えっ? 和歌山でバナナ
- 2022/2/10
- フロント特集
一年を通して、日本人がよく食べている果物「バナナ」。そのほとんどが海外からの輸入品ですが、近年、国内でバナナを生産する動きが活発に…。そんな中、和歌山県内でも栽培が始まっています!
よく食べる果物1位の「バナナ」
県内で産地化に向けた取り組み開始
スーパーなどで年中見かける身近な果物「バナナ」。日本バナナ輸入組合の調査では、日本人の「よく食べる果物」の1位として不動の地位を築いています(グラフ①)。
消費が多い一方、バナナは“南国の果物”といわれるように、赤道近くの「バナナベルト」と呼ばれる熱帯・亜熱帯地域が栽培適地とされています。そのため、フィリピンやエクアドルなどから、年間約100万トンを超えるバナナを輸入。普段私たちが口にするほとんどのバナナが外国産といっても過言ではありません(グラフ②)。
そんな中、バナナの栽培が国内各所で広がり、「外国産の果物」という認識が変わりつつあります。和歌山県も例外ではなく、海南市や紀の川市、かつらぎ町でバナナの栽培がスタート。その取り組みを紹介します。
皮まで食べられる「蜜の月」
糖度25度以上、甘さと食感が特長
一定の温度に保たれたビニールハウスの中で、たわわに実ったバナナが今月、初収穫を迎えています。栽培しているのは、家庭用品メーカー「KOKUBO」グループの「こくぼ農園」(海南市野上新)。現在ある85本の株からは3年で5回の収穫・出荷を見込んでいます。
小久保好章代表取締役が“日本では珍しいとされる作物を”と皮ごと食べられる品種のバナナに着目したのがきっかけ。岡山県の農園で学び、苗を凍らせた後、解凍して一気に成長させる「凍結覚醒(せい)農法」や、土に虫が付きにくいとされる竹炭を採用。独自の方法を加え、オリジナル商品「蜜の月」が誕生しました。昨年5月に植樹した背丈約50センチの株は10カ月で約5メートルにまで成長。実の大きさは5つに分類される中の一番大きなランクで、薄い皮はサクサクとした食感、実は糖度25度以上という甘味の強さが特長です。
また、1本の茎から一度しか実が採れないため、収穫後の葉は粉末にして青汁用に、刈り取った茎は腐葉土にして再利用するなど、循環型農業も注目されています。
蜜の月は、全国の百貨店や小売店などに出荷予定。小久保代表は地元貢献も視野に入れ、「アイデアにひと工夫して、今後もさまざまな農産物を栽培していきます」と構想を膨らませています。
問い合わせ | こくぼ農園 |
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電話 | 073(487)5224 |
住所 | 海南市野上新622-2 |
ホームページ | http://kokubo-farm.com (近日公開されます) |
備考 | ※県内では地元のスーパーや産直市場などで販売予定 |
栽培広がる県産バナナ
県内のバナナ栽培の取り組みを取材。その他、バナナに関するワンポイント基礎知識を紹介します
ワンポイント~基礎知識~
Q.バナナの上手な保存方法は?
保存には15〜20℃くらいの常温で風通しの良いところが適しています。夏の暑い時期は、バナナを新聞紙などで包んで冷蔵庫の野菜室に入れてみてください。その際、温度が低すぎたり、長時間保存したりすると皮が黒くなってしまうことがあるので気をつけましょう。
Q.皮にできる黒い斑点はなんですか?
キリンの模様のような黒い斑点は「シュガースポット」と呼ばれています。バナナが熟して甘くなると出てくるので、そのように名付けられているとか。皮をむくと果肉はきれいなままで、おいしく食べられます。
熟度3段活用
熟度によって、味や食感が変わるよ
参考:日本バナナ輸入組合のホームページ「バナナ大学」より
とろり食感の「アイスクリームバナナ」
路地栽培で昨秋に初収穫
「収穫できるかどうか、プレッシャーもあり、正直ホッとしました」と振り返るのは、ファームウエスト(岩出市西野)の西野仁さん。コストが抑えられる路地栽培を選び、耐寒性が髙く、アイスクリームような食感の品種「アイスクリームバナナ」を、2018年から6株ずつ植樹を続けました。独学で始めた栽培は全てが手探り状態。失敗を繰り返しながら、昨年11月にようやく18本のバナナを初収穫しました。
西野さんは元技術系の国家公務員。関西国際空港への出向時、深夜の国際貨物便の強化を知り、“深夜便ならアジア圏内に翌日到着する。農産物輸出の時代が来るはず”と、10年前に退職し、関空まで約40分圏内の紀の川市で就農を決めました。
路地栽培のバナナは、3月から成長が始まり、11月ごろに止まります。茎の部分が枯れなければ翌春に再び成長。2回の冬を越し、「バナナハート(つぼみ)」が出たら、約100日後に収穫です。気温が下がると成長が止まるため、できるだけ早めにバナナハートを出すことや、糖度を上げるのに適した肥料について研究するのが今の課題。西野さんは「今年は栽培量が倍以上に増えます。将来的には一緒に栽培する人を募り、特産品として、地元はもちろん、海外輸出も視野に入れています」と先を見据えます。
写真=紀の川市提供
問い合わせ | ファームウエスト |
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電話 | 070(5569)9048 |
メールアドレス | info.farmwest@gmail.com |
備考 | ※農作業中は電話に出られないため、問い合わせなどはメールで。 収穫されれば、今年11月以降に、JA紀の里ファーマーズマーケットめっけもん広場やOINACITY で販売予定 |
地域をあげて町おこし
妙寺保育所跡地でバナナ栽培
地域をあげて新たな特産品を生み出す。“バナナで町おこし”―。
かつらぎ町にキノコの生産プラントを持つ「HASIMOTO(ハシモト)」と、町の活性化に取り組む「フルーツ王国振興公社」が業務提携。生産技術や販路など互いの強みを生かし、同町が所有する妙寺保育所跡地(同町妙寺)で、昨秋からバナナの栽培に乗り出しました。11月には、同地にビニールハウスを設置し、地元の子どもたちと一緒に、背丈約60センチで実をつける「スーパーミニバナナ」を植樹。酵素やミネラルを肥料に用い、上手くいけば来年夏頃には実をつけると期待が寄せられています。
また、近隣の露地やガラスハウスなども活用。ピンクの実の「アケビバナナ」、コンパクトなサイズの「三尺バナナ」など、約10品種で栽培に適した株を検討しているとも。ハシモトの橋本崇会長は「町をはじめ、たくさんの人の協力があってこその取り組み。背丈が低い品種を、鉢植えで栽培するノウハウを身につければ、地域の人たちも育てられます。“一家に一鉢”になれば」と夢を描きます。
同保育所跡地の建物は、特産品の加工・製造所と販売店、イートインスペースの他、イベントを開くなど、観光客や地域の人の交流拠点としても活用される予定です。
写真=HASIMOTO、フルーツ王国振興公社提供
問い合わせ | HASIMOTO 妙寺プラント |
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電話 | 0736(20)0017(かつらぎきのこプラント) |
住所 | かつらぎ町妙寺427-4(妙寺保育所跡地) |
備考 | ※収穫されれば、来年夏頃に妙寺プラントなどで販売予定 |