現在社会が抱える病の一つ「依存症」。聞いたことがあっても、まだ正しい知識や理解が十分に広まっておらず、周囲の偏見や誤解が少なくないのも実情。「ギャンブル等依存症問題啓発週間(5月14日~20日)」を前に、依存症について取り上げます。
回復には治療と周囲のサポートが大切
依存症は、ある特定の物質や行為へのコントロールが効かなくなり、やめたくてもやめられない状態に陥ることです。依存の対象は人によってさまざまですが、代表的なものとしてアルコールや薬物、ギャンブルがあります。今回取り上げるのは、公営競技、パチンコ、投資の他、宝くじなどによる「ギャンブル依存症」。和歌山県の成人人口約78万人中、過去1年以内の「ギャンブル依存症が疑われる者」の推計は約1万7200人とされています(和歌山県施策より)。
和歌山県立こころの医療センター(有田川町庄)によると、ギャンブル依存症の受診者は30代が多いものの、最近はスマートフォンのゲーム「ガチャ(くじ引き)」による受診者が10代・20代で増えてきているとも。同センターの森田佳寛院長(写真)は、「何かに依存するのは人間であれば普通のこと。でも、繰り返す、より強い刺激を求める、やめようとしてもやめられないなどの症状が出現し、家族や周囲との関係が悪くなったり、生活のリズムが崩れて体調を崩したり、お金の使い過ぎで経済的に支障が出たりしたら、依存症を疑ってください」と話します。
依存症は周囲から見ると″意思が弱いから”″性格に問題が”などと思われがちですが、実は脳の機能が原因。繰り返しの中で脳内に快楽を求める回路ができ、それが自身をコントロールできなくするとされています。依存症の背景について森田院長は、「生きづらさや孤独など、生きていく上での不安やしんどさを抱えていることがあります。つまり、不安を和らげ、嫌な気持ちを忘れるためにのめり込むのです。本人に自覚がない限り、周囲が本人を責めても問題は解決せず、逆に状況を悪化させてしまいます」と説明。そのため、早めの発見と治療が大切になります。
同センターでは、受診、回復プログラム、自助グループの3本柱で治療が進められます。医師による診察が行なわれた後、回復プログラムで自己を分析し、自助グループへ参加する一連の流れで回復を目指すという仕組みです。森田院長は、「依存症は誰でもなる可能性があり、適切な治療や周囲のサポートで回復に向かう病気です。気になることがあれば、一人で悩まず、和歌山県精神保健福祉センターや近隣の保健所に相談してください」と呼び掛けています。
※相談・問い合わせは記事下部
自助グループで思いや悩みを共有
回復途中にある依存症の人を支える場の一つが自助グループ「GA(ギャンブラーズ・アノニマス)」。現在、県内では5グループが活動。そのうちの1グループ「GA和歌山有田みかん」の例会が、毎週火曜午後3時~4時半、県立こころの医療センターで開かれています。アノニマス(匿名)なので、個人情報を伝える必要がなく、参加も自由。それぞれが思いや悩みを打ち明け、互いに共感したり、励まし合ったり、時には笑い声も響きます。
県内のGA設立に関わっている60代の男性は、42歳のときにギャンブルでビギナーズラック(大勝ち)を経験し、以来20年間、アルコールや買い物など複合型依存症を患うことに。「治療のきっかけは多額の借金による底付きでした。回復すれば、隔離されたと感じている社会とのつながりを取り戻す兆しも見えてきます。GAは私のように依存症が原因で困っている人や家族の支えとなります」と話しています。
相談・問い合わせ
和歌山県精神保健福祉センター | 073(435)5194 |
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和歌山市保健所 | 073(488)5117 |
海南保健所 | 073(482)0600 |
岩出保健所 | 0736(61)0047 |
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