スポーツキッズをサポートする心理学と栄養学の話
- 2018/4/5
- フロント特集
進学・進級に伴い、この春からスポーツを始めたり、今やっている競技でさらに活躍の場が増えたり…。子どもががんばる姿に一喜一憂するだけでなく、わが子が最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、心理面と栄養面でしっかりとサポートしてあげましょう。スポーツ心理学とスポーツ栄養学の専門家が家庭でできる手法をアドバイスします。
結果だけを求めず内容を重視
足りない栄養を上手にプラス
“スポ根”は一昔前のスポーツのあり方。今は、科学的根拠に基づいたトレーニングで効率的に心・技・体を鍛え、脳科学の研究も進んでいます。そうした中、トップアスリートらが技術を磨き、筋力や体力をつけるのと同様に重きを置いているのが、こころの強化と食事。大人だと自己管理となりますが、子どもの場合は、保護者のサポートが必要不可欠です。
「スポーツメンタルトレーニングは、他人の意志で動かされるのではなく、自らの意志で動けるように導いていきます。『今日の試合どうやった?』『負けた』『アカンやん、勝たな!!』というような会話をしていませんか? 心当たりのある人は要注意。試合の勝敗ではなく内容を重視して」と話すのは、スポーツメンタルトレーニング指導士の中山亜未さん。一方、スポーツ栄養士の村上知子さんは、「SNSやブログなどでプロアスリートの食事が取り上げられる機会が増え、『品数が多くないと…』『インスタントはダメ』と気負いすぎているお母さんが多いように思います。日々の食事を少しだけ工夫することで必要な栄養はとれます」と説明します。
中山さんも村上さんも和歌山県で唯一の資格保有者。セミナーも企画しました。
日常生活に少しの心がけでレベルアップ
1日3食しっかり楽しく食べる
自分で栄養補給できるストックを
料理好きな人は別として、毎日の献立を考えるだけでも大変というお母さんも少なくないはず。そこに栄養のことまでとなると…。「基本的には1日3食、“食事の基本(左図参照)”がそろえられれば良いですが、あまり難しく考えないで。もちろん手づくりは理想ですが、冷凍食品だって、市販の総菜類だって使っていいんです」と村上さん。
村上さんが言うには、「普段の食事を一工夫すれば、アスリートの食事になる」とのこと。例えば、夕食がカレーライスだったとします。サラダは用意するとして、食後に牛乳を飲んで、ミカンを食べれば、タンパク質とカルシウム、ビタミンが補えます。食事で足りないものがあれば補食で、100%果汁ジュースやヨーグルトなどをとると、栄養バランスはよくなります。
そのためには、「乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)、果物(バナナ、ミカン、100%果汁ジュース)、大豆製品(納豆、豆腐)に加え、シラスやハムなど“ワンアクション”で食べられるものをストックして、子どもが自分で冷蔵庫から取り出して食べられるようにしておきましょう」とも。
また、村上さんは、「あれを食べてはダメ、これもダメ…と、食べるものを制限するのはよくありません」と警鐘を鳴らします。子どもは、基礎代謝分と活動分、体を成長させるためと必要なエネルギー量は多く、大人以上の場合もあるからです。
「体型維持を気にするあまり、小さいころから食事制限をすると、低栄養で疲労骨折を起こしたり、女の子だと生理不順にも。食べることはいけないことだと思い込んで摂食障害になってしまう子もいます」と注意を促し、「まずはしっかり食べることを身に付けましょう」と強調します。さらに、「“しっかり食べる”ためには、食事の環境も大切。“孤食”ではなく、家族で食卓を囲んでコミュニケーションを。食事は楽しいトレーニング、食べることは楽しいことですから」と村上さんはアドバイスします。
受動的ではなく能動的な行動を
子どもが本音で話せる親子関係に
「私自身、学生時代にソフトテニスをしていて、練習では絶好調なのに試合では実力が発揮できませんでした。チームメートは仲間であってライバル、監督にも親にも相談できず、それが心理面をサポートする専門家に興味を持ったきっかけです」と話すのは中山さん。では、目に見えない“こころ”をどうやって鍛えていくのでしょうか。
「まずは自己分析から。今の自分の課題や問題点を洗い出すのと同時に、強みも見つけ出します。そして、ゴール(長期目標)を設定します。そのゴールに向かって、短期目標や中期目標、結果目標、プレー目標を立て、達成度を自己評価していく中での成功体験が、自信につながっていくのです」と中山さん。さらに、「客観的にとらえることが重要で、子どもの場合は、保護者や指導者の言動も大きく影響します」と付け加えます。
具体例を挙げると、ジュニア選手に目標を聞くと、「大会で優勝することです」と返ってきます。しかし、それはその子の“本心”とは限りません。保護者や指導者が“優勝、優勝”ということで、受動的(他人の意志で動かされる)にそう発言している可能性もあります。中には、競技を何のためにやっているのかわからなくなっている子もいます。中山さんは、「『次の試合でこんなプレーをしたい、だからこの練習を一生懸命する』といった具体的なプレー目標を持ち、指導者の助言をもとに能動的(自らの意志で動く)に練習に励むことが大切。結果は後からついてきます」と指摘します。
子どもは保護者に“認められたい欲求”があるのに対し、保護者は目先の結果で評価してしまいがち。その一例が1面の会話のやりとりです。
「『負けてしまったけど、練習していたプレーはうまくいった』など、試合を通じて感じたことを聞き出してあげられれば、子どもなりに自己分析ができますよね。結局のところはコミュニケーションです。一方的に考えや手段を押し付けることなく、子どもが本音で話せる親子関係を築くことが大事」と中山さんは教えてくれました。
子どもがスポーツを楽しみ、試合で能力が発揮できるよう支えてあげたい人はぜひ参加を
スケジュール① | 1時〜1時50分 「ジュニア選手のやる気を引き出す心理サポート」 講師/スポーツメンタルトレーニング指導士 中山亜未さん |
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スケジュール② | 2時10分〜3時 「体づくりは食事から~いつもの食事に一工夫~」 講師/スポーツ栄養士 村上知子さん |
日時 | 5月19日(土)午後1時〜3時 |
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対象 | スポーツをしている子どもの保護者 |
場所 | リビング健康クラブ (和歌山市北島453-47コンプラベルデⅡ2階) ※ガーデンパーク東エリア・駐車場あり |
定員 | 40人(応募多数の場合、抽選) |
参加費 | 1人500円 |
申し込み方法 | 電話、ファクス、Eメールで和歌山リビング新聞社まで ※4月25日(水)必着。参加者には27日(金)に案内状を発送します ファクス、Eメール(件名に)は「心理学&栄養学セミナー」と明記し、①〒住所②名前(ふりがな)③電話番号④子どもの年齢とやっているスポーツを記入の上、送信してくださいTEL:073(428)0281(月〜金曜午前9時半〜午後6時半) FAX:073(428)3421(24時間受け付け) Eメール living@waila.or.jp |