被災地での体験、経験を生かして㉕
- 2019/3/7
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駒場工務店 駒場一仁代表
命を守る「津波避難タワー」を設計・施工
東日本大震災以降、地震発生から津波到達までの時間的猶予や地理的条件などにより、高台などに避難が困難と想定される全国の津波避難困難地域で「津波避難タワー」の建設が進んでいます。
駒場工務店(日高郡日高川町)の駒場一仁代表は、南海トラフ巨大地震が発生した場合の津波避難困難地域に設定されている御坊市名屋地区に昨年12月に完成した「津波避難タワー」の設計・施工に携わりました。「私は山あいに住んでいて津波の心配はないのですが、紀伊半島大水害のときに、土砂崩れで道路が通行止めになったり、停電になったり被害を受けました。しかし、全国各地で起こる震災の報道を見ても、どこか“人ごと”のところがあって…。今回の『津波避難タワー』の建設で意識が変わりました」と話します。
地域の人がより安心して暮らせるように
名屋地区に完成した「津波避難タワー」は、避難ステージの高さが約10メートル、370人まで収容可能。階段とスロープの動線が同じで、20基あるベンチ式の防災ボックスの中には、水や非常食、簡易テント、仮設トイレなどが備えられています。建築基準法の関係で屋根は可動式テントを採用、また、津波による漂流物の衝撃を和らげる緩衝くいも設けました。「数々の津波避難タワー建設で実績のある静岡県の建築士さんと手を組み、いろいろと教わりました。竣工式で、近隣住民の方から『これで安心して寝れるわ』という言葉をいただいたときに、微力ですが、“命を守る”お手伝いができたのかなと。このタワーが、地域住人にとって、“津波を想定させる怖いもの”となってほしくなかったので、もともとこの地にあった遊具を戻し、子どもたちが集い、日常に溶け込んだ“みんなのタワー”になってほしい」と願います。
一方、一級建築士として、住宅の備えについても強調します。「わが家は、紀伊半島大水害の直前にたまたま太陽光パネルを設置して…。停電が続く中、昼間は電気をまかなえました。小さいことかもしれませんが、もしもを想定して一つ一つ対策をとっていくことで、より安心して暮らせるのでは?」と。(おわり)
一級建築士・駒場一仁さんが伝えたい災害時の備え
◆津波避難タワーは、住民の命を守るタワー。緊急時に“当たり前に上れる”よう避難訓練などで活用を
◆“暮らしの安心”に諦めはNG。環境は自分で変えられます。もしもに備えて一つずつ対策を
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