100年 話し合いで解決!調停制度

リビング和歌山10月1日号「100年 話し合いで解決!調停制度」身の回りで起こるトラブルに対して裁判所が仲介し、話し合いによって解決を図る「調停制度」。1922年に借地借家調停法として発足し、今年10月1日で100年となります。時代のニーズに応じて利用しやすいよう変化してきた制度。その特徴や利点などを和歌山地方・家庭裁判所で聞きました。

時代に応じ100年、調停制度
山﨑岳志裁判官にインタビュー

―調停とはどんな制度
調停制度は、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話し合いによってトラブルを円満に解決するために設けられた手続きのことです。

―調停の主な種類は
近隣トラブルなど、他人との間に生じたトラブルを扱う民事調停(以下=民事)と、離婚など家庭内のトラブルを扱う家事調停(以下=家事)があります。

―手続きは簡単ですか
はい。調停は法律の知識がなくても一人でできます。手続きは、民事が主に簡易裁判所、家事が家庭裁判所で行います。

―誰が仲介し、どう解決へと進めるのですか
通常、裁判官1人と調停委員2人以上からなる調停委員会が仲介に入ります。当事者双方の言い分をよく聞き、中立公平な立場から双方の利益を考え、解決案を示すなどサポートしながら進めます。調停で決まったことは、裁判による判決と同じ強制力があります。

―訴訟と異なる利点は
訴訟は公開の法廷で行われますが、調停は調停室での非公開。当事者以外の第三者に知られることなく手続きができます。特に家事は、プライバシー性の高い問題を扱いますので、安心してお話いただけると思います。他にも、申し立てに必要な書式などはウェブサイト(2面)に掲載しています。書類を作成し、郵送で提出すると、裁判所に行かずに申し立てができます。また、手続きにかかる費用も訴訟に比べると低額です。

―申立内容は時代とともに変化していますか
最近は、交通事故に伴う損害賠償関係、養育費や子どもとの面会交流の申し立てなどが増加傾向にあります。また、新型コロナウイルス感染症の影響でローンの支払いなどに困った人が、支払い方法の調整のために申し立てるケースも見られます。

―年間どのくらい調停が行われているのですか
昨年の全国新受件数でいうと、民事が約3万1000件、家事が約13万2000件。うち和歌山管内は民事が194件、家事が893件でした(詳細は下の円グラフ)。

―最近の傾向や利便性は
近年、調停当日の電話会議の利用が増えており、家事においては一部地域でウェブ会議による手続きの試験的導入も始まっています。これらは、“仕事が休めない”“遠隔地に居住している”など当事者本人の負担軽減や、DVといった接触回避の観点などからメリットがあると考えています。

―多くの問題に関わる中、心掛けていることは
例えば、“トラブルの実情を知るために話を聞くとき”“検討を促すとき”など、目的を持って進めるよう意識しています。当事者にとっても、何のための手続きなのかが分かり、着実に話が進んでいると実感を持ってもらいやすいと思っています。ひいては納得につながるのではないかと感じています。

―もしものときのために、制度を知っておくことは大切ですね
はい。裁判所としてもお互いに納得し、合意できる解決を目指すという軸は変えることなく、利用される人の生活環境など、多様なニーズに応じた調停運営を行えるよう、これからも取り組んでいきます!

調停制度について知ろう

調停の流れ

Q 調停の申立方法は
「申立書」を管轄する裁判所に持参か郵送で提出。申立書は裁判所のホームページ「申立て等で使う書式」からも取得できます(右記2次元コード)。申立書以外の必要資料については裁判所に問い合わせを。

Q 申立手数料はどのくらい?
民事調停は請求額によって異なり、貸したお金10万円返還の場合は500円、100万円返還の場合は1000円。家事調停は離婚を求める場合、1200円かかります。他にも、関係者に書類を送るための郵便切手代が必要です。

Q 調停当日までの準備物はある?
調停期日の場で紛争の内容や自身の言い分について説明できるよう準備しておいてください。契約書や領収書など、紛争の内容を説明するために役立つ書類があれば、持参してください。

Q 相手方になったとき、どうすれば
話し合いを進めるためにも、原則として相手側も裁判所に行く必要があります。調停期日の場ではトラブルの実情について聞かれます。呼び出し状に申立書の副本などが同封されている場合は、よく読んで自身の言い分を整理しておいてください。

Q 調停が成立した場合は
成立したときは、当事者双方が合意した内容が記された書面(調停調書)を作成します。その効力は裁判による判決と同じ効力があり、仮に調停で決まった内容が守られない場合、財産の差し押さえなど、強制執行の申し立てができます。

Q 調停が成立しない場合は
原則終了となります。ただし、裁判所が当事者のさまざまな事情などを考慮して、裁判の形で一定の解決を示すことが相当だと判断したときは、調停に代わる決定(民事)・審判(家事)をして、結論を示すことがあります。

家事調停とは

・離婚
・養育費
・子どもとの面会交流
・遺産分割など

例えば…
■養育費の請求
A夫とB子は子ども2人の親権者を母・B子と決めて離婚。その際、養育費の取り決めをしていなかったことから、B子はA夫に対し、養育費請求の調停を申し立てました。調停委員会が双方の言い分を聞き、双方の収入が分かる資料を基に、A夫に対して養育費の支払いを提案して双方が納得。

■子どもとの面会交流
C男とD美夫婦は、D美が長男を連れて実家に戻り、現在別居中。C男が長男にずっと会えておらず、面会交流を求める調停を申し立て。調停委員会が双方の言い分を聞くとともに、家庭裁判所調査官による子どもの状況調査を実施。その結果などを踏まえて調整を行い、当面月1回の面会を行うことで双方が合意。

 

民事調停とは

・お金の貸し借り
・交通事故
・近隣トラブル
・労働上のトラブルなど

例えば…
■売買代金の未払い
飲食店に厨房機器を納入した業者が、納入代金を支払ってもらえないので、納入代金の支払いを求めて申し立て。飲食店は支払う義務は認めるものの、手元資金がなく、分割払いを希望。納入代金の分割支払い案を納入業者に示したところ了承。

■自動車事故
コンビニエンスストアの駐車場で自動車同士の物損事故。衝突の状況や過失割合に関して、当事者間で折り合いがつかず、EさんがFさんに対し、自動車の修理代金の支払いを求める申し立て。双方が提出した資料から、調停委員会が衝突の状況を判断し、一般的な過失割合を双方に提示し、損害賠償額を確定。相互の支払い額を差し引きし、EさんがFさんに差額を支払うことで合意。

調停の様子

調停委員会
裁判官1人、調停委員2人以上で構成されています

家庭裁判所調査官
家事調停の場合、調停期日以外の日に、家庭訪問で子どもの様子を確認したり、面接したりすることもあります

調停委員
弁護士や司法書士などの専門家の他、会社員や地域で活躍してきた人など、社会・人生経験が豊富で、さまざまな専門知識を持つ一般の人の中から選ばれます。家事調停は、男性と女性各1人。民事調停は事案に関する専門家や男性2人の場合もあります

和歌山地方裁判所

住所和歌山市二番丁1
家庭裁判所(家事調停)073(428)9959
簡易裁判所(民事調停)073(428)9974
HPhttps://www.courts.go.jp/wakayama/index.html

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