10月10日「目の愛護デー」を前に、今号はコロナ禍で心配される目の病気について取り上げます。和歌山県立医科大学の雑賀司珠也副学長・医学部眼科学講座教授に聞きました。
自覚症状がない「緑内障」など注意が必要
新型コロナウイルスの感染防止で外出を自粛する中、医療機関の受診を控える動きが広がりました。実際、今号で取り上げる眼科においても、2カ月に1回の定期通院を半年先延ばしする人も。早期発見・治療の重要性から、受診控えを心配する声も聞かれます。
県立医科大学の雑賀司珠也副学長・医学部眼科学講座教授(写真)は、「目の深刻な病気は自覚症状がないため、気づいたときにはかなり進行していることがあります。気になる症状があれば受診することが大切。定期受診している人は通院間隔をできる限り守ってください」と伝えます。
気付かないうちに進行する病気の一つが「緑内障」。「眼圧(目の内から外にかかる力)」が高い状態が続くと、視神経に障害が起こり、発症します。視野が徐々に欠けていくため、異変を感じにくく、進行して視野の中央が欠けて初めて気付くといったケースも少なくありません。雑賀教授は「失われた視野は治療で回復させることはできませんが、点眼薬で眼圧を調整し、進行を遅らせることはできます。緑内障と診断されたなら、“症状がないから”と自己判断せず、決められた期間を守って通院するようにしましょう」と話します。
また糖尿病が原因で、網膜の血管が傷ついて起こる「糖尿病網膜症」も注意が必要です。初期症状は出血、視力低下、飛蚊症などで、進行すると網膜剥離(はくり)を起こすことがあります。糖尿病と同じで、生活習慣の改善とともに血糖をコントロールすることが大切で、初期ではレーザー治療などが行われます。 内科で眼科の受診をすすめられ、眼底検査を受け、“異常なし”といわれると、ついつい次の受診のタイミングを逃しがちに…。「早い段階で発見・治療するためにも継続的に受診してください」とアドバイスしています。
子どもや若者に多い「急性内斜視」
子どもや若者を中心に増えているのが、左右の瞳が内側にずれる「急性内斜視」。片目で物を見ると正常ですが、両目で見ると二重になるため、光を屈折させるプリズムメガネで矯正したり、手術で眼球を動かす筋肉の位置を変えたりして治療が行われます。原因は解明されていませんが、スマートフォンやパソコンなどデジタル機器との関連性も指摘されています。
雑賀教授は「近くを見るとき、両方の眼球の向きが鼻寄りになり、ピントを合わせようとします。デジタル機器は画面が小さいほど顔を近づけて見ることが多く、長時間続けると眼球が元の位置に戻りにくくなる可能性があります」と解説。続けて「年齢が低い子どもほど、二重に見えることを訴えないことがあるので気を付けてください。また、画面に集中すると、まばたきが減ってドライアイになり、それが疲れ目につながります。普段から途中で目を休ませる習慣を身に付けるようにしましょう」と話します。
目の健康を維持するためにも、定期的に健康診断を受けるのも有効。「目の愛護デー」を機会に、目の状態に意識を向けてくださいね。
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