被害をもたらす
豪雨に備えよう
- 2023/8/31
- フロント特集
9月は防災月間です。昨今、目立つ豪雨による被害。和歌山でも記録的な大雨が被害をもたらしました。そのときに発生した「線状降水帯」。この言葉を聞く機会が多くなりましたが、一体何!? 線状降水帯について知り、今後、どのように備えるのかを考えましょう。
危険が迫る合図、“線状降水帯”
気象情報に注意して備える
今年は梅雨から夏にかけ、日本各地で大雨による被害が報告されています。和歌山県でも、今年6月2日、これまでにない記録的な大雨が降り、河川の氾濫や浸水などが起こりました。
和歌山県だけでなく、日本の各地に大雨がもたらされたときに、発生していたのが“線状降水帯”。今年に入って、何度も聞かれた言葉ですが、一体どんな気象状況なのでしょうか。
和歌山地方気象台の土砂災害気象官・林正典さん(写真下)に解説してもらいながら、今後、どのように備えればいいのかを考えます。
「線状降水帯については、今まさしく研究が進んでいるところで、その発生メカニズムは未解明な点が多く、実は予測が非常に難しい気象現象です。そんな中、気象庁は2021年6月から、この“線状降水帯”という言葉を使って防災気象情報を発表しています」と、林さんは説明します。まずは、このキーワードについて知りましょう。
1.線状降水帯ってなに?
夏の雲に代表される積乱雲(雨雲)は、激しい雨や雷、突風、ひょう、竜巻といった大荒れの天気をもたらす雲です。この積乱雲が、次々と発生して連なりながら、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過、または停滞することで作り出される降水帯のこと。上空の風の影響で積乱雲が線状に並び、その下には線状の強い降水域ができることから、“線状降水帯”と呼ばれます。
2.気象庁・気象台の発表に注意!
気象庁は2021年から、「顕著な大雨に関する気象情報」で“線状降水帯”というキーワードを使って注意を呼びかけています。この気象情報は、すでに大雨による災害発生の危険度が高まっている地域で、線状の降水帯によって同じ場所で“激しい雨”や“非常に激しい雨”が降り続き、大雨による災害発生の危険度が急激に高まるときに発表されます。
気象庁による「キキクル」(※)で、自分が居る場所の危険度を確認しましょう。
キキクル | https://www.jma.go.jp/bosai/risk/ |
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3.今年6月和歌山の豪雨、そのときの気象状況は?
今年6月1日から3日にかけ、梅雨前線が西日本に停滞、前線に向かって台風第2号周辺の暖かく湿った空気が流れ込んだため、大気の状態が非常に不安定となり、近畿地方と四国地方の太平洋側を中心に、記録的な大雨となりました。
6月2日には、正午ごろから午後2時20分に和歌山県北部に線状降水帯による激しい雨が長時間続き、その日の1時間降水量の最も高い数値が湯浅町で83.5mm、有田川町で70.0mmと、過去最大を記録。和歌山市の友ヶ島では、6月の1位を更新する降水量が観測されました。
※気象庁アメダス観測値による
気象・避難情報を確認して行動を
“線状降水帯”のキーワードはどのタイミングで?
気象庁・気象台は、線状降水帯による大雨の可能性が高いことが予想された場合、広域で半日前から呼びかけます。
▼6月2日に和歌山県で発表された気象情報
6月2日06時30分 和歌山地方気象台発表
近畿地方では、2日午前中から夜にかけて線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があります。また、和歌山県では、3日明け方にかけて土砂災害、河川の増水や氾濫に、2日昼過ぎから夜遅くにかけて低い土地の浸水に警戒してください。…<以下略>
▶▶▶大雨災害への心構えを。その他の大雨情報や地域の避難情報をよく聞いて、事前にできる行動をしましょう
その後、大雨による災害発生の危険度が急激に高まる中、線状降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で降り続けている状態が、30分先までに予想される場合は、「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されます。
6月2日12時01分 和歌山地方気象台発表
和歌山県北部では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いています。命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっています。
▶▶▶少しでも危険を感じた場合は、自らの判断で安全な場所へ移動する判断をしてください
今後、気象庁により情報発信の改善が進められ、来年には、県単位で半日前から予測される予定。
秋にも気を付けたい大雨被害
8月にも大きな台風が近畿地方を縦断しましたが、和歌山県は台風の上陸数が全国で3番目に多い県です。これから秋にかけては台風が多く発生します。「線状降水帯」というキーワードが使われなくても、台風が近づいて来るような天候には、十分注意してください。
台風は南から北上します。和歌山県から見て、台風が南側にあって、前線が北側にあるときは、線状降水帯が発生する可能性があります。6月2日も、南から台風第2号が近づき、北側に梅雨前線が停滞していました。
これからの季節には秋雨前線が発生します。気象庁や気象台の気象情報、また、地域の避難情報などに敏感になって、安全に過ごせるようにしてください。
和歌山市などの
紀北を中心に大きな被害
今年6月2日、梅雨前線と台風第2号によってもたらされた大雨は、和歌山県にも大きな爪痕を残しました。
和歌山県がまとめた被害状況によると(6月9日現在)、人的被害は災害関連死を含む死者2人、行方不明者1人、負傷者5人。住家被害では、紀美野町で全壊2棟・半壊25棟のほか、九度山町では全壊が3棟、有田川町では半壊が1棟。さらに床上・床下浸水の被害は、県内18市町で2763棟にも及びました(下記表参照)。
また、2日は冠水により通行できなくなった道路が県内各地で見られたほか、山間部では地すべりなどによる被害で、現在も通行止めになっている道路があります。
身の回りにどんな危険があるか
ハザードマップで確認を
「こうした災害に備えて、自宅や職場など、自分自身や家族が居る身近な場所で、どんな災害が想定されているのか、前もってハザードマップで確認しておくことが大切です」と話すのは、和歌山県防災企画課の技師・辻裕真さん。
和歌山県は、災害時に役立つスマートフォンのアプリ「和歌山県防災ナビ」を配信。アプリでは、地震による「津波浸水想定」だけでなく、「洪水浸水想定」や「土砂災害警戒区域」などのハザードマップが表示されます。災害が起こったときには、リアルタイムで河川水位情報や土砂災害危険度情報を知らせる和歌山県のホームページとも連動し、自分が居る場所に、どんな危険が迫るのかを知ることもできます。
また、気象情報・注意報や、避難情報などの防災に関する情報が発表されると、アプリから自動的にスマホに通知が届きます(プッシュ通知)。
「近くの避難先も表示され、例えば『津波』や『風水害』など災害別の安全レベルも確認できます。避難所の開設状況も分かるので、災害時に活用できます」と辻さん。
「線状降水帯や台風のように、災害の危険度が急激に高まることが予想されるときには、市町村が発表する避難情報に従ってください(図参照)。警戒レベル5になると、すでに安全な避難ができない状況です。周囲をよく確認して、避難することがかえって危険な場合は、いま居る場所で身の安全を確保してください。土砂災害や洪水・浸水のおそれが高まっているときは、がけから離れた部屋や2階などに移動し、安全確保を」と、辻さんは呼びかけます。
いつ、どんな行動を取るのか、日頃から心がけておきましょう。
近くの避難先が表示(避難所が開設されているときには、オレンジのマークがつきます)。避難先のマークをタッチすると、災害別の安全レベルが分かります
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災害に備えた
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073(441)2264和歌山県防災企画課 |
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