近年、よく耳にする「血糖値スパイク」。食後、血糖値が激しく上昇・降下を繰り返す症状で、放っておくと、体への負担が高まるとされています。今号は、血糖値スパイクの症状や予防対策について、和歌山ろうさい病院で話を聞きました。
食べる順の工夫や適度な運動で予防を
「血糖値」とは、ブドウ糖の血中濃度のことで、食事の前後で血糖値が変化します。その仕組みについて、和歌山ろうさい病院・若﨑久生副院長(写真)は、「食事中の炭水化物(糖質)などは、食道、胃を通り、ブドウ糖に分解されて小腸で血液の中に吸収されます。血液中のブドウ糖の濃度が上がると、すい臓が感知してインスリン(ホルモン)を分泌。インスリンの働きを受けて、肝臓や筋肉などの細胞が血液中のブドウ糖を取り込み、濃度が下がります」と話します。
健康な人の血糖値は早朝・空腹時で約90ミリグラム/デシリットル。食後は約140ミリグラム/デシリットルまで上がりますが、3~4時間で元の値に戻ります。一方、加齢などでインスリンの分泌量が少なかったり、働きが悪かったりすると、食後2時間を過ぎても200ミリグラム/デシリットル以上の高い状態が続くことがあります。慢性化すると、糖尿病や糖尿病予備軍と診断されます(グラフ参照)。
血糖値に関連して近年、注目されているのが「血糖値スパイク(グルコーススパイク)」。食前・後に関わらず血糖値が高い状態の糖尿病と違い、食後の短時間で血糖値が急上昇・急降下するのが特徴です。若﨑副院長は「食後、インスリンがうまく出ないと、食後の血糖値が短時間で急激に上昇します(食後過血糖)。これに反応して遅れてインスリンが大量に出ると、今度は急激に下降します。繰り返されると、血管にダメージを与えて動脈硬化を引き起こし、脳卒中や脳出血、心筋梗塞などにもつながります」と説明します。
血糖値スパイクを起こしやすい人の特徴として、「食べるのが早い」「炭水化物中心の食事」「運動習慣がない」「血縁者に糖尿病の人がいる」などが挙げられます。難しいのは健康診断など、空腹時の血糖値で血糖値スパイクがあるかどうかを判断できないこと。若﨑副部長は「血糖の経時変化をもとに糖尿病かどうかを評価する検査『糖負荷試験』や、健康診断の検査項目に含まれているヘモグロビンA1c(HbA1c)などが参考になります。空腹時血糖が正常値でも、HbA1cが高め(6・0%以上)と判断されたら、血糖値スパイクなどの可能性も考えられるので注意が必要です」と伝えます。
血糖値スパイクの予防には、野菜やキノコから食べるなど食事の順番を工夫したり、食後に軽い運動をしたり(筋肉での糖の取り込みが増えるため)するのがよいとも。若﨑副院長は「健康に関するアプリを取り入れるなど、モチベーションを高めながら、根気良く続けることが大切です」とアドバイスしています。
「世界糖尿病デー」(11月4日)に合わせ、和歌山ろうさい病院が、11月14日(火)、公開講座を開催します。詳細は左記。
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