黒豆の里「鞆渕(ともぶち)」 がんこ農家の挑戦
- 2017/10/19
- フロント特集
今週号は、“Good Life(上質な暮らし)”を提案する特集をお届け。高級品とされる“丹波の黒豆”と比べても引けを取らない紀州鞆渕産“がんこ農家の黒豆”。希少価値の高い秋の味覚「黒枝豆」が旬を迎えています。
原産地表示をきっかけにブランド化へ
黒枝豆が味わえるは10月の数週間
紀の川市南東に位置する山あいの集落・鞆渕地区。標高400mの山間部で、昔ながらの方法で育てられる〝がんこ農家の黒豆〞は、全国的に有名な丹波篠山産に勝るとも劣らないと評判です。
鞆渕地区では、40年近く前から、昼夜の寒暖の差が大きいことを生かして「黒豆」を栽培していますが、〝鞆渕産〞として日の目を見るようになったのは、ここ数年のこと。
「昔から粒が大きく、品質の良い黒豆を作っていましたが、ノンブランドで出荷していたため、知られることはありませんでした。農産物の原産地表示が義務化されたこともあり、2006年からブランド化する活動を始めました。それが〝がんこ農家〞です」。鞆渕黒豆部会の井中啓泰会長はこう説明します。
ところで、皆さんはお正月のおせち料理以外で「黒豆」を食べますか?「黒枝豆」と答えた人はかなりの食通。「黒豆」が成熟する前に収穫されたものが「黒枝豆」で、「枝豆(大豆)」は、ビールがおいしい7〜8月に最盛期を迎えるのに対し、「黒枝豆」は今が旬。しかも、味わえるのは、10月の2〜3週間で、中でも〝がんこ農家の黒枝豆〞は、流通量が少なく、地元のスーパーや産直市場などごく限られた市場でしかお目にかかれません。
確かな品質でブランド価値を浸透
30軒の農家で生産量は年間8トン
むらおこしプロジェクトで認知度向上
現在、鞆渕地区で黒豆を作っている“がんこ農家”は約30軒で、黒枝豆は約6トン、乾燥黒豆は約2トン生産しています。“がんこ農家”が育てているのは、早生(わせ)品種の「丹波の香」と晩生(おくて)の「丹波黒」の2種。「丹波の香」は10月初旬にすべて枝豆用として、「丹波黒」は10月中旬に枝豆、11月に黒豆が収穫されます。
「6月の種まきから11月の収穫まで手間ひまかけて栽培し、煮豆用の黒大豆は、豆本来のおいしさを生かすため、機械乾燥ではなく天日干しします。選別作業も一粒一粒手作業で行って、極上品だけを出荷するのが、“がんこ農家”。そうすることで品質を保っています」と、井中さんは話します。
「本当は、ビールがおいしい時期に枝豆を作りたいんですけどね。枝豆といえばやっぱりビールでしょ?!その方がもっと認知してもらえると思うんです。でも、品種の特性なのか、早く植えても育たないんです」と。一般的に煮豆用の黒大豆は大粒のものが好まれ、「丹波黒」は世界最大といわれる大粒種。そこにはこだわりがあり、品質にも絶対の自信があります。しかしながら、“丹波の黒豆”のような“ブランド力”がなかったため、かつては買い付け業者に主産地の3分の1程度の価格で販売していたそう。
長らくそうした状況が続いていましたが、2006年、地元の農家たちが立ち上がります。農家所得の向上と産地活性化を図るため、和歌山県の「和歌山ベジフルストーリー開発支援事業」を受け、ブランド化を検討。“がんこ農家”の商標権を取得しました。08年には、鞆渕黒豆部会とJA紀の里、紀の川市、県那賀振興局で「ともぶち地域活性化実行委員会」を組織し、「黒豆の里・むらおこしプロジェクト」が始動します。
畑の一区画で、黒豆の定植、黒枝豆・黒豆の収穫を体験してもらう農業体験イベントを毎年開催。さらに、販路開拓のため、食品加工会社などに働きかけ、数々の“黒豆スイーツ”も誕生しました(下記参照)。郵便局の「ふるさと小包」での取り引きも成立し(今年の黒枝豆の受け付けは終了しています。黒大豆、黒大豆煮については下記参照)、この10年で“がんこ農家の黒豆”は広く知れ渡るようになりました。
一方で問題も出てきています。「丹波に行って黒豆の畑を見せてもらったことがありますが、それはそれは広大な土地。山里の鞆渕でこれ以上畑を広げることはできず、後継者問題もあって生産量を増やすことは難しいのが現状です」と井中さん。
需要が拡大し、ますます希少価値が高まりつつある“がんこ農家の黒豆”。JA紀の里によると、黒枝豆は10月下旬まで販売しているとのこと。今宵(こよい)の晩酌のあては“幻の枝豆”に決まり!
