防災遺産で町おこし
- 2016/10/27
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広川町に伝わる故事「稲むらの火」にちなみ、国連で11月5日が「世界津波の日」に採択されて、まもなく1年になります。広川町は、津波防災遺産を軸に、建物や伝承など、歴史的資源を生かした、町づくりを進めています。
広川町の風致計画が国の認定受ける
建物や伝承を生かし環境整備へ
「稲むらの火」は、安政元(1854)年、旧暦の11月5日、安政南海地震に伴う津波が広村(現広川町)に押し寄せた時、実業家・濱口梧陵が稲わらの束に火をつけ、村民たちを高台に導き、津波から守ったという故事。
昨年12月、国連総会で日本が、11月5日を国連の共通記念日「世界津波の日」とすることを提案。日本を含む142カ国が共同提案国となって制定されました。津波のおそろしさ、地震後の早期避難を伝える防災の重要性を説いた話は、世界中にさまざまなかたちで広がり、注目されています。
そんな中、同町の「稲むらの火」にまつわる津波防災遺産を軸とした「歴史的風致維持向上計画」が、今年10月3日、国土交通省などの認定を受けました。計画は、歴史的な建物や伝承を生かした町づくりを支援する法律「歴史まちづくり法」に基づくもの。これまでに認定された自治体は、広川町を含めて59市町。県内では湯浅町に続き、2例目となります。
広川町は来年、文化庁の「日本遺産」も申請する予定で、同町教育委員会の平井正展さんは「歴史的な魅力を見直すことで価値を高め、町の活性化につなげていければ」と話しています。下記では、広川町の歴史や街並みを紹介します。
歴史を感じながら広川町を散策
濱口梧陵による村人救出と広村堤防築堤の復興は、故事「稲むらの火」となり、現在も防災教育の象徴として語り継がれています。
梧陵は、広村で分家・濱口七右衛門の長男として生まれ、12歳の時に本家の養子となり、千葉県銚子で家業「ヤマサ醤油」の事業を継いでいました。安政南海地震が起こり、紀伊半島一帯を津波が襲ったのは、梧陵が広村に帰郷していた時のこと。
梧陵は、田んぼに積み上げられた稲わらを燃やし、避難路を示すことで、暗やみの中で逃げ遅れていた村人を高台の広八幡神社へ誘導。
災害後も自分の財産を投じ、村人のために家を建て、仕事を失った人には堤防をつくるための仕事を与えるなど、復興に力を注ぎました。その堤防は昭和南海地震の時、村を津波の被害から守っています。
同町では、防災意識を高めるため、毎年10月第3土曜に「稲むらの火祭り」を開催。住民たちが火のついたたいまつを手に、同町の役場を出発し、避難道をたどるようにして、広八幡神社までの約2キロを歩く行事が続いています。また11月5日は、地元の小中学生によって、広村堤防の土盛りが行われた後、感恩碑の前で、梧陵の功績をたたえ、町の安全を祈願する式典が行われています。
今回の計画では、「稲むらの火」の伝承、広八幡神社、老賀八幡神社、三輪妙見社、吉宗ゆかりの出世大黒天、熊野古道を歴史的風致として挙げ、約153ヘクタールを重点区域に指定。
今後、広村堤防周辺に広場を設け、訪れた人が史跡を体感できるようにする他、濱口家住宅や古い街並みが残る地区の建物の保存・活用、祭礼などの伝統行事を生かした環境を整備。町内の散策に合わせ、AR(拡張現実)アプリを取り入れるなど、観光客を誘致し、地域の活性化へとつなげていきます。
また、「稲むらの火」や梧陵に関するシンポジウム、4年後の梧陵生誕200年祭、「世界津波の日」10周年事業なども予定しています。
津波防災の拠点「稲むらの火の館」
3Dシアターなど、多言語化対応へ
濱口梧陵記念館と津波防災教育センターの2つの施設からなる「稲むらの火の館」は、来年4月に開館10周年を迎えます。
記念館は、梧陵の功績や教訓などを紹介。教育センターは、防災の3つの知恵である応急・復旧・予防をゲーム形式で学べるコーナー、地震津波を体感できる津波シュミレーション、3Dシアターなどがあります。
「世界津波の日」の制定後、国内外から施設を訪れる人が増加。3Dシアターが、英語・中国語など6カ国語に対応。今年度末には、展示物なども多言語化されます。
問い合わせ | 稲むらの火の館 |
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営業時間 | 午前10時~午後5時(入館は4時) |
定休日 | 月・火曜(祝日の場合は開館)と年末年始 |
電話 | 0737(64)1760 |
2 東濱口公園
問い合わせ | 広川町教育委員会 |
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住所 | 広川町広1292ー2 |
営業時間 | 午前10時~午後5時(11月~2月は4時半) |
定休日 | 月・火曜(祝日は開園) |
電話 | 0737(23)7795 |
3 感恩碑
4 広村堤防
5 耐久社
6 濱口梧陵墓
7 広八幡神社
問い合わせ | 広八幡神社 |
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住所 | 広川町上中野206 |
電話 | 0737(62)2371 |
8 養源寺(出世大黒天)
問い合わせ | 養源寺 |
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住所 | 広川町広1465 |
電話 | 0737(62)3314 |
9 熊野古道
10 老賀(ろうが)八幡神社・三輪妙見社
問い合わせ | 広川町教育委員会 |
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電話 | 0737(23)7795 |
取材・写真協力:広川町教育委員会