和歌山県立博物館が地元の高校生や大学生と協力
花坂地区へ身代わり仏像として奉納
コンピューターで設計したデータをもとに、樹脂を何層にも重ねて立体構造をつくる3D(3次元)プリンター。部品の試作用など一部の産業で使われてきましたが、精巧な複製がつくれることから多分野にも浸透し、文化財の管理や保存、防犯対策としても活用されています。
和歌山県立博物館は、平成24年から和歌山工業高校と協力し、地域の寺社に残る文化財の複製を3Dプリンターで制作。今年度からは、新たに和歌山大学教育学部美術科の学生もボランティアで参加するなど、活動の輪が広がっています。同館学芸員・大河内智之さんは「高齢化や人口減少などで管理や保存が難しい文化財を博物館などで保存し、信仰されてきた環境も従来通り維持するといった取り組みの一環」と話しています。
このほど、花坂観音堂(高野町花坂)所蔵の阿弥陀如来坐像(平安時代中期頃)を同館が複製し、身代わり仏像として奉納しました。
複製作業は昨秋から始まり、高校生が計測から出力までを、大学生が着色を手掛けました。
当日は、作業に関わった生徒や学生も花坂地区を訪問。地域の人に坐像の複製を手渡しました。花坂地区・前区長の上田静可さんは「年代が古く傷みがある上、以前、別の仏像が盗難に遭っているので、どう管理しようかと思っていました。観音堂で末永くまつらせてもらいます」と、礼を述べました。
同高校産業デザイン科3年の北勇晟さんは「作業に関わり、自分たちの世代が守っていかなければと思うようになりました」、同大学2回生の広瀬真由さんは「実際にまつられた仏像を見て感動しました」と笑顔。
3Dプリンターで制作した文化財の複製品の奉納は今回で10カ所、21体目。大河内さんは「仏像の盗難被害が続発しており、防犯対策が喫緊の課題。地域の歴史を守るため、博物館の社会的役割を今後も果たしていきたいです」と話しています。
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