おじいちゃんから孫へ
口伝えに語られる黒人差別の歴史
「白魚」にはほど遠い私の手。「柏餅の葉っぱみたい」だと自虐的に思っていたのですが、先日、偶然にも同じ電車に乗り合わせたご近所さんが、「外見に似合わず働き者の手をしているのね」と言ってくださったのです。
「外見に似合わず」のフレーズはスルーして、「働き者」だとほめられたことがうれしくて!時代はパソコンに移り変わったというのに、いまだにペンだこを残す指が、この時ばかりは誇らしく思えました。ささやかながら、この手でずっと稼いできましたし。
『本物をたずねて』というシリーズで職人の方々の仕事を取材した折に聞いた、『手は休みたがり、人はずるをしたがる。ずるをしなくなるまで、手に仕事を覚えさせる』というお話を座右の銘にしています。
黒人のおじいちゃんが孫に「どうだ、ジョーゼフ、わしの手は」と語りかける『おじいちゃんの手』(出版=光村教育図書、マーガレット・H・メイソン/作、フロイド・クーパー/絵、もりうちすみこ/訳)は黒人差別を静かに描いた絵本です。
靴ひもを結び、ピアノを弾き、トランプのカードをきり、ボールを投げる手が、「黒い」というだけで、パン工場ではパン生地にさわることさえ許されませんでした。
差別された手は仲間の手を求め、つなぎ合います。意見に賛成するたくさんの手が集まり、黒い手だ、白い手だと区別するのはやめようという抗議の輪へと広がります。
人種差別をわかりやすい言葉で淡々と語り、「おまえのその手が、どんな仕事をしようと、もう、文句を言われることはないんだ。おまえのその手は、なんでもやれる」と結びます。心の奥深くに届く作品です。
名前 | なりきよ ようこ |
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プロフィル | 絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。 保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表 |
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