海南市の観光・文化交流拠点に
「鈴木屋敷」が復元
- 2023/3/30
- フロント特集
海南市の藤白神社内にある「鈴木屋敷」が復元され、4月1日(土)から一般公開されます。鈴木姓のルーツがここにあり、熊野詣でに行き交う人々が立ち寄った場所。平安の昔に思いをはせ、この地を訪れてみませんか。
法皇や上皇の熊野詣でを
藤白神社で出迎えた鈴木一族
さてあなたは、山本さん、田中さん、それとも中村さん? 実はこれらは、和歌山県における多い姓のランキング1位~3位なのです。なお全国では、佐藤さん、鈴木さん、高橋さんがトップ3(出典=47都道府県・名字百科/森岡浩著/丸善出版)。第2位の鈴木さんは総勢約185万人といわれ、東京都や神奈川県などの関東圏、静岡県や愛知県などの東海圏ではトップに君臨しています(出典=名字でわかるあなたのルーツ/森岡浩著/小学館)。
和歌山県ではどうかというと、鈴木さんは14位にランクイン。比較的上位ではありますが、関東圏や東海圏のように圧倒するほど多くありません。しかしながら、そのルーツとされる鈴木一族が住んでいた「鈴木屋敷」が、海南市の藤白神社敷地内にあるのです。
鈴木屋敷は1942年、122代目の当主が亡くなってから空き家になり、建物は朽ち果てていましたが、関係者の努力と活動により屋敷が復元。今年4月1日(土)から一般公開されることになりました。
なぜ、海南市に鈴木さんのルーツがあるのでしょう。鈴木姓や藤白神社の歴史に詳しい、藤白神社総代長の平岡溥己(ひろみ)さんに聞きました。
「平安末期は、とても世情不安な時代。人々は救いと安らぎを求め、熊野信仰が盛んになり、こぞって聖地を目指す『熊野詣で』がブームになりました。法皇や上皇といった高貴な方々も同様で、約1000人もの従者を連れて京から熊野に向かったといいます。熊野詣での途中、藤白神社で手厚くもてなしたのが鈴木一族だったのです」と平岡さん。
熊野の伝説によると、刈り取った稲穂を積み上げて豊作を祈る儀式があり、この儀式を執り行う熊野の豪族の一つが、神から「ホヅミ」の姓を授かったとのこと。稲穂に立てる木は、熊野の方言で「聖なる木」を意味する「ススキ」で、やがて神事を行う穂積一族が転じて「鈴木」になったといわれています。
平岡さんは、「後に熊野からこの地に移り住んだ鈴木一族は、熊野詣での一行を藤白神社で出迎え、里神楽(さとかぐら)、相撲大会、和歌会などを催して、旅の疲れを癒やしました。また、ここから熊野への案内役を務めたのも鈴木一族。藤白神社は熊野の聖域への入り口であり、熊野詣での重要拠点になっていたのです」と、当時の様子を説明します。
現代風にいえば、「熊野詣でツアーコンダクター」の役割を鈴木一族が担っていたようですね。
多くの人が支援
よみがえる鈴木屋敷
いにしえ人が休息した場所
その風情を令和の世に復元
悲運の名将・源義経。彼が牛若丸と呼ばれていたころ、「鈴木屋敷」に滞在して鈴木三郎重家・重清兄弟と遊んだと伝えられています。兄弟は義経の家臣となり、源平合戦で活躍。義経最後の戦いとなった衣川(ころもがわ)まで従いました。
「熊野信仰が全国に広まるにつれ、熊野神社の分社が3300余社建立。鈴木一族は各地に赴き、信仰普及に取り組みました。江戸末期、一般庶民が苗字(みょうじ)を許された際、熊野神社がある土地に住む彼らは、同地の宮司や長(おさ)的な存在であった鈴木氏にあやかり、また熊野への憧れから、こぞって『鈴木』を名乗りました」と、鈴木姓が全国に広まった一説を平岡さんは説明します。
江戸後期の地誌「紀伊国名所図会」には、鈴木屋敷で旅人が休憩している様子が描かれています。ところが、戦時中の1942年に鈴木家の122代目の当主が亡くなってからは空き家に。
「1956年には藤白神社に寄贈されて境内に編入、藤白神社で守っていこうとしましたが、なかなか進まず…」と平岡さん。時だけが無情に流れ、建物は崩壊寸前に。
2013年に「第7回鈴木サミット」が海南市で行われ、スズキ自動車の鈴木修会長(当時)が講演。2年後には鈴木屋敷を含む藤白神社が「藤白王子跡」として国史跡になり、復元への機運が高まります。藤白神社や海南商工会議所関係者らによって「鈴木屋敷復元の会」が発足。現在その先頭に立つのは同会議所の会頭で、復元の会3代目会長・神出勝治さん。
「総事業費1億8000万円のうち、国・県・市からの補助金を除いた7000万円ほどの自己負担金が必要なことが判明。ふるさと納税型クラウドファンディングや企業版ふるさと納税などで、約9000万円を集めることができました。ありがたいことです」と、神出さんは感謝の意を込めて話します。
また、「国史跡なので新築はできず、木が腐ってダメになっている柱には木を継ぎ足したり、室町時代のものと伝わる瓦を再利用したりして、『紀伊国名所図会』に載っていた屋敷の形がほぼ出来上がったかな」と、神出さんは復元までの歩みを振り返りました。
「決して派手な屋敷ではないですが、縁側から眺める池泉(ちせん)庭園は風情たっぷり。玄関付近には『義経弓掛松』も植えられています。全国の鈴木さん、そして鈴木さんでなくてもこの地に来て、令和のいま、平安や江戸の時代に思い巡らせてもらえれば」
神出さん、平岡さんとも、ここが海南市の新たな観光や文化交流の拠点になればと、期待を込めています。
鈴木屋敷
問い合わせ | 073(488)3805 |
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住所 | 海南市藤白448 |
営業時間 | 午前9時~午後4時半 |
定休日 | 月・火曜 |
駐車場 |
あり |
料金 |
拝観料:300円 |
「鈴木屋敷」周辺グルメ&観光スポット
魚のスズキや旬を彩る
豪華食材「鈴木さん弁当」
ふじ白庵 佶楓
問い合わせ | 073(488)1118 |
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住所 | 海南市藤白434-1 |
営業時間 | 午前11時~午後3時、5時~9時(OS) |
定休日 | 水曜 |
ホームページ | |
駐車場 |
あり |
古道歩きや散策に
持っていきたい「早なれ」
笹ふじ
問い合わせ | 073(484)3324 |
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住所 | 海南市藤白394 |
営業時間 | 午前10時~午後3時 (売り切れ次第終了) |
定休日 | 火曜 |
駐車場 |
あり |
乾物を素材にした
体にやさしいスイーツ
3時のかんぶつ屋さん(マルサン野田商店)
問い合わせ | 073(482)3424 |
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住所 | 海南市藤白189-1 |
営業時間 | 午前11時~午後6時 |
定休日 | 日・月曜 |
ホームページ | |
駐車場 |
あり |
野鳥が訪れる日本庭園は
桜の名所としても有名
長久邸(中野BC)
問い合わせ | 0120(050)609 (観光専用) |
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住所 | 海南市藤白758-45 |
営業時間 | 午前10時~午後4時 |
定休日 | 月曜(祝日の場合は翌営業日) |
ホームページ | |
駐車場 |
あり |