知っておきたいイマドキの“住宅キーワード”。今回は「パッシブデザイン」について。ドイツの快適性能住宅「パッシブハウス」の要素を和歌山の風土に合わせた長寿命、高価値の住宅を提案する「和秋建設」(和歌山市寄合町)の代表取締役で一級建築士・一級建築施工管理技士の前田純さんに解説してもらいます。
「まずは、『パッシブハウス』と『パッシブデザイン』の違いから説明しますね。住宅会社ですら混同して使っているケースが見受けられるので」と前田さん。「パッシブハウス」とは、ドイツパッシブハウス研究所が規定する性能認定基準を満たす省エネルギー住宅で、日本では数棟しか建設されていません。一方、「パッシブデザイン」には明確な基準はありませんが、「可能な限り機械設備に頼らず“自然室温”で暮らすために、気密性能、断熱性能を高めた家」と、前田さんは考えます。
「土地の日照条件に合わせた家の向き」「夏の暑い日差しは遮り、冬は取り入れる深い軒」「風を通す間取り・窓の配置」「太陽の熱を集めて有効に利用」など、設計の工夫と施工力で、夏は涼しく、冬は暖かいつくりを実現しています。「最高気温が35度以上の猛暑日が続くと、さすがに“エアコンなし”とはいきませんが…。パッシブデザインは、日常生活の中で季節の移ろいを楽しむ、昔ながらの日本人の暮らしを理想とする人に向いています」とのこと。でも、明確な基準がないため、広義にとらえた“パッシブデザイン風”の住宅も少なくありません。
前田さんは「パッシブデザイン」の一つの指標として、UA値(外皮平均熱貫流率)を挙げます。UA値とは住宅の断熱性能を図る一つの指針で、「建築物省エネ法では、和歌山市内であれば一般住宅で0.87、ZEHで0.6で『断熱等性能』は最高レベルの等級4ですが、『パッシブデザイン』を名乗るには、0.5を目標にしたいところ」と説明。「当然、住宅性能を上げるために費用はかかりますが、快適に長く住み続けられ、電気代も抑えられます。また昨今、注意喚起されている“ヒートショック”から身を守ることもできます」と。
マイホームは「パッシブデザイン」で…、と考え中の人は、UA値の目標を尋ねてみることをおすすめします。
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