JA紀の里のファーマーズマーケットで10月下旬まで販売。ただし数に限りがあり早々に売り切れることも
問い合わせ | めっけもん広場 |
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住所 | 紀の川市豊田56-3 |
電話 | 0736(78)3715 |
営業時間 | 午前9時~午後5時 |
定休日 | 第1火曜 |
ホームページ | http://www.ja-kinosato.or.jp/01_mekkemon |
問い合わせ | OINACITY(オイナシティ) |
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住所 | 岩出市荊本20 |
電話 | 0736(62)8313 |
営業時間 | 午前9時~午後6時半 |
定休日 | 第1水曜 |
ホームページ | http://www.ja-kinosato.or.jp/facility/oinacity |
来年のおせち料理にいかがですか?11月から受け付け開始予定。郵便局でカタログ販売申込書を配布しています(一部簡易郵便局は取り扱いなし)。詳細は商品提供者のJA紀の里に問い合わせてください
問い合わせ | JA紀の里鞆渕選果場 |
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電話 | 0736(79)0026 |
営業時間 | 午前8時半~午後5時 |
定休日 | 土・日曜、祝日 |
がんこ農家の黒豆スイーツ
愛情たっぷり無添加の手焼きせんべい。黒豆は蒸してオーブンで焼き、水分を飛ばして使用。生地にも黒豆を練りこんでいます
「黒豆せんべい」をコンパクトにしたサイズ(15枚入り)。紀の川市商工会特産品開発事業委員会により企画、開発
やさしく炊きあげられた黒豆が2粒。豆の甘さとふくよかな食感が、あんとベストマッチ
問い合わせ | かがり火製菓 |
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住所 | 紀の川市粉河3192-1 |
電話 | 0736(74)3315 |
営業時間 | 午前9時~正午、午後1時~4時 |
定休日 | 無休 |
黒豆の濃厚な香りと絶妙の歯ごたえ。やわらかなお餅、こしあんとのバランスよし
≪取扱店舗≫
和歌山市観光土産品センター(和歌山市一番丁)、観光物産センターこかわ(紀の川市粉河)など
問い合わせ | 麺彩工房ふる里 |
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住所 | 紀の川市打田21-1 |
電話 | 0736(77)0530 |
営業時間 | 午前9時~午後4時 |
定休日 | 日曜 |
ホームページ(通信販売あり) | https://store.ponparemall.com/pro/mensaikobo/ |
ペースト状にして生クリームにも黒豆を混ぜ込んでいます。生地は米粉を使い、ふんわりやわらかな食感
黒豆を2日かけて仕込み、パウンドケーキに。二層に分かれた生地にもペーストにして使用しています
問い合わせ | ホテルアバローム紀の国 |
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住所 | 和歌山市湊通丁北2-1-2 |
電話 | 073(436)1200 |
営業時間 | 午前11時~午後5時 |
定休日 | 無休 |
ホームページ(通信販売あり) | https://www.avalorm.com/ |