和歌山市の離島を舞台に繰り広げられるSFサスペンス サマータイムレンダ
- 2022/4/7
- フロント特集
ウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+(プラス)』で連載された和歌山市出身・田中靖規さんの人気漫画「サマータイムレンダ」(集英社ジャンプコミックス刊)がTVアニメ化され、4月14日(木)から関西テレビなどで放送がスタート。動画配信サービスを通じて世界にも配信されます。和歌山の魅力が詰まった同作品。見どころを考察します。
私たちの日常が画像から映像に
物語の舞台は、友ヶ島をモデルに描かれた「日都ヶ島(ひとがしま)」。同じ時間・同じ日をタイムリープしながら、島に伝わる〝影〟の謎を探っていくSFサスペンスは、ミステリーにアクション、個性あふれるキャラクターたちの恋愛も絡み、次から次へと展開。原作の漫画は構図やコマ割り、絵に対しての評価が高く、2017年に連載が始まった『少年ジャンプ+』での閲覧数は、累計1億3000万を突破しました。
そして、私たちにとっては、登場人物たちの会話が「和歌山弁」なのも、作品がより楽しく感じられるポイント。マンガでは注釈を付けつつ和歌山弁が〝書かれて〟いましたが、全国放送、いや世界に配信されるアニメで、和歌山弁が〝聞ける〟機会はそうありません。さらに、友ヶ島や加太の情景にはじまり、雑賀崎や和歌浦、「なれ寿司(ずし)」「グリーンソフト」といった慣れ親しんだスポット、食べ物も続々と登場します。
原作者の田中靖規さんと、アニメでヒロインの妹の声を担当する県出身の声優・白砂沙帆さんにインタビュー。「サマータイムレンダ」に関連するまちの話題を紹介します。
和歌山市出身の原作者・田中靖規さんに
創作秘話やアニメへの期待感を聞きました
漫画では表現できない音や動き
声優泣かせの和歌山弁
Q.アニメ版「サマータイムレンダ」はもうご覧になりましたか。
完成したものはまだ見ていませんが、毎週のアフレコには参加させてもらっています。キャラクターに声が入ると、命が吹き込まれていくようで、毎回感動しています。岡部啓一さんたちによる劇伴音楽も聴かせてもらっていますが、どれも本当に素晴らしく、鳥肌もので、どのように本編で流れるのか、すごく楽しみです。音や動きは、漫画では表現できない部分なのですが、アニメは僕のイメージ通りというか、イメージを超えて良いものになっていると思います。
Q.和歌山を舞台にした作品を描こうと思ったきっかけは。
生まれ故郷を舞台にした作品をずっと描きたいなと思っていました。決め手は風土病や伝承など「サマータイムレンダ」という作品が持つ要素と、和歌山の地方性がマッチしたことです。連載を始める前に友ヶ島へ取材に行き、撮影した写真をパソコンに取り込んで、それを作品内で使ったりもしています。
Q.漫画もアニメも登場人物の会話は和歌山弁ですね。
和歌山弁を書き文字にすると意味が分かりにくいものもあり、漫画ではパラフレーズ(言い換え)しようか迷った箇所もありましたが、“絵で伝わるはず”と、わりとそのままの和歌山弁を使いました。アニメではそこに音声が加わるので、よりニュアンスが伝わるかと思います。
Q.アニメの渡辺歩監督との対談で、監督が「原作以上に和歌山感、ネーティブな部分を出したい」とおっしゃっていましたが…。
声優さんたちは皆さん和歌山弁に苦労されていますが、ものすごい勢いで上達しており、彼らのプロ意識には感謝しかありません。アニメでここまでの量の和歌山弁を聞ける作品は他にないと思いますので、楽しみにしていただければ。
Q.ご自身、日ごろは和歌山弁で話しますか? 標準語を使いますか?
