近年、加齢とともに日本人男性のかかる確率が高いとされる前立腺がん。先進医療技術の発展で、今まで見つけられなかった小さながんの位置をより確実に把握できるようになりました。県内で唯一、この技術を導入している日本赤十字社和歌山医療センターの第一泌尿器科部長・伊藤哲之さんに話を聞きました。
50歳を超えたら定期的にPSA検査を
「高齢化や食生活など社会変化から、日本でも前立腺がんにかかる率が高くなっています」と話すのは、日本赤十字社和歌山医療センター第一泌尿器科部長・伊藤哲之さん(写真)。もともと欧米人に多いとされていた前立腺がんですが、2017年、日本でも前立腺がんにかかる率が、男性では胃がんや肺がんを抜いて1位、2020年も最多が予測されています(国立がん研究センター調査より)。
一般的に、がんは進行して大きくなるまで自覚症状が表れにくいとされています。前立腺がんも同様ですが、進行すると“血尿が出る”“尿道を圧迫して尿が出にくい”などの症状が出現。また、骨や骨盤内のリンパ節に移転しやすいという特徴もあります。伊藤さんは、「(前立腺がんは)がんの中でも比較的ゆっくり進行することが多く、適切な治療を行うことで、根治や長期生存が期待できます。早期発見のためにも50歳を超えたら、がん検診や人間ドッグなどで、定期的にPSA(前立腺特異抗原)検査を受けることをおすすめします」とアドバイスします。
「PSA検査」とは、血液を採取し、血液中のPSA値を調べる検査で、前立腺がんを早期に発見するのに有用とされています。PSA検査で高い値が出た場合、「直腸診」(肛門から指を入れて直腸の壁越しに前立腺に肥大や硬い部分があるかどうかを触診する)や超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査を実施。がんが疑われるときは、前立腺全体から均等に6~24カ所の細胞を採取する「針生検」で診断が行われます。
通常、針生検はエコーの画像だけで行うため、がんを疑う位置を特定するのが難しく、がんの疑いがあるのに生検した組織からはがんが見つからないことも。その場合、検査後は定期的に通院する経過観察となります。
同病院が昨年秋に導入した先進医療の技術は、針生検時、事前に撮影した診断能力の高いMRI画像とリアルタイムで画像を表すエコーを融合させることで、がんの位置をより正確に把握、その部分の組織を採取できるというもの。1泊2日の入院が必要で、検査費用も約11万円と安価とは言えませんが、すでに10例以上の検査が実施されています。伊藤さんは、「従来の針生検に比べて、より小さながんも見つけることができます。また、針生検の回数が少なくて済むので、患者さんの負担も軽減されます」と話しています。
経過観察など、気になっている人は一度相談してみては。
先進医療
厚生労働省が有効性や安全性の観点から、医療技術ごとに定めた基準を満たした医療機関で行われる最新の医療技術のことで、81種類(3月1日現在)認められています。先進医療にかかる費用は健康保険が適用されず、全額自己負担。診察や投薬などは健康保険が適用されます。
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