昨年4月1日から、遺産分割に関する新たなルールが導入されました。遺産分割とは、法律で決められた相続人が全員参加して、相続財産の分け方を決定する手続のことをいいます。遺産分割などで相続財産の分け方が決まらない限り、遺産は相続人全員で共有している状態になります。
これまでのルールでは、遺産分割をいつまでに行わなければならない、といった期限が決められていなかったため、すぐに不都合が生じない場合は、遺産分割をしないまま長期間放置されることも少なくありませんでした。遺産分割をせずに長期間放置すると、相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態となり、遺産の管理・処分が困難になります。
また、遺産分割をする際には、法律で定められた相続分(法定相続分)などを基礎としつつ、個別の事情(例えば、生前贈与を受けたことや、療養看護といった特別の寄与をしたことなど)を考慮した具体的な相続分を算定するのが一般的です。しかし、年月がたつうちに具体的相続分に関する証拠などがなくなり、遺産分割が難しくなるといった問題があります。そこで、国は長期間放置しているケースを解消しようと、新たな仕組みを設けました。
新ルールでは、被相続人(亡くなった人)の死亡から10年を経過した後に行われる遺産分割は、原則として、具体的相続分を考慮せず、法定相続分(民法で定められている割合)、または指定相続分(被相続人が遺言で指定した割合)によって画一的に行うこととされています。
新たなルールは昨年4月1日以前に開始した相続についても適用されますが、5年間の猶予期間が設けられています。10年経過後も相続人全員が合意すれば、具体的相続分による分割が可能です。制度についての詳細は、法務省のホームページを確認ください。(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00435.html)
(和歌山県地方法務局登記部門・椎名芳広)

和歌山地方法務局登記部門 統括登記官 椎名芳広さん
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