僕自身は、妻も和歌山出身ですので、家庭内では常に和歌山弁です。仕事のときなど、周りが標準語だとつられて僕も標準語になります。
連載を振り返って安堵感と達成感
気が抜けなかったキャラクターの顔・表情
Q.「サマータイムレンダ」は、原稿を鉛筆で描き、アシスタントなしでお一人で制作されたとのこと。約3年半の連載はどうですか。
楽しかったです。振り返ればあっという間でした。うまくループが完成した安堵感と、作者の想定を超えてキャラクターや物語が膨らみ、当初思い描いていた以上の良い着地点に到達できたという達成感があります。
Q. 描くのに苦労したシーンは。
複雑な戦闘シーンや、細かい背景など、描いていて大変なところはいろいろありますが、一番はキャラクターの顔です。特に、潮は美少女という設定なので、油断して変な顔になってしまったものはコミックス収録時に修正したりしましたし、とにかく気が抜けませんでした。キャラクターの顔や表情に一番気を使っています。
Q.「影」「タイムリープ」「スキャン」「アクションバトル」とさまざまな要素が盛り込まれた作品。その発想はどこから。
連載開始時点では2巻までの内容と、“とにかく最後はハッピーエンドで!”ということしか考えていませんでした。神社、廃虚、病院、洞窟、ボス部屋…と、ゲームのステージを考えるような形で、ざっくりとしたロケーションは浮かんでいましたが。あとは、毎週の担当さんとの打ち合わせで、細かな部分を決めていきました。完成形からの逆算ではないので、伏線を張るのも勘で、うまく回収できたらいいな!という未来の自分へのパス。今考えると恐怖ですが、描いているときは楽しかったです。このライブ感があったからこそ、物語が良い方向に膨らんでいったのだと思います。日本独特の、週刊連載の醍醐味(だいごみ)ですね。
学生時代を過ごした和歌山への思い
Q.作中にたびたびカレーが登場しますが、カレーはお好きですか? 和歌山市の方でオリジナルレシピの「慎平のカレー」も開発中だとも。味のヒントになったお店はありますか? その他、“カレー愛”を存分にどうぞ。
「バラ」のカレーは和歌山にいたころよく食べました。ただ、慎平のカレーは、作中にも名前が出てきますが、料理研究家の土井善晴さんのレシピを参考にしています。土井さんのレシピは引き算の美学で、ごくシンプルなんです。例えば同じ煮物でも、たくさん調味料を使った複雑なレシピよりもおいしく出来上がるので感動します。魔法のようです。カレー愛ではなく“土井愛”ですね。すみません。
Q.和歌山での思い出の場所は。
丸正百貨店、ビブレ、宮井平安堂、ぶらくり丁のマクドナルド・モスバーガー。全部なくなりました! 悲しいです。
Q.離れて感じる和歌山の良いところは。
離れて分かるのは、海産物のおいしさです。魚好きなので、和歌山の魚が一番です。
期待高まる次回作
Q.次の作品の構想、連載予定は。
構想はあり、担当と打ち合わせ中です。
Q.また和歌山を舞台にした作品を期待してもいいですか。
和歌山弁のキャラクターは今後も出てくると思います!
作品を超えて活躍するキャラクター
まさに娘の成長を見守る親の感覚
Q.昨夏、友ヶ島で企画されていたリアル脱出ゲームはコロナ禍で開催中止となりましたが、アニメ化に加え、実写化企画も進行中とか。“産みの親”としての感想、期待感を。
“キャラクターが自分の手を離れる”といった表現を先達から聞いておりましたが、やはりというか、本当にそういった気持ちです。潮は「和歌山市アニメ観光大使」にまでなりましたし、すごいですよね。自分には実際に娘がいますが、まさに自分の娘の成長を見守る親の感覚そのものです。これからもキャラクターたちが作品を超えて、いろいろな場所で活躍してくれることを願っています。そして、キャラクターを通じて、少しでも和歌山に興味を持ってもらえたり、またその魅力が伝わればうれしいです。
Q.読者、アニメ視聴者に向けてメッセージを。
生まれ育った和歌山を舞台にした作品で注目していただけるのはとても光栄です。みなさんの応援あってのことだと思います。ありがとうございます! ぜひ和歌山の美しい景色や方言に注目しながら、家族みんなで楽しんでもらえたら本望です。
「サマータイムレンダ」
全13巻発売中、『少年ジャンプ+』で配信中(#001~003は無料公開)
幼なじみの潮が死んだ。その知らせを聞き、故郷の和歌山市日都ヶ島に帰ってきた慎平。家族や友人と再会し、滞りなく行われていく葬儀。しかし、潮は他殺の可能性があるということを聞かされ、翌日には、近隣の一家が消えてしまい…。紀淡海峡の小さな島で、時をかけるSFサスペンスが幕を開けます。
田中靖規(Tanaka Yasuki)
1982年11月17日生まれ、和歌山市出身。「ジョジョの奇妙な冒険」の作者・荒木飛呂彦のスタジオでアシスタントを務め、「瞳のカトブレパス」(週刊少年ジャンプ)で連載デビュー
アニメで小舟澪を演じる
和歌山県出身の白砂沙帆さんに必見ポイントを聞きました
リアルに和歌山が詰まった作品
オーディションで澪役決定!
Q.原作を読んだ感想は
ものすごくリアルに和歌山が詰まっていると感じました。方言や登場する場所・物はもちろんですが、独特の土の感じや夏の潮風、匂いや空気まで伝わってくるようでした。読み進めるにつれて、もしかしたら本当に和歌山のどこかに“影”はいるんじゃないか…と思うほど作品に引き込まれました。
Q.オーディションを受け、澪役が決まったときの喜びを
原作を読んで、ずっと気になっていた作品だったので、事務所からオーディションのチャンスをいただいたときはうれしかったです。澪役が決まったと連絡をもらったときは電話先で大号泣してしまいました。
Q.ヒロインの妹・澪はどんな女の子
本当に素直で健気で一生懸命な女の子。姉の潮と比べて、良い意味で普通の16歳。恋心や悩みなど等身大の女の子で、すごくキラキラしています。でも、その心の奥には…目が離せません!
