がんばれお兄ちゃん!
心の優しさ一等賞!
中学・高校生の夜の徘徊(はいかい)行動が問題になっています。寂しさから家を出て、繁華街やコンビニエンスストアで友達を探すのだとニュースが伝えていました。
お寺が経営する「夜間保育所」の取材をしました。夜の8時に本堂でかくれんぼうをしたり、境内探検をして遊ぶ子どもたち。眠くないのかと心配でしたが、楽しそうでした。お迎えのお母さんたちも、帰る準備をする間、友達同士のおしゃべりが弾んでいました。
「子どもとの関わりで大切なのは長さではなく、深さです。どんなに長い間一緒にいても、私たち保育士は『お父さんとお母さんがいちばん好き』でいさせてあげなければなりません。リボンをつけてあげるなど、子どもが喜ぶことは親に残しておきます」とその時聞いた所長のお話を今も覚えています。この保育所の運動会、徒競走のゴールはお父さんとお母さんの腕の中。
『よーい どんけつ いっとうしょう』(出版=岩崎書店、作・絵/梅田俊作・佳子)に登場するぼくは、もう少しで自分の番だというのにトイレに行きたくなり、途中、膝から血を出して泣いている小さい子に自分のハチマキを巻いてあげます。
ようやく戻ったものの、「君の列は今ゴールしたところだ」と先生に言われ、気が付くとゴールを目指して走り出していました。一生懸命やればやるほど変になってしまう心優しいぼく。その時、先ほど助けた小さい子が言うのです。「お兄ちゃんが一等賞だ!」。
運動会なんて嫌いと泣くぼくを探しに来てくれた担任の先生には、ちゃんと理由がわかっていました。夜間保育所の所長のように、子どものよき理解者でした。
名前 | なりきよ ようこ |
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プロフィル | 絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。 保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表 |
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