好きは好き、嫌いは嫌いと、
人を気にせず自分の意見を
小学校での読み聞かせは本選びに苦心します。特に3年生以上の子どもたちには何を読むべきかを迷います。幼年童話へ移行して耳を育てるという手もありますが、やはり絵本の楽しさを届けたいと思うのです。そういうとき、『ストライプ』(出版=らんか社、デヴィッド・シャノン/文・絵、清水奈緒子/訳)を読みます。
「カミラ・クリームは、リマ豆が大好きです。でも、ぜったいに食べようとしません。学校のみんなが、リマ豆をきらいだったからです」。主人公のカミラはみんなと同じでいたいと思う女の子。いつも他の人の目ばかり気にしています。新学期の1日目も「みんながどう思うだろう」と、着ていく洋服を選べません。
そのうちにカミラの体がしましま模様になり、アメリカ国旗が表れ、巨大な薬のカプセルに変わってしまいます。
思春期の女の子が抱える問題を鋭く突いた作品だと思います。「みんなはどう思うだろうか」が最大の関心事だなんて、つまらない。でも、女の子の世界ではよくあることです。そして、女の人の世界でも…。
「リマ豆が大好き」と言ったとたんにカミラの体は元に戻り、それ以降は「カミラって気持ち悪い」と言われても気にしなくなります。リマ豆も好きなだけ食べるようになりました。
しましま模様のカミラが描かれた表紙が衝撃的な絵本です。どのページもダイナミックで立体的。手元で見るより読み聞かせてもらうほうが迫力満点で、絵が浮かび上がってくると感じるほど。
ちなみに「リマ豆」とはライマビーンというアメリカで日常的によく食べられる豆だそうです。スペインに暮らしていたころも、食事に招待されると決まって豆の煮込みが出てきました。「どんなごちそうが」と期待するのですが、いつも豆ばかり。欧米人は豆が好き?
名前 | なりきよ ようこ |
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プロフィル | 絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。 保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表 |
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