野山にいるマダニを通じて人に感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が、増加傾向にあります。春から秋はマダニが活動する時期なので注意が必要。今号が媒介する感染症について取り上げます。
腕や足など肌の露出を少なくして予防
和歌山県内で多く見られるのが「日本紅斑(こうはん)熱」、近年確認されているのが「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」。和歌山県立医科大学臨床感染制御学講座・小泉祐介教授(写真)は、「日本紅斑熱は細菌の一種・リチッケアによるもので、県内では2007年から感染者数が2桁台で推移。人口100万人あたりの発生率が全国1位という結果も出ています。一方、SFTSはウイルスによるもの。県内・国内ともに増加傾向にあります。イヌやネコなどペットを通じた感染ルートも散見されつつあり、注意が必要です」と伝えます。
症状としては、日本紅斑熱はダニによる刺し口が分かることも多く、1週間の潜伏期間後、発熱や発疹などが出現。抗菌薬治療で比較的速やかに改善が見られます。SFTSは潜伏期間が1~2週間程で、発熱やおう吐、下痢、筋肉痛などが現れます。重症化すると、出血や多臓器不全などが起こり、最悪の場合、死に至ることも。小泉教授は、「SFTSには、特効薬がありません。そのため、重症度に応じて治療・投薬が変わってきます」と話します。
SFTSに関しては、2013年に国内で初めて感染者が確認されて以降、増加傾向。小泉教授は、増加要因は明らかではないとした上で、「シカやイノシシなどマダニが寄生した野生動物の行動変化、マダニが生息しやすい気候など環境変化の他、病気が広く認知されて診断の機会が増えたこともあるのでは」と分析します。
ダニ関連感染症を予防するには、野山などに出掛ける際、肌(腕や足、首)の露出を少なくし、刺されないことが大事です。帰宅後はお風呂で付着していないか手足を確認。発見したときは、無理に取ろうとするとマダニの口部分が皮膚の中に残ることがあるので、慣れていない人は医療機関での受診がおすすめです。虫よけスプレーはマダニ忌避剤「ディート」が入ったものを選びましょう。
小泉教授は、「マダニに刺されて全員が発症するわけではありませんが、発熱や発疹、吐き気や下痢などの症状があれば早めの受診が、早めの診断・治療につながります。また、診察の際の患者情報が重要です。“草むらに行った”“ペットを飼っている”などを伝えてもらえれば」と話しています。
認知症の人と家族の会和歌山支部
電話 | 073(432)7660 |
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