日本茶がおいしいシーズン。ペットボトルや缶のお茶など、気軽に楽しめる物もいいですが、急須を使って茶葉からじっくり、お茶をいれてみませんか。
新茶の季節到来“朝茶”ですっきり一日をスタート
八十八夜が過ぎ、新茶の季節がやって来ました。お茶の葉の収穫は、5~6月の一番茶、6~7月に葉を大きく育てて採る二番茶・三番茶、10月後半~11月にかけての四番茶「秋冬番茶」と一年に4回行われます。
「朝茶はその日の難逃れ」や、「朝茶は福が増す」という、お茶に関する言葉を知っていますか。朝お茶を飲むと、その一日の災難を防げるという意味のことわざです。一見おまじないのようですが、番茶屋(和歌山市匠町)代表取締役・木村圭一さんによると、お茶に含まれるカフェインが、目覚めたばかりの頭をすっきりさせ、その日に起こるさまざまなことに気をつけることができるという教訓があるとか。
つい余裕がなくバタバタとしてしまいがちな朝。忙しい人こそ! 「朝茶習慣」を始めてみませんか。お茶をいれてゆっくりと味わう時間を作ることで、頭がさえるだけでなく、心にゆとりが生まれて、気持ちよく一日をスタートできるかも。
新茶のおいしさやお茶の雑学まで、さまざまな話を聞きました。木村さん直伝、おいしいお茶のいれ方も紹介します。
文化に溶け込んだ日本茶を知る
忙しいときにこそお茶を飲んで心を落ち着かせて
「お茶が日本にやって来たのは、約850年ほど前」と話すのは、ぶらくり丁商店街に店を構える「番茶屋」の木村圭一さん。中国から伝来したお茶は当初、煎じ薬として上流階級の人々に重宝されたといいます。高級品で、庶民にはなかなか手が届かなかったお茶ですが、江戸時代の後期に緑茶が生まれ、その文化が一般にも広がりました。長い年月の中で、日本人の日常に溶け込んだお茶。たくさんあることわざや身近な言葉からも、関わりの深さがうかがえます。
お茶の摘採は、年に4回。新茶とは、一年の初めにできる、地中の栄養をたっぷりと吸い上げた新芽の一番茶のことです。特徴は、なんといってもさわやかさ。その持ち味を生かすため、もんだり、火を入れたりと手を加えることはなるべくしないそう。若葉の香りと新緑の水色に癒やされます。「新茶をいれたとき、細かな物が浮かんでいるのに気づきます。それはホコリやごみではなく、毛茸(もうじ)というお茶の葉のうぶ毛。新鮮な証拠です」。飲んでももちろん大丈夫。知らなかった人が多いのでは。
新茶の採れる時期は、産地の気候や風土によって異なり、沖縄や鹿児島など南から始まって、北へ移っていきます。和歌山県産のお茶は、田辺市の音無茶(おとなしちゃ)、白浜町の川添茶、那智勝浦町の色川茶(いろかわちゃ)が有名です。
「お茶を売るだけではなく、文化を伝えていくこともお茶屋の役割。疑問に思うことや、興味のあることがあれば、気軽に質問してください」と話す木村さん。手軽なペットボトル飲料などが増え、自分の手でお茶を入れる人が少なくなっている昨今。忙しい朝にこそ、日本茶をいれてほっと一息つきませんか。季節を味わいながら、“心の余裕”を。下記のいれ方を参考に、ぜひ“朝茶習慣”を始めてみてください。新茶は、ホットはもちろん、冷茶でもおいしさを楽しめます。
古くからあることわざや、私たちが普段使っている言葉には、お茶に関わるものがたくさんあります。歴史や雑学から、お茶に親しむのもおもしろいですよ。木村さんに聞いたお話の一部を紹介します
八十八夜
立春から数えて88日目の5月2日、春から夏へと移る節目の日。農家にとって大敵の霜が降りなくなる時期。この日を目安に、種まきや茶摘みが行われます。
朝茶はその日の難逃れ
朝お茶を飲むことで、災難をよけられるということわざ。「朝茶は七里帰っても飲め」「朝茶に別れるな」「朝茶は福が増す」とバリエーションも。
茶色
“お茶の色”といえば緑色を思い浮かべますが、緑茶が生まれたのは江戸時代後期。昔はお茶の色といえば、煎じ薬の色でした。それが今でも黒味がかったオレンジのような色を指す言葉として残っています。
宵越しの茶は飲むな
お茶は栄養が豊富に含まれているので、雑菌が増えやすいといいます。一晩置いたお茶を飲むと、体調を崩す原因にも。
お茶の子さいさい
お茶の子とは、お茶に添えられるお菓子のこと。さっと食べられて、腹にたまらないことから、簡単にできることの例えに。
茶わんと湯のみ
かつてお茶は高級品だったので、庶民は「湯のみ」でさ湯を飲んでいました。やがて茶器として扱われていた「茶わん」が一般化し、「ご飯茶わん」をはじめ、さまざまな用途で使われるように。
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