第6回 熊野本宮祭〜神が宿る稚児〜
- 2018/3/29
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創建2050年となる熊野本宮大社
〝神の隠れすまう地〞といわれる熊野。毎年3月半ばになると、熊野本宮大社の研修施設「瑞鳳殿(ずいほうでん)」の一室に明かりがともります。

「小さいころから見てきた祭りなので、参加できてうれしいです」と、巫女舞の練習に励む杉垣遥さん(右)
4月13日〜15日にかけて行われる「熊野本宮大社例大祭」を前に、地元の子どもたちが集まり、大和舞と巫女(みこ)舞を練習。神官や巫女から、手の動きや足の運び方を教えてもらいながら、お囃子(はやし)や唄に合わせて何度も動きを確認し合っています。

約70個の菊の造花「挑花(ちょうばな)」4本が奉納されます
初日の13日は、熊野十二柱の神々を迎える準備をする「湯登(ゆのぼり)神事」が行われます。早朝、神官や総代、12人の稚児などが行列をつくり本社を出発。温泉で身を清めてから、湯の峰王子社で神事が行われます。その後、ウマ役の父親が稚児を肩車し、約3㌔の険しい山道を一歩一歩、旧社地・大斎原(おおゆのはら)を目指して歩きます。

稚児の頭に神を降ろす神事が行われます
祭りのとき、神の乗り物として、みこしや山車(だし)が知られていますが、ここでは稚児。禰宜(ねぎ)の藤井典弘さんは「昔の形式が残った神事。稚児の額には赤で神が降臨しているという証〝大〞の文字が書かれます。お旅所で稚児は小さな太鼓〝鞨鼓(かっこ)〞をたたきながら、体を左右に回転させる〝八撥(やさばき)〞を行います。これは稚児に神が憑依(ひょうい)した様子ともいわれています」と説明。続けて「大祭の3日間、稚児は神事のとき以外、地面に降ろしてはいけないという決まりがあり、移動時は父親が肩車をします」と話します。

華やかな大行列が本社から大斎原に向けて出発
14日は摂社・末社の例祭、そして15日に本殿祭を迎えます。朝から1年間の感謝と国家安泰を祈った後、何百人もの参拝者たちが順番に玉ぐしを奉納。本殿前は玉ぐしでいっぱいになります。藤井さんは「玉ぐしのサカキの実は昔、紫の染料として使用。御幣(ごへい)は絹の反物を表します。つまり、玉ぐし奉納は、神さまに反物を供えることを意味します」と笑顔を見せます。
昼からは最大のみどころでもある「渡御祭」。産霊の神「熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)」を乗せたみこしとともに、神職や巫女、修験者、稚児などの大行列が本社から大斎原までゆっくりと練り歩きます。大斎原では、田んぼに見立てた一画を田植え子役の子どもたちが巡り五穀豊穣を祈る「御田植神事」や、練習を重ねた子どもたちの大和舞と巫女舞の奉納、護摩たきなどが行われます。
今年創建2050年を迎えた熊野本宮大社。藤井さんは「12月までさまざまな記念行事を行います。ぜひお越しください」と話しています。
次回、4月予定(続く)。
【祭り情報】
場所 | 熊野本宮大社(田辺市本宮町) |
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4月13日(金) | 13:00 湯登神事 17:30 宮渡神事 |
4月14日(土) | 10:00 船玉大祭 |
4月15日(日) | 9:00 本殿祭 13:00 渡御祭 |
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