400年目の節目に出合う
紀州東照宮の大祭「和歌祭」
- 2022/5/5
- フロント特集
戦乱の世に終止符を打ち、江戸幕府を開いた徳川家康をまつる、紀州東照宮(和歌山市和歌浦西)の大祭「和歌祭」が、今年400年を迎えます。節目の年、舞台は和歌浦地区から和歌山城周辺へ。来週5月15日(日)、いよいよ開催です!
約1000人が演舞などを披露
和歌山城とその周辺を練り歩く
江戸時代、「和歌の浦には名所がござる、一に権現(紀州東照宮)、二に玉津島、三に下り松、四に塩竃(しおがま)よ」と歌われるなど、和歌浦地区は古くから風光明媚(めいび)な景勝地として知られていました。
この歌に登場する紀州東照宮は、1621(元和7)年、紀州藩初代藩主・徳川頼宣が、父・家康を「東照大権現」としてまつるために創建。「和歌祭」は、家康の命日に合わせて翌22(同8)年から始まりました。
和歌祭の渡御行列は、東照大権現を乗せた神輿(みこし)からなる「渡り物」と、山車(だし)や踊りなどの「練り物」で構成されています。和歌山大学紀州経済史文化史研究所の吉村旭輝准教授は「残された屏風(びょうぶ)や絵図などを見ると、華やかな衣装を着て踊ったり、笛を吹いたり、当時のにぎやかな様子がうかがえます」と説明。「藩主が臨席する中、城下の町民が練り物で参加し、一体となる祭りは、全国に数ある東照宮の祭礼を見ても古く、先進的な事例といえます。そういったことからも『風流の祭り』、また、『民衆の祭り』とされてきました」と続けます。
400年目の今年は「和歌祭四百年式年大祭」とし、5月15日(日)、和歌山城とその周辺で行われます(主催=同大祭実行委員会)。渡御行列は、正午にフォルテワジマ前(和歌山市本町)を出発。神官や巫女(みこ)に続き、「株」と呼ばれる芸技集団など約40種目、総勢約1000人が色とりどりの衣装に身を包み、演技を披露しながら和歌山城までを練り歩きます。 また今回、俳優・松平健さんがゲストとして登場。8代将軍・徳川吉宗に扮(ふん)した松平さんが、地元の人たちと一緒に祭りを盛り上げます。
今回復活した芸能や紀州東照宮について触れる他、当日の行程なども紹介します。
徳川家康の神号「東照大権現」を乗せた神輿が和歌山城周辺を練り歩きます | 女性の参加が認められ、戦後に登場した芸能「舞姫」 |
反物を積み上げ、連尺(物を背負う道具)で運ぶ様子を表現しています |
「雑賀踊」の一つ「笹羅(ささら)踊」。笹の先をこすり合わせて音を出します |
唐物様がモデルとなった山車「唐船(とうぶね)」。その後、「御(お)船歌」も復活 |
行って見て!今年の和歌祭はいつもと違う
途絶えていた芸能3種目が復活
神輿を先導 道を清める役割
今年の和歌祭は、記念事業の一環として、途絶えていた芸能「棒振(ぼうふ)り」「獅子」「童子(どうじ)」が復活(写真①③)します。「これらは神輿を先導し、道を清める重要な役割を担っていましたが、江戸時代後期から徐々に失われました。復活は今後、歴史的・文化的価値としての大切なものとなるでしょう」と、和歌山大学紀州経済史文化史研究所の吉村旭輝准教授は話します。
獅子頭や衣装などは、「東照宮縁起絵巻(1646年、紀州東照宮蔵)」(写真②④)を参考に再現され、地元の企業や学校が「株」組織として新たに文化を引き継ぎます。吉村准教授は「担い手を広げることで“自分たちの祭り”という機運もより高まっています」と話しています。
紀州初代藩主・徳川頼宣ってどんな人?
