改正・健康増進法、ルール化して全面施行 受動喫煙がない社会へ
- 2020/3/19
- フロント特集
「健康増進法」が改正され、4月1日から全面施行。今回の改正の大きな目的は、他人が吸うたばこから発生する煙を吸ってしまう「受動喫煙」をなくすこと。これまではマナーに頼っていた環境が、ルールが設けられることで大きく変化します。その概要を伝えるとともに、この機会に禁煙を…と考える人にアドバイスも届けます。
望まない受動喫煙をなくすために 子どもや病気の人たちに特に配慮
2018年7月に健康増進法が改正、昨年一部が施行され、今年4月1日に全面施行されます。
近年、その害が叫ばれている“受動喫煙”。喫煙者がたばこを吸うときに吸い込む煙・主流煙に対し、たばこの先から出る煙は「副流煙」と呼ばれ、この副流煙にも体に有害な成分が含まれ、中には主流煙よりも多い有害成分もあります。さらには、喫煙者が吐く煙にも有害物質が含まれると指摘されています。たばこを吸わないのに、こうした副流煙などによる害にさらされる受動喫煙の防止を強化しようと、健康増進法が改正されました。
これまで、禁煙や分煙などの防止策はそれぞれの場所の管理者や喫煙者に任されたものでしたが、改正法により、施設・場所の種類に合わせて敷地内または屋内禁煙(原則)をルール化。また、喫煙できる場所についても明確にし、受動喫煙に配慮した環境が整えられていきます。
すでに昨年7月に改正法の一部が施行され、学校や病院、行政機関の庁舎などが敷地内禁煙となり、4月からは多くの人が利用する施設が原則屋内禁煙になります。今回の改正・健康増進法(望まない受動喫煙をなくすために)について、和歌山市保健所地域保健課健康づくり班長の岡美行さんに、概要を聞きました。
禁煙・喫煙、標識で見分ける
ルール化されてもマナーは必要 たばこを吸うときは周囲に配慮を
「今回の健康増進法の改正の趣旨には、大きく3つのポイントがあります」と説明する岡班長によると、まず1つ目は、望まない受動喫煙をなくすことが目的だということ。2つ目は、受動喫煙による健康の被害が大きい子どもや病気の人に特に配慮すること。3つ目は、施設や場所ごとに喫煙できる場所とできない場所を明らかにし、標識の掲示を義務付けること。
昨年7月に敷地内禁煙となった施設は、子どもや患者などへの受動喫煙による健康被害が大きいと考えられる場所。「4月からは、これら以外の多くの人が利用する施設、例えば、オフィスや飲食店などでも、原則屋内禁煙となります」と岡さん。ただし、一定の基準を満たした喫煙専用室を屋内に設けることは可能で、加熱式たばこに限定して、その専用室では飲食することもできます。「さらに、飲食店への経過措置として、4月1日以前から営業している店舗で経営規模の小さな店に限り、事前に届け出をすることで店内を喫煙可能としたり、飲食ができる喫煙室を設けることができます」と説明します(下記チャートで解説)。
「そして、3つ目のポイントにあるように、屋内に喫煙できる場所を設けた場合、標識を掲示することが義務付けられ、施設を利用する人は、標識を目印とすることができます。また、20歳未満は喫煙できる場所に立ち入ることが禁止されます。たとえ従業員でも、喫煙できる場所に立ち入ることができませんので、例えば喫煙スペースを設けた飲食店などは、雇用する人も20歳未満の人を喫煙エリアに立ち入らせることはできません」とも。今回、加熱式たばこも一般的な紙巻きタバコと同じ扱い。今、新型たばことして加熱式たばこと電子たばこがあり、混同されることが多いのですが、国内で急速に普及が進んでいるのは加熱式たばこです(違いは下記参照)。
改正法には罰則もあり、禁煙場所で喫煙した人や、違反した施設管理者などには最大30万円または50万円の罰金が科せられます。「いきなり罰則が科せられるというわけではなく、まずは指導や助言を行い、改善を促していきます。改正法の周知を行っていき、再々の指導にも改善が認められない場合などに罰則が適用されます」とのこと。
国際的に受動喫煙対策が遅れている日本。この改正法の施行が受動喫煙のない社会への第一歩になると注目を集めています。「望まない受動喫煙を防ぐためにも、今回の主旨を理解し、ルール化されていない屋外や家庭内でも、喫煙者がたばこを吸うときには、受動喫煙が起こらないよう周囲に配慮していただきたい」と岡さんは呼びかけます。「そして喫煙者も、健康のために禁煙を。この機会に検討してはいかがでしょうか」と話します。禁煙を考えている人に向け、禁煙コーチングを実践している原隆亮さんにアドバイスをもらいました(下記)。ぜひ参考に。
加熱式たばこ
たばこの葉を加熱して発生した蒸気を吸引 → “たばこ”として国内で販売されています
電子たばこ
液体を加熱して発生させた蒸気を吸引
・液体にニコチンを含まないもの → 国内では法律による規制はなく、インターネットや店頭などで販売
・液体にニコチンを含むもの → 国内では法律で規制され、販売されていません(個人輸入は可能)
こんな場所
●学校や児童福祉施設
●病院や診療所
●行政機関の庁舎 (2019年7月1日施行)
●バス・タクシーや航空機(2020年4月1日施行)
屋外で受動喫煙を防止するために必要な措置が取られた場所に、喫煙場所を設置することができます
