10月10日は、目の愛護デー
ストップ! 子ともの近視

リビング和歌山10月8日号「10月10日は、目の愛護デー  ストップ! 子ともの近視」

 スマートフォンなどの普及により、近くの物を見る作業が習慣化する昨今。小学生の3人に1人は視力が1.0未満と、子どもの近視が深刻化しています。生活する上で大きな役割を果たし、長い人生を共に歩んでいく視覚。「目の愛護デー」を機に、親子で考えましょう。

和歌山県立医科大学 副学長・医学部 眼科学講座 教授 雑賀 司珠也さん

話を聞いたのは
和歌山県立医科大学
副学長・医学部 眼科学講座 教授
雑賀 司珠也さん

子どもの目はデリケート
将来の視覚を守る大切な時期

図1

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文部科学省の調査によって、小学生の3人に1人、中・高生の2人に1人が視力1.0以下の近視者であることが明らかに(令和3年度学校保健統計調査参照)。近くの物を見る作業が多い昨今。スマートフォンが普及し始めた10年前と比べると、子どもの近視者が増加していることがわかります(図1参照)。

遠くが見えずらくなる「近視」は、眼軸(=眼球の奥行き)の長さが伸び、網膜に届くピントがずれてしまうことで起こります(図2参照)。

図2

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個人差はありますが、眼軸の成人サイズは平均24mm。強度近視者となると27mm以上眼軸が伸びます。

生まれたばかりの人間の眼軸は約17mmで、平均的に13歳までに成人サイズへ成長。子どもの目は日々変化します。「眼球の形が安定せず、成長過程にある子どもの目はとてもデリケートです。将来の視覚を守る上で、とても大切な時期です」と、和歌山県立医科大学眼科学講座教授・雑賀司珠也さんは話します。

雑賀さんによると、近視進行には、「遺伝子要因」と「環境要因」が関与しているそう。環境要因として挙げられるのは大きく3つ。1つ目は、屋外活動が減ることです。太陽光が目に入ることで、網膜内で神経伝達物質・ドーパミンが増加し、眼軸の伸長の抑制に効果があるとされていますが、子どもの外遊びが減少している昨今。雑賀さんは、「コロナ禍でさらに屋外活動が減り、近視者が増加したという報告もあります」とも。

2つ目は、テレビやスマホなど、デジタル機器の視聴時間の増加。本や新聞などの紙と違い、強い光を放つ画面は、目に負担をかけます。

3つ目が、近くを見る作業の習慣化です。人は物を見るとき、水晶体周囲の毛様体筋を緊張させたり、緩めたりしてピントを調節します。手元にピントを合わせた状態が続くと、その距離を見やすいように順応し、眼軸が伸びることに。特にスマホはつい顔を近づけて見てしまうことが多いため、注意が必要です。

雑賀さんは、「一度伸びた眼軸は元に戻らず、近視は治りません」と警告。取り返しがつかない分、親としては子どもの視力低下は心配です。しかし、今やデジタル機器は、子どもたちの遊びや学習ツールの必需品。家庭でルールを決め、上手な付き合い方を親子で考えましょう。

下記では、日常生活で気を付けるポイントなど、子どもの近視に関する疑問を雑賀さんに答えてもらいました。

目のプロ・雑賀教授に聞いてみた
親子で考えよう。未来の視覚を守る行動

Q1 日常生活で気を付けることは?

「外遊び」で太陽の光を十分に浴びる
毎日屋外活動することを意識しましょう。太陽光を浴びて、眼軸の伸びを抑える行動を

物を見るときは、目から20cm以上離す
集中しすぎるとつい目と物の距離は近づきがち。定期的にお子さんの姿勢を正してあげましょう

 長時間スクリーンを見続けない
毎動画やゲームなど、夢中になって見てしまうスマホなどのデジタル機器。30分見たら、5分ぼんやり遠くを見るなど、こまめに目を休ませましょう

 眼科で定期検診を受けよう
視力が低下しても、病気ではないから放っておく…ではいけません。定期的に医師からアドバイスを受けましょう。目の病気は自覚症状が少なく、思わぬところで病気を発見するケースも

子どもが小学校低学年の間は、ルールを決めるなどして
目の健康を守ってあげてくださいね

Q2 眼鏡、コンタクトデビューするタイミングは?

「教室の前の席に座っても、黒板が見えにくい…」など、学業に支障が出始めたら、眼鏡デビューの検討を。必ず眼科を受診してから、眼鏡を作ってあげてくださいね。レンズの度数は、生活における不自由度を解消できるレベルで矯正しましょう。いきなり強すぎるものは使用しないよう注意を。また、コンタクトレンズは、フレームがないので視野が広がりとても便利ですが、角膜の表面に乗せるので、衛生管理が大切。着脱時の手洗いが不十分だと、強い痛みを引き起こす「アメーバ角膜炎」を引き起こすことも。自己管理ができる高校生ぐらいから、使い捨てのソフトレンズを使用してみて。

Q3 子どもの近視の危険性って?   

 「近視=遠くが見えにくい」だけではありません。近視が進み、強度近視になると、大きくなった眼球を覆う網膜は引っ張られ、薄くなり負荷がかかります。よって、近視者は「網膜剥離」や「白内障」の発症リスクが高く、視野が欠けていく「緑内障」の進行も早いとされています。これらは失明に至るケースも多々あり、「眼鏡をかけて不自由がないからよい」ではなく、将来の視覚にも関わってきます。

Q4 近視は治療できるの?     

 近視を回復させることはできません。しかし最近では、点眼薬「マイオピン(0.01%低濃度アトロピン)」で、近視進行を抑える治療法があります(保険適用外)。中度近視以下の小児(6~12歳)を対象に、1日1回の点眼で、眼軸の伸びの抑制を期待するものですが、まだまだ一般的ではなく、和歌山県立医科大学では取り扱いはありません。治療を検討する場合は、効果や副作用をきちんと理解してからにしましょう。

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