかし、加齢により、軟骨組織の水分量が失われると、滑らかに動かず、すり減ってきます。そうなると、動かすたびに痛みが生じます」と説明します。
変形が進行すると、電気が走るような痛みがあるため、可動域も狭まります。関節を動かすには、その周辺の筋肉が関節を支えていますが、痛みで動かないことが増えると、関節周辺の筋肉が低下し、さらに動きにくくなるという悪循環が生まれます。
古川副部長は「一般的にレントゲンなど、いくつかの検査をし、初期なら、薬の服用、ヒルアロン酸の注射、リハビリなどを行います。重症化している場合、当院では、患者さんや家族と話し合い、変形した関節を人工関節に置き換える手術を行います」と話します。人工関節を正確に設置するため、県内でも早くからコンピューターによる支援システムを導入している同院。年間100件以上の手術を実施しています。
手術後は、翌日からリハビリが始まり、経過が良ければ2週間程で退院となります。「高齢などが理由で自宅退院が難しい場合も、リハビリを継続できるよう、転院についても地域の病院と連携しています」と説明。さらに、「退院後、手術を受けた病院で経過を診てもらうことが必要です。かかりつけ医にかかっている間も、年に1回程度、通院が可能な限り、外来でアフターフォローを続けています」と伝えます。
とはいえ、年を重ねてもできる限り、関節痛にならないように気を付けたいものです。古川副部長は「太り過ぎないよう体形の維持、膝・股関節周りの筋力の維持を心掛けることが大切です。もし運動を始めるなら、関節に負担の少ないプールウオークなどをおすすめします」とアドバイスしています。
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