知っていますか?節薬バッグ
- 2016/3/17
- フロント特集
皆さんは、医師から処方された薬を決められた通り飲んでいますか?厚生労働省によると、飲み忘れや飲み残しなどによる潜在的な「残薬」は、年間500億円分にのぼるとされ、今問題視されています。全国各地で対策が進められる中、和歌山県薬剤師会では、薬のムダを省く“節薬バッグ運動”を実施しています。
家に残っている〝残薬〞
薬剤師が整理をして薬代を削減
〝節約〞ならぬ〝節薬バッグ運動〞とは、服用せずに残っている処方薬を薬局に持参してもらい、薬剤師が残薬の量や使用期限を確認した上で医師に連絡し、処方数量を調整する取り組みのこと。結果的に薬代の負担が減り、医療費抑制にもつながります。
和歌山県薬剤師会の稲葉眞也会長は、「県薬剤師会では、平成26年度から残薬回収事業を行っています。26年度は約2カ月間の実施でしたが、100万円ほどの薬価削減になりました。今年度は集計中です」と説明します。
節薬バッグ(残薬回収袋=写真)は、残薬回収を推奨している県下59の保険薬局で配布していますが、袋に入れなくても、保険薬局に残薬を持ち込めば整理をしてくれます(一部有料)。使える薬は再利用、期限切れのものは本人の了承を得て破棄され、自分の薬が他人に譲渡されることはありません。「調剤してもらった薬局に持って行くのが望ましいですね。薬歴があり、処方医とのやりとりが円滑に進みます」と稲葉会長。
残薬がもったいないからといって、処方薬を他人に譲ったり、自己判断で再利用するのは危険。薬局に相談を!お薬手帳も忘れずに!!
正しく飲んでこそ薬
飲み残さない服薬指導
残薬が引き起こす悪循環
症状悪化、副作用の原因にも
上記で紹介した〝残薬問題〞の裏側には、国家予算を圧迫し続けている医療費のことだけでなく、他にもさまざまな問題が潜んでいます。
「処方された薬が残るということは、適切に服用されていないため、治療効果が落ち、症状が悪化するということも考えられます。それにより新たな治療が始まり、さらに服薬が増え、飲み合わせが悪いと副作用が出る可能性もあります」と、稲葉会長は指摘します。
では、なぜ薬を残してしまうのでしょうか。①症状が治って意図的に服薬をやめる②苦くて飲みづらい③飲み忘れ④服用指示は1日3回食後だけど2食しか食べない⑤薬の種類が多くて管理できない、といったことが主な要因。「高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病で継続的に服用している高齢者は、薬が残りがち。飲み残す理由を解明して、服薬指導をするのも私たちの仕事です。数種類の薬を服用している人には1回分を1つの袋にまとめたり、同じ薬効の多剤・重複投与を防いだり、医師の指示通りに服薬ができるようお手伝いします。『薬を飲んでいないことを医師に知られるのは…』と口にする人も少なくありませんが、〝薬は正しく飲んでこそ薬〞」と強調します。
また、「次、風邪をひいたときのためにと、子どもの処方薬を保管しているお母さん、シロップ剤は糖分が含まれているので開封すると菌が増え、粉薬も症状に応じて調剤しているので勝手な判断で飲ませないで」とも。
節薬バッグについての問い合わせ先 | 和歌山県薬剤師会薬事情報センター |
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電話 | 073(433)0166 |
〝かかりつけ薬局〞を作ろう
保険薬局が健康サポート薬局に「残薬相談だけでなく、もっと気軽に薬局を利用してほしいんですよね」。稲葉会長はこう呼びかけます。「処方箋を持っていないと保険薬局に行ってはいけないと思われがちですが、決してそんなことはありません。日々の健康のことや体調管理、介護のことなど遠慮なくご相談ください」と。
政府は、超高齢社会を目前に、医療提供体制の再構築に乗り出し、服薬情報を一元的・継続的に管理する「かかりつけ薬局」を推奨。まちの保険薬局を「健康サポート薬局」と位置づけ、調剤に加え、地域の健康を支える拠点となるよう促しています。
日常的な診療や健康管理を行う〝かかりつけ医〞しかり、これからは〝かかりつけ薬剤師〞が服薬を管理する時代。これにより潜在的な残薬費500億円のうち400億円分は改善できると推計されています。
和歌山県薬剤師会からのお知らせ
薬剤師のニーズがますます高まる中、復職を希望する薬剤師を対象に、「薬剤師の復職支援研修」を実施します。
日時 | 3月20日(日)午前10時~午後5時 |
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場所 | 県薬剤師会おくすりセンター薬局(和歌山市本町・フォルテワジマ5階) |
参加費 | 無料 |
申し込み・問い合わせ | 和歌山県薬剤師会 |
電話 | 073(422)4748 |