こんな場所
●事務所
●工場
●ホテル・旅館
●飲食店
●国会・裁判所
●旅客運送事業船舶(フェリーや遊覧船)、鉄道など
どれか選択することができます
室外への煙の流出防止措置をした専用室でだけ喫煙可(加熱式たばこも含む)
※喫煙専用室では飲食不可
20歳未満は入室できません(従業員を含む)
喫煙できる場所であることを掲示
室外への煙の流出防止措置をした喫煙室で、加熱式たばこだけ喫煙が可能
※加熱式たばこ専用室では飲食可能
20歳未満は入室できません(従業員を含む)
喫煙できる場所であることを掲示
例外
●既存の経営規模の小さな飲食店
・4月1日以前から営業
・個人または中小企業(資本金5000万円以下)が経営
・客席面積100平方メートル以下
どれか選択することができます
喫煙できる場所であることを掲示する必要があります
※20歳未満は入店できません(従業員を含む)
店内の一部に、室外への煙の流出防止措置をした喫煙可能室を設けることもできます(標識は下記の④)
・喫煙を主目的とする、たばこ事業法許可による対面販売しているバーやスナックなど
・店内で喫煙可能なたばこ販売店
・公衆喫煙所
来店客・従業員ともに20歳未満は立ち入れません
喫煙可能な場所であることを掲示する必要があります
この機会に まずは“禁煙の扉”を開いてみませんか
海南薬剤師会の副会長を務める原隆亮さんは、「日本禁煙科学会」が認定する上級禁煙支援士。また、「日本臨床コーチング研究会」の認定コーチでもあることから、コーチングを生かした禁煙サポートをボランティアで続けています。
「たばこの健康被害が指摘されている今の社会で、すでに禁煙された方がたくさんいます。そんな一方で、“やめなきゃなぁ~”となんとなく禁煙に踏み切れない人や、“自分には無理”と諦めてしまっている人、そして“禁煙には興味がない”という人も、中にはいるのではないでしょうか。そんな人たちに、少しでも“禁煙”に目を向けてもらえるような活動を続けています」と話す原さん。
原さんが禁煙コーチングのサポートをしているのは、業務終了後の夜の数時間。携帯電話やSNSの音声通話を活用し、基本的に話すことだけ。「その人の状況を理解できるように話を聞いて、ご自身の今の未来像を思い描いてもらったり、禁煙できたときを想像してもらったりします。会話を重ねることでその人の価値観を引き出し、その上で自ら禁煙に踏み切れるようサポートしています」と、その手法を説明します。ただ単に、“健康によくないからやめた方がいい”“やめなきゃいけない”と無理強いされるのではなく、“やめると、こんないいことがある”とプラス面を思い描きながら“どうすれば取り組めるか”を自分自身で決めていくことが大切だとアドバイスします。
「コーチングはあくまでも黒子なんですよ。禁煙した人が『自分で禁煙できた』と思ってもらえれば成功なんです」と原さんは話します。
「その上で、病院で禁煙治療を受けてみることをすすめます。それ以外にも薬局で相談する方法もありますし、市販のニコチンパッチなどを試す方法も。まずは、自分に合う方法で、“禁煙の扉”を開いてみてください」と呼びかけています。
サポートを受けて
禁煙外来
名称 | 和歌山ろうさい病院 |
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住所 | 和歌山市木ノ本 |
営業時間 | 毎週月・木曜(祝日除く) 午後2時~2時半 ※完全予約制 |
問い合せ | 073(451)3303 |
備考 | 同院勤労者医療総合センター(祝日除く月~金曜午前8時半~5時) ※電話の際は必ず「禁煙外来」と伝えてください |
和歌山県薬剤師会禁煙サポート薬局(和歌山市・海南市)
エース薬局北島店 (和歌山市北島) | 073(488)4311 |
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エース薬局延時支店 (同市向) | 073(457)1048 |
すみれ調剤薬局(同市塩屋) | 073(446)8500 |
調剤薬局ホンダ西庄中央店(同市西庄) | 073(451)0300 |
あおぞら薬局 (海南市名高) | 073(486)3150 |
新町調剤薬局(同市日方) | 073(484)2377 |
ヒカタ薬局(同市日方) | 073(482)1008 |
そのほか、保険診療で禁煙治療をする医療機関については、下記で案内
http://www.kinen-map.jp/hoken/list.php?pref_id=30 (禁煙治療、和歌山で検索)
※受診前には必ず各医療機関に確認を
自分で
禁煙補助剤を活用しましょう。市販されている「ニコチンパッチ」や「ニコチンガム」などを購入してチャレンジ
禁煙コーチングを受けてみたい人は
祝日除く月~金曜午後7時以降、携帯電話または SNSの音声で相談を実施。まずは下記へ連絡
問い合せ先 | ヒカタ薬局・原さん |
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電話番号 | 073(482)1008 |
営業時間 | 祝日除く月〜金曜午後3時以降 |