訪問! 歴史と文化を語る 和歌山のレトロな住宅
- 2019/11/14
- フロント特集
文化財に指定されている住宅を訪ねてみませんか。建築様式や残されている調度品、家そのものの香りなどから、かつての和歌山県民の暮らしぶりや、文化を垣間見ることができます。芸術・学びの秋にぴったりな“お宅訪問”に出掛けましょう!
歴史と文化を学べる 和歌山市にある文化財の家々
11月18日は、「いい家の日」(日本記念日協会認定)。私たちの住宅の“形”は、時代や社会の変化とともに変わってきました。昔ながらの“いい家”を訪れることで、和歌山市の生活文化や歴史を体感してみませんか。和歌山市にある国の重要文化財、登録有形文化財として指定・登録されている住宅を紹介します。
文化庁によると、歴史、芸術、学術価値の高い建造物が「有形文化財(建造物)」。このうち重要なものが「重要文化財」、世界的に見て特に価値の高いものが「国宝」。「登録有形文化財」は、1996年に作られた新しい制度です。①国土の歴史的景観に寄与しているもの②造形の規範となっているもの③再現することが容易でないものが、登録基準とされています。
和歌山県文化遺産課御船達雄さんに、重要文化財と登録有形文化財の違いなどについて聞きました。また、それぞれの住宅の特徴などを写真とともに紹介。実際に訪ねてみると、かつての住人の暮らしぶりや職人の技が身近に感じられます。現在の暮らしと照らし合わせてみて、家や物との向き合い方を見つめ直すいい機会になるかもしれませんよ。
和歌山の歴史を伝える住宅たち
保存が重視される重要文化財 社会で活用される登録有形文化財
文化財指定の住宅について、和歌山県教育庁生涯学習局文化遺産課主任の御船達雄さんに話を聞きました。
歴史や芸術、学術的な面で、それぞれの時代をあらわす物として、次世代に残すべき重要文化財の建造物。重要文化財に指定され、現在も住居として使用している個人所有の家は、修復しつつ昔ながらの形を維持していき、修理の際には国から補助金を受けることができます。ただし、“現状変更”に制限が設けられ、現代的な住まいへの改築など、住宅を自由に変更することができません。
御船さんは、「現在増えているのが、登録有形文化財です」と話します。建設後50年が経過した物の中で、①国土の歴史的景観に寄与しているもの②造形の規範となっているもの③再現するのが容易でないものが基準。保存を重視する重要文化財と違い、街づくりや観光などに、積極的に活用されることも期待されています。現状変更の制限が緩いのが特徴で、改修しながら、古民家カフェやレストラン、民泊施設、資料館など、さまざまな形で活用されています。
一般観覧可能な、文化財に指定・登録されている住宅を集めました。それぞれの時代や文化の特色が分かる、私たちが守っていくべき貴重な家々です。「昔の職人が材料を吟味し、手を掛けた努力や工夫が、住宅のさまざまなところに残されています。家の作りに和歌山らしさがあらわれているのは、旧中筋家住宅に見られるような二層になった屋根ですね」と御船さん。
また「昔ながらの家は、修復したり、部分部分で取り替えたりしながら、100年、200年はゆうに使えます」とも。今あるいい物を直して使い続けることで、物を大切にする心を育むとともに、持続可能な未来を目指せます。歴史に触れて現代の生活を振り返ってみましょう。
古民家について悩みや興味のある人は、「和歌山県歴史的建造物何でも相談室」(下記参照)へ。専門家に見てもらうことで、「ここにこんな価値が!」と発見があるかもしれません。
お問い合わせ先 | 和歌山県建築士会(月~金曜午前9時~午後5時) |
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電話番号 | 073(423)2562 |
メールアドレス |
郭家住宅
登録有形文化財である郭家住宅。洋館は1877(明治10)年、紀州藩の御殿医であった郭百輔さんが、医院の待合室兼薬局として建てたもの。2階の正面にベランダのある、ベランダコロニアル様式の建築で、建てた職人たちに“異人館”と呼ばれていたとか。診察室として使われていた部屋や、珍しい煎茶の茶室など、明治初期の歴史や文化を確かめられます。見学やイベントについては、郭家住宅の会のホームページへ。
公開日 | 毎月第2日曜※イベント等についてはホームページへ |
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料金 | 観覧無料 |
場所 | 和歌山市今福1-6-6 |
営業時間 | 午前10時~午後3時 |
HP | http://kakuke.site/ |
電話番号 | 090(1983)1366 |
お問合せ先 | 郭家住宅の会事務局 |
旧中筋家住宅
重要文化財指定。1852(嘉永5)年に主屋が建築された、江戸時代末期の和佐組大庄屋の屋敷。3階の望山楼、20畳敷きの大広間、土間のかまどなどを有する主屋が特徴です。敷地面積約2200㎡、紀の川流域随一の大規模民家で、屋敷の東側と南側には堀のような水路が巡り、東側は熊野古道に面しています。
11月16日(土)、17日(日)「2019年度 関西文化の日 無料公開」
11月17日(日)午後2時~2時半 「古民家で昔ばなしを聞く会」
公開日 | 3月~11月の土・日曜、祝日。5人以上の団体は、1カ月前までの申請により通年受け付け |
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料金 | 一般100円、高校生以下無料 |
場所 | 和歌山市禰宜148 |
営業時間 | 午前9時~午後4時 |
HP | http://wakayamacity-bunkazai.jp/nakasujike/ |
電話番号 | 073(465)3040 |
お問合せ先 | 旧中筋家住宅 |
旧谷山家住宅
重要文化財指定。海南市塩津の浜にあった漁師の家が移築されたもの。1749(寛延2)年、漁業と海運を営む谷山家のために建てられました。正面は海に面しているので、2階の窓は小さく、漆喰(しっくい)を塗った建具など、風雨対策がなされた、地域性が感じられる建物です。
旧柳川家住宅
重要文化財指定。海南市黒江の入り江の奥に建てられていた町屋が移築されたもの。1807(文化4)年建築。柳川家は漆製品の製造と販売業を営んでいたといいます。家の作りは町屋として典型的な間取りで、良質な材料が使われ、優れたデザイン性を持つ住宅です。
公開日 |
和歌山県立紀伊風土記の丘で公開 |
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料金 | 観覧無料(資料館は有料) |
場所 | 和歌山市岩橋1411 |
営業時間 | 午前9時~午後4時半 |
休日 | 月曜日 |
HP | https://www.kiifudoki.wakayama-c.ed.jp/ |
電話番号 | 073(471)6123 |
お問合せ先 | 和歌山県立紀伊風土記の丘 |