あたまにつまった石ころが

あたまにつまった石ころが

好きを見つけること、夢を持つこと
一つのことをやり続けること

授業中も休み時間も魚の絵を描いていたというさかなクン。「絵はすばらしいけれど、勉強もするようにしてください」と担任から言われたお母さんは、「あの子は魚と絵が好きだからそれでいいんです」と言ったのだそうです。

この記事を読んで思い出したのが、『あたまにつまった石ころが』(出版=光村教育図書、文/キャロル・オーティス・ハースト、絵/ジェイムズ・スティーブンソン、訳/千葉茂樹)です。

主人公の「父」は、子どものころから切手や石ころ集めに夢中になり、周りにどう言われようが、どんなに大変な状況下でも、石ころを集め続けます。やがてそれは認められ、博物館の鉱物学部長を経て館長にまでなるというお話。しかもこれは実話で、作者のキャロルは主人公の娘なのです。

クラスメートから「おじいちゃん」と呼ばれる年齢になって初めて大学に通い、情熱を持って学び続けたという「父」の姿と、「父ほど幸福な人生を送った人を私はほかに知りません」と結ぶ作者の後書きが、本文以上に感動を誘います。

何かを、ずっと好きであり続けることや、夢をかなえることは、容易ではありません。石に魅せられた「父」は変わり者だけど、仕事がなくても、貧乏しても、頭の中をいつも「石ころでいっぱい」にしていました。この絵本は、好きなことを見つけること、夢を持つこと、一つのことをやり続けることのすばらしさを教えてくれています。

読む時に一番困るのは、「あなたの集めている石ころが、いつか何かの役に立つと思っているのだとしたら、あなたの頭の中には石ころがつまっているのね」という妻のセリフです。

貧しい暮らしの中でも石に夢中な亭主をひにくっているのは間違いないのですが、そのまま読むとまるで悪妻。そこに愛はあるのか!となってしまいます。

一つのことをあきらめず、ずっとやっている人はえらい。しかし、その人を支えてくれている人が、実はもっとえらいのではないでしょうか。

名前なりきよ ようこ
プロフィル絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。
保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表

子育て・教育

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