はなのすきなうし

20150110_kids01

ふえるじなんどの母のように
ただ子どもを見守りたい

「そのままのあなたでやってごらん」。そう言ってくださったのは、高校3年生のときの担任の教諭。母にさえ「あんただけは隠したいわ」と言われていたというのに。

わが家は絵に描いたような男尊女卑の家庭で、母は口答え一つせずに黙々と働き、父に仕え、4人の子どもを育てていました。担任のI先生と母は、どちらも仕事を持つ女性だという共通点に加え、同年齢の子どもを持つ母親同士でもありました。なのに、I先生は私をおもしろがってくださり、母は「前に出てはダメ」と言い続けました。

「ありのままに」という歌とフレーズがちまたにあふれています。あの当時に比べればずいぶん生きやすくなったと思うけれど、それでもまだ「ありのままで」いられない時代なのでしょうか。

『はなのすきなうし』(出版=岩波書店、マンロー・リーフ/作、ロバート・ローソン/絵、光吉夏弥/訳)は草の上に座って、一人で花の匂いをかぐのが好きな子ウシのふぇるじなんどのお話です。他の子ウシたちが飛んだり跳ねたりしていても、牧場の端のコルクの木の下の大好きな場所にじっと座っています。

お母さんは心配でした。けれど、それは「みんなと一緒のことをしない」からではなく、「独りぼっちで寂しくはないか」と思うからでした。そして、ふぇるじなんどが寂しくないと分かると、好きにさせてやろうと思うのです。60年以上も前に描かれたお話なのにテーマが新鮮です。母となった時、ふぇるじなんどの母のようでいたいと思いました。映画「しあわせの隠れ場所」にも出ていた絵本です。

新しい年、うれしいことがたくさんありますように!

名前なりきよ ようこ
プロフィル絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。
保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表

子育て・教育

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