紀の国わかやま文化祭 未来へつなぐ人 vol.04
産地だからこそ、伝わる澄んだ音色
紀州備長炭でできた楽器「炭琴」(たんきん)
- 2021/8/5
- コーナー
- 紀の国わかやま文化祭未来へつなぐ人
古くから炭焼きの地として知られ、「紀州備長炭」発祥の地でもある田辺市秋津川。ウバメガシでできた炭は、硬く、光沢があり、ぶつかり合うと「キーン」と金属音のような澄んだ音色を響かせます。1987年、紀州備長炭の普及に尽力した木下伊吉さん(19~99)が、その特性を生かし、楽器「炭琴」を発案。その後、地元の主婦が中心となり、公民館活動として94年に「秋津川炭琴サークル」を結成しました。
「夜、炭焼きをしていると、近くからいい音が聞こえてきて、思わず声をかけました」と微笑むのは、4年前に名古屋から家族で移住してきた炭焼き職人・堀部剛史さん(写真)で、12人のメンバーの中で唯一の男性奏者。「自分が焼いた炭も使われています。でも、約3㌧の木からできる炭は約300㌔、その中から炭琴になるのは10本あるかないか。ゼロのときも珍しくありません」と話します。
炭琴作りは、澄んだ音の炭を一本ずつたたいて選ぶ作業から始まります。窯から出したときが一番美しい音といわれ、湿気を吸うにつれて響きが鈍くなります。そのため、保管に気を配り、1カ月ごとに、炭の入れ替えや調律が必要。「備長炭はとても硬いので、ナタで一片ずつ削って微調整を繰り返します。楽器として使えるのは長くても半年ほど」と伝えます。
産地だからこそ存続できる炭琴。同サークルのレパートリーは約100曲とも。国文祭ではマリンバとの共演。炭琴の透明感のある響きと、マリンバのやわらかな音色が会場を包みます。
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