10月10日は目の愛護デー
進化する最先端眼科医療
- 2023/10/5
- フロント特集
10月10日は「目の愛護デー」。県内各地で目の健康にかかわるイベントが開催されています。
今週は、進化する目の最先端治療について、和歌山県立医科大学眼科学講座の雑賀司珠也教授に紹介してもらいました。
精度・深度・細部にこだわった
眼科用3次元映像システム
手術指導にも威力を発揮
日本は高齢化が進み、人生100年時代。加齢が原因で「白内障」「緑内障」「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」「黄斑前膜」など、目の病気にかかってしまうことがあります。高齢者に多い目の病気ですが、早い人では40歳代でかかることもあるそうです。
人は情報の約80~90%を視覚から得ているといわれているので、目の機能の衰えは、日々の生活に大きなダメージとなります。人の目は片方がみえにくくても、もう一方がカバーするため異常に気付きにくいとか。病気によっては失明につながるケースもあるので、定期的に眼科を受診し、病気の予防と早期発見・早期治療を。
最先端眼科医療について雑賀司珠也教授に紹介してもらいました。
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まずは、眼科用3次元映像システム「NGENUIY・エンジェニュイティ3Dビジュアルシステム(写真)」を紹介します。
ビデオカメラを搭載した世界初の眼科用リアルタイム映像システムで、3Dビデオカメラで撮影した映像をハイスピードで最適化。55インチの大型モニターに映し出す映像は、繊細な眼底組織をこれまでになく鮮明で奥行きのある表現に。さらにカラーコントラスト調整により、染色された増殖膜を強調して表示させるなど、手術ごとに映像をカスタマイズできます。網膜周辺部の見えにくさに対応し、術中の患者さんのまぶしさや光暴露による黄斑部への影響が軽減されました。
従来の顕微鏡による手術よりクリアな画像が得られることで、手術の安全性が期待できます。
医師は長時間にわたって顕微鏡をのぞき込むことから解放され、そして医師だけでなく、手術室にいるだれもが同じ手術映像をリアルタイムで観察できるようになりました。顕微鏡の手術ではオペをしている医師だけしか見ることができなかった手術映像を、研修医やオペ室にいる医師全員で見ることができるので、コミュニケーションの向上につながっていると同時に、優れた教育現場にもなっています。
撮影範囲通常は60度
OPTOS(オプトス)200度
瞳孔(どうこう)を開く薬も不要
眼底検査は、人間の体で直接血管を観察できる唯一の検査です。これにより血管状態や網膜・視神経など目の奥の状態の写真撮影を行います。点眼薬で散瞳(さんどう)する場合、目が見えるように戻るまで数時間かかります。
しかし超広角走査型レーザー検眼鏡「OPTOS」は画角200度、眼底の80%以上の領域を無散瞳、非接触で撮影します。従来の検査機器では困難な眼底周辺部の病変をOPTOSは見逃さずに見つけることができます。
和歌山県医大附属病院のOPTOSはOPTOSのなかでもオプトス・カリフォルニアという機種で、撮影画像の解剖学的な位置がより正確です。大人だけでなく小児の撮影も可能。従来の眼底ガメラでは網膜周辺部に異常があっても、診察時に患者さんに写真を見せることが困難でしたが、オプトスによる撮影で患者さんが自分の目で、自身の網膜周辺の状態を知ることができます。
治療の選択肢が広がっています
定期検査で予防と早期発見
遠方と近くにピントが合う
多焦点眼内レンズ
加齢などが原因で眼内に老廃物が蓄積し、水晶体の内部が酸化・糖化することなどが原因で、白内障が起こると言われています。「ぼやけて見えにくい」「視力が落ちる」「屋外に出ると光がまぶしい」など、症状は一人一人異なりますが、これが「白内障」です。白内障手術は濁った水晶体を取り除き、その代わりに人工の水晶体「眼内レンズ」を挿入します。
この「眼内レンズ」は大きく分けて「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」があります。
「単焦点眼内レンズ」はピントの合う範囲が近くか遠方か、どちらかになります。そのため遠方にピントが合っている場合は近くを見るための眼鏡が、また近くにピントが合っている場合も遠方にピントを合わせる場合の眼鏡が必要となります。
そこで開発されたのが、遠方と近く、中間にピントを合わせることができる「多焦点眼内レンズ」です。
対象は、白内障の影響で視力低下を感じている人、白内障以外に目の疾患がない人ほか。
まずは眼科医に相談をしてください。
加齢黄斑変性
抗VEGF療法
「物がゆがんで見える」「暗く見える」「視力が低下する」などの症状が現れる目の病気が「加齢黄斑変性」です。網膜の中心部にある直径2~3㍉ぐらいの小さな部分が黄斑で、物の形や色彩を認識する役割を持っています。この部分に異常が起こると深刻な視力低下につながる怖い病気です。
治療方法は抗VEGF療法(硝子体“しょうしたい”注射のこと・下図参照)です。
体内には、脈絡膜新生血管の成長を活発化させるVEGF(血管内皮増殖因子)という物質があります。抗VEGF療法では抗VEGF抗体を眼球の中の硝子体に注射し、加齢黄斑変性の原因である脈絡膜新生血管を抑制する治療法です。
抗VEGF療法により、新たな血管の成長を阻害します。
抗VEGF抗体は当初大腸がんの治療薬として開発。がん細胞に栄養を送る新生血管を作らせないようにする働きがあり、これが有効だったため、新生血管が原因で起きる他の病気にも使われることになりました。