温度差なしでヒートショックの防止に
国が、「消費するエネルギーを抑えた住宅=省エネ住宅」の普及に力を入れていることもあって、昨今は、高気密・高断熱を標準仕様に掲げる住宅メーカーが大半。さらに、気密性・断熱性能の向上、エアコン・換気システムの技術革新などを背景に、「全館空調」を提案するメーカーも増えてきています。今年1月に全館空調の家「グラン」を商品化した「紀の国住宅」(和歌山市餌差町)の一級建築士・尾﨑傑さんに、快適性や電気代のことなど、気になる質問に答えてもらいました。
「全館空調の話の前に、換気の説明を少し。シックハウス症候群を防ぐために、2003年以降に建てられた住宅には、24時間換気システムを設置することが義務付けられていて、室内の空気が2時間で入れ替わることが基準とされています」と尾﨑さん。「外から入るPM2・5や花粉などをフィルターでシャットアウトして、家の中にきれいな空気を取り込み、なおかつ1台のエアコンで浴室を除く家中の室温を一定に管理するのが全館空調です」と話します。
導入のメリットとしては、家の中の温度差がないので、どの部屋も快適で、今社会問題として注目されている「ヒートショック」の防止に。また、換気と空調で室内干しでも洗濯物が乾きやすく、窓を開けて換気をする必要がないためホコリが立ちにくいのだとか。
でも、本当に家の中の温度差はないのでしょうか。「西日が差し込む部屋、開口部が大きい南向きのリビングなど多少の差は生じますが、階段や廊下、洗面所やトイレにも涼しさ、暖かさが行き渡ります。メーカーによっては部屋ごとや階層、ゾーンで温度調整が可能。風量もコントロールできます」と。とはいうものの、電気代が心配。「個別エアコンに比べて安くなることはないですが、高気密・高断熱なので思っているほどではないと思います」とのこと。
あと、怖いのが故障。真夏に全室冷房が使えないとなると…。「それは確かにデメリットの一つ。弊社では、保険としてリビングにルームエアコンを設置することを推奨しています。気密性が高いので、量販店で売っている小型のエアコンで十分まかなえます。デメリットでいえば、冬場は乾燥しやすいので加湿器も必需」と教えてくれました。
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