親子で話そう、考えよう
「子宮頸がん予防」9価ワクチンが今年4月から公費に
- 2023/5/25
- フロント特集
子宮頸がん予防を期待できる9価HPVワクチンが今年4月から定期接種の対象となり、公費で受けられるようになりました。接種対象は小学校6年生から高校1年相当の女子です。これを機に、女性特有のがん予防について親子で一緒に考えてみませんか。
子宮頸がんの原因となる
9種類のHPV感染を防ぐ
「HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンです」と話すのは、こばやし小児科(和歌山市畑屋敷端ノ丁)の小林昌和院長です。「HPVにはいくつかの型がありますが、今年4月から定期接種に加わった9価ワクチンは、9種類のHPV感染の予防効果を期待できます」と説明します。
接種対象は小学校6年生から高校1年相当の女子です。「子宮頸部のHPV感染のほとんどは性交渉が原因とされます。性的接触の経験があれば誰でも感染する可能性がありますが、感染しても多くの場合は自然に消えます」と小林院長。
しかし、数年から十数年かけて子宮頸がんに進行するケースも。「子宮頸がんは若い年齢層で発症する割合が比較的高いがんです」。厚生労働省によると、25~40歳の女性のがん死亡の第2位は子宮頸がんによるもの。30歳代までにがんの治療で子宮を失い、妊娠できなくなってしまう人も年間で約1000人います。
「性の低年齢化が進む昨今、ワクチンの接種を機に、女性特有の病気や性の大切さについて、親子で話し合い、考える時間を持てたらいいですね」と、小林院長はアドバイスします。
教えて!小林院長
9価ワクチンQ&A
Q1
2価、4価、9価ワクチンの違いは?
どれもHPVの感染を防ぐワクチンで、全て公費で受けられます。2価と4価は子宮頸がんなどの原因となるHPVを2種類予防し、その予防効果は50~70%となっています。9価は低リスク型HPVを含めて9種類を予防、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐことが期待できます。
Q2
どこでワクチンを接種できるの?
小児科や婦人科など各市町村が接種を承諾する医療機関で行っています。かかりつけの小児科で今までも受けていた定期接種の流れでHPVワクチンを打つのもいいですし、これを機に婦人科デビューをしてもいいですね。
Q3
接種時や接種後の注意は?
接種に緊張し過ぎると、血管迷走神経反射という反応が起こり、立ちくらみがしたり、時に気を失うことも。医師からワクチンの説明をしっかり受ければ、不安が少なくなるのでは。接種後は院内で30分ほど安静にします。気になる症状が出たらすぐに医師に相談してください。
ワクチン接種と検診のダブルで予防
予診票と母子健康手帳を持参
指定の医療機関で接種を
HPVワクチンの接種は予防接種法に基づき、各市町村が実施しています。和歌山市保健対策課感染予防対策グループの保健師・野際裕美さんに、対象年齢別による接種の受け方を聞きました。
「和歌山市は公費で接種できる対象者に、予診票がとじられた冊子を配布しています。予診票と母子健康手帳、または接種済証を持参し、冊子に記載された医療機関を予約して訪れてください」と野際さん。「予診票は対象年齢によって配布状況が異なります。現中学校1年から高校1年相当の女子には昨年度に予診票が配布されていて、9価ワクチンにも使用できます」。国は中学校1年を標準的な接種期間としているため、現小学校6年には来年2月に個別で配布を予定。「市町村により予診票の配布内容が異なるので、お住まいの市町村に問い合わせを」
HPVワクチン予診票の配布内容
(和歌山市)
●現小学校6年
予診票の種類 | オレンジ色の予診票 |
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配布状況 | 2024年2月ごろ個別通知予定 |
●現中学校1年〜高校1年相当
予診票の種類 | オレンジ色の予診票 |
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配布状況 | 2022年度に小中学校を通じて予診票を配布済み |
●現高校2年相当
(2006年4月2日〜2007年4月1日生まれ)
予診票の種類 | キャッチアップ接種(ピンク色の予診票) |
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配布状況 | 2022年度にオレンジ色の予診票が配布済みですが、今年度からキャッチアップ接種対象になるため、医療機関に置いているピンク色の予診票を使用して接種 |
●キャッチアップ対象者
(1997年4月2日〜2006年4月1日生まれ)
予診票の種類 | キャッチアップ接種 (ピンク色の予診票) |