1602(慶長7)年、徳川家康の10男として伏見城(京都市)で誕生。母は「お万の方」で知られる家康の側室「養珠院」といわれています。
家康から期待を寄せられた頼宣は、8歳にして駿府(静岡市)の城主として迎えられます。家康が亡くなって3年後の、18歳で紀伊国和歌山(和歌山市)へ。55万5000石が与えられ、紀州藩の初代藩主となりました。
徳川幕府を安定させるためにも、和歌山城の改築や城下町の整備などを行い、紀州藩の基礎を構築。漆器「黒江塗」やミカンの栽培を奨励したり、藩内の治安維持に注力したり、多くの政策を実行し、優秀な政治家でもあったと伝えられています。
家康をまつる 「紀州東照宮」
徳川頼宣が、南海道(現在の和歌山、淡路島、四国)の平和を守る神社として創建。和歌浦湾を望む雑賀山に鎮座し、「関西の日光」とも呼ばれるなど、古くから「権現さん」の愛称で親しまれてきました。本殿には、江戸幕府初代将軍・徳川家康を神格化した「東照大権現」、頼宣を神格化した「南龍大神」がまつられています。
社殿は、江戸時代に流行した「権現造り」で、組み物や彫刻が多く、漆塗りであでやかな彩色が施されているのが特徴。当時活躍したとされる彫刻師・左甚五郎の「鷹(たか)狩り」や、狩野派の絵師・狩野探幽の壁画などを見ることができます。社殿を含む、境内の7棟が、国の重要文化財に指定されています。
見応えあり!社殿に施された彫刻
家康がタカ狩りを好んだことから、タカがキジを捕えている彫刻が施されています |
武器が使われない平和な世の中を願い、夢ではなく、鉄を食べる動物としてバクを彫刻 |
お問い合わせ先 | 紀州東照宮 |
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電話番号 | 073(444)0808 |
電話番号 | 和歌山市和歌浦西2-1-20 |
拝観時間 | 午前9時~午後4時 |
備考 | 社殿の拝観は大人300円、小・中・高校生100円 |
見つけて!かわいい石畳
鳥居をくぐってから続く石畳の参道。その中に、リンゴやハートの形をした石があります。参拝の際、見つけてくださいね!
松平健さんが来和
和歌祭の当日、時代劇で8代将軍・徳川吉宗を演じた俳優・松平健さんが来和。殿さまの衣装で白馬に乗った松平さんを先頭に、侍など約40人が、和歌山城周辺を練り歩きます。
和歌祭・その他関連イベントスケジュール
●和歌祭四百年式年大祭と前夜祭
和歌祭四百年式年大祭記念ブラクリナイトマーケット
5月14日(土)
場所:ぶらくり丁
時間:午後5時から
和歌祭四百年式年大祭
5月15日(日)
場所:和歌山城とその周辺
時間:正午▷渡御始め式(フォルテワジマ前)
午後0時15分▷渡御行列(フォルテワジマ前~市役所前)
〈演舞ポイント〉
・京橋プロムナード前
・公園前交差点周辺~ダイワロイネットホテル和歌山前
・和歌山市役所前
午後2時半▷渡御納め式(和歌山城西の丸広場)
お問い合わせ先 | 和歌祭四百年式年大祭実行委員会(東照宮会館) |
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電話番号 | 073(444)0808 |
HP | http://wakamatsuri.com/400th |
●食のイベント「頼宣公Food Hunter Tourism(フード・ハンターツーリズム)」
和歌祭四百年式年大祭記念ブラクリナイトマーケット
時間:午前10時~午後4時
場所:和歌山城西の丸広場
お問い合わせ先 | 紀州夢まつり、和歌山まちなかシルクロード構想実行委員会 |
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メール | 0kinaconews@gmail.com(KINACO地方創生通信社) |
●和歌山大学
和歌祭四百年式年大祭で図録配布
5月15日(日)
和歌山城周辺の和歌山大学「紀州研」ブースで
特別展「和歌祭四百年式年大祭・御神忌と大祭」
6月3日(金)まで
時間:午前10時半~午後4時
場所:和歌山大学紀州経済史文化史研究所展示室(和歌山市栄谷)
お問い合わせ先 | 和歌山大学紀州経済史文化史研究所 |
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電話番号 | 073(457)7891 |