Q.澪を演じる上で意識していることは
澪のいろいろな感情を演じ分けることに難しさを感じつつ、澪らしいかわいさが表現できるように、言葉の隅々まで気を付けて演じています。
Q.澪らしさが出ているセリフは
ネタバレになりそうで「このセリフ!」と選ぶのは難しいのですが、澪は笑うときも怒るときも泣くときも、どんなときも和歌山弁。切ないシーンの和歌山弁の澪がとても健気で守ってあげたくなります!
Q.印象深いシーンは
原作では見開きで描かれている慎平と潮との場面です。慎平役の花江夏樹さんと潮役の永瀬アンナさんの声が入ったとき、隣で聞いていて感動しました。
Q.「和歌山弁」で役を演じるのはどうですか
役として和歌山弁をしゃべることは初めてなので、最初は緊張や不安もありました。でも、原作の(田中)先生や方言指導の方が毎回いてくださるので心強くて。和歌山弁は生まれ育った自分自身の言葉なので、今は演じていてとても楽しいです! 方言の魅力が伝わるように心掛けています。また、作中で出てくる若者の和歌山弁と、大人の和歌山弁の違いが、特に地元の皆さんには伝わるのではないでしょうか。
幼いころから憧れていた声優
高校卒業まで過ごした和歌山の思い出
Q.どうして声優に
幼いころから、声だけで“いろいろなものになれる”声優という職業にずっと憧れていました。高校卒業後、一般公募のゲームヒロインの声優オーディションを受けて合格し、そこから今の事務所(マウスプロモーション)の養成所に飛び込みました。
Q.和歌山にはいつまでいましたか
和歌山には生まれてから高校を卒業するまでずっと住んでいました。両親
共に和歌山市内出身なので、作中の言葉や場所や物にはなじみ深いものがいっぱいあります。
Q.和歌山の思い出の味は
近所の人がくれる採れたての果物や、釣りたての魚、祖母の作ってくれるめはり寿司(ずし)。作中に出てくるなれ寿司は、子どものころは苦手でしたが、今は大好きになりました。慎平も好きなグリーンソフトは実家の冷凍庫にいつもあって、一気に何個も食べてはよく怒られていました。
Q.離れたからこそ思う和歌山の良いところ
家族でよく温泉を巡っていて、当時は当たり前だと思っていたのですが、頻繁に車で温泉に出掛け、帰りに産品直売所で買い物をして、夕食に地元の食材を食べるというのは、すごく貴重なことだったなと思います。近所の人が「さほちゃんおかえり!」といってくれる空気も私はとても好きです。
和歌山出身の白砂さん、そして澪として…
Q.読者、アニメ視聴者に向けてメッセージを
アニメ『サマータイムレンダ』は、いよいよ4月14日(木)から放送が始まります! アフレコも順調に進んでいて、「日都ヶ島」で澪として生きる時間が毎週とっても楽しいです。作品に関わる皆さんが愛情を注いで丁寧に一つ一つ作り上げていて、和歌山をご存じの方には地元ならではの“あっ”となるポイントもたくさんあるので、そういうところも楽しみにしていただければと思います。“影”とは一体何なのか、時をかけるSFサスペンスをぜひ最後まで見届けてください!
白砂沙帆(Shirasu Saho)
8月19日生まれ、和歌山県出身。マウスプロモーション所属。バンダイナムコエンターテインメントのゲームアプリの声優オーディションでグランプリに選ばれ、デビュー。アニメやゲーム、CMナレーションなど幅広い分野で活躍
TVアニメ版
「サマータイムレンダ」を見逃すな!
全25話・2クールで完結まで描き切ります
◆放送直前特別番組
関西テレビ/4月7日(木)深夜2時55分~3時25分
TOKYO MX・BS11/4月7日(木)深夜0時~0時半
【TV放送】
関西テレビ/4月14日から毎週木曜深夜2時55分~3時25分
TOKYO MX・BS11/4月14日から毎週木曜深夜0時~0時半
アニマックス/4月16日から毎週土曜午後8時~8時半
J:テレ/4月18日から毎週月曜深夜1時~1時半
【配信】
ディズニープラスにて見放題独占配信
TVerにて1週間限定の見逃し配信を実施
※放送・配信の日時は、予告なく変更になる可能性があります
TVアニメ 「サマータイムレンダ」のPV |
https://summertime-anime.com/ |
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ⓒ田中靖規/集英社・サマータイムレンダ製作委員会
和歌山市・南海電鉄×サマータイムレンダトピックス