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配布状況 | 2022年8月ごろに送付された予診票を使用して接種。 紛失したり、転入した場合は医療機関に置いている予診票を使用 |
キャッチアップ対象者は
25年3月まで公費で接種可能
「1997年4月2日から2007年4月1日までに生まれた女性も、『キャッチアップ接種』としてHPVワクチンを公費で受けられます」と野際さんは呼びかけます。HPVワクチンは2013年に定期接種が始まりましたが、副反応疑い症例などの報道による影響から、積極的な接種勧奨が差し控えられました。
しかし、専門家の会議でHPVワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認。接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められ、2022年4月から再開しました。「キャッチアップ接種は、差し控え期間に接種機会を逃してしまった方たちに対する措置で、2025年3月まで公費で接種を実施しています」と、野際さん。また、2022年3月31日までに自費で接種を受けた人への助成も行っています。詳細は下記の相談窓口まで問い合わせを。
9価HPVワクチンの一般的な接種スケジュール
1回目の接種を15歳になるまでに受けるケース
1回目の接種を15歳になってから受けるケース
1年以内に規定回数の接種を終えることが望ましいとされます
※1 1回目と2回目の接種は少なくとも5カ月以上空ける。5カ月未満の場合は3回目の接種が必要
※2・3 2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の2カ月後と6カ月後にできない場合、2回目は1回目から1カ月以上(※2)、3回目は2回目から3カ月以上(※3)空ける
HPVワクチンに関する相談窓口
HPVワクチンに関する問い合わせや接種後の体調不良などに関する相談を受け付けています
和歌山市保健所保健対策課 | 073(488)5118 |
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岩出市子ども家庭課母子保健係 | 0736(67)6081 |
海南市くらし部健康課 | 073(483)8441 |
子宮頸がんの2次予防に
定期的に受けたいがん検診
「20歳を迎えたら、2年に1回は子宮頸がん検診を受けましょう」と話すのは、和歌山市地域保健課健康づくり班の保健師・大岡沙也佳さんです。
日本では年間約1万1000人の女性が子宮頸がんと診断され、約2900人が亡くなっています。罹患(りかん)率は20代後半から急激に上がり、若い世代に多いがんです(下表参照)。しかし2019年国民生活基礎調査によると、子宮頸がん検診の受診率は43・7%、年齢別でみると20~24歳は15・1%と低い結果になっています。
さらに、都道府県別の子宮頸がん検診の受診率を見ると、和歌山県は38・5%とワースト4位(2019年国民生活基礎調査)。子宮がんの75歳未満年齢調整死亡率は全国ワースト5位となっています(2020年国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)。
「がんは自覚症状が現れるころになると、進行スピードが速くなります。自覚症状がないときこそ、検診を受けるタイミングです」と、大岡さんは訴えます。「がんを早期発見、早期治療するためにも、各市町村で行っているがん検診を定期的に受診しましょう」と、最後に話していました。
子宮頸がん検診(個別)
●和歌山市
対象年齢 | 20歳以上の偶数年齢の女性 |
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検診内容 | 問診、視診、頸部細胞診 |
自己負担金 | 【69歳以下】 2000円 【70歳以上】 1000円 |
●岩出市
対象年齢 | 20歳以上の偶数年齢の女性 |
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検診内容 | 問診、視診、頸部細胞診、内診 |
自己負担金 | なし |
●海南市
対象年齢 | 20歳以上の女性 |
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検診内容 | 問診、視診、頸部細胞診 |
自己負担金 | なし |
子宮頸がん検診の問い合わせ窓口
和歌山市保健所 地域保健課 | 073(488)5121 |
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岩出市生活福祉部保険介護課健康推進係 | 0736(62)2141 |
海南市くらし部健康課 | 073(483)8441 |