日本人の2人に1人がかかるといわれている病気「がん」。中でも大腸がんは、臓器別で見ても、かかる率、死亡率ともに年々増加傾向にあります。しかし、早期に発見し、治療を開始できれば高い確率で治癒するともいわれています。3月は大腸がん啓発月間。日本赤十字社和歌山医療センターで、大腸がんについて話を聞きました。
初期は自覚症状がないため注意が必要
大腸はおなかを時計周りに1周する全長1・5~2メートルの臓器で、盲腸、結腸、直腸からなり、小腸で消化された食べ物などの水分吸収を行い、便を固める役割を担っています(左下参照)。大腸がんは国内で年間約15万5000人が新たに発症しています。腺(せん)腫という良性のポリープががん化するものと、正常な粘膜が直接がん化するものがあり、男性は前立腺がん、女性は乳がんに続き2番目に多いがんです。
発症の原因について、日本赤十字社和歌山医療センター消化器外科・伊東大輔部長(写真)は、「加齢(遺伝子変異が修正しきれずに蓄積)や、運動不足、食生活(脂肪の過多、食物繊維の不足)、飲酒、喫煙などが考えられます。がん細胞は大腸内の壁の粘膜層に発生し、進行すると徐々に深く大きくなり、リンパ節や肝臓、肺などにも転移していきます」と説明します。
初期は自覚症状がありませんが、進行すると、便の表面に血が付いたり、便秘や下痢を繰り返したり、便が細くなったりする他、慢性的な出血が続くと貧血症状が現れることもあります。「便検査で便潜血と判定される人は約5~10%。その中の約3%からがんが見つかります。要精密検査の結果であれば、自覚症状がなくても医療機関で大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします」と話します。
がんが見つかった際の治療法は、外科手術による切除が基本です。がんの深さや緊急度によっては開腹手術となりますが、現在は体への負担が少なく、術後の回復が早い腹腔鏡下手術が主流となっています。また2022年に、直腸がん全てに対してロボット支援下手術が保険適用されました。同センターではロボットを使った腹腔鏡下手術の事例も増えています。術後、ひん便や便漏れなどの排便障害が起こることもありますが、時間とともに手術前の状態に戻っていくとされています。
術後は再発予防のための化学療法(抗がん剤)を行うことがあります。5年間は定期的な通院と検査が必要です。5年以内の再発率はステージ1で5・7%、2で15%、3で31・8%ですが、5年以降の再発率は1%以下です。伊東部長は「手術を含めた治療の進歩で、治癒率も上がってきています。何よりも早期発見が大切です。がんにならない生活を心掛けるとともに、40歳を超えたら、定期的に大腸がん検診を受けましょう」と話しています。
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