法務局は、法務省の地方組織の一つで、不動産・会社の登記や戸籍、国籍、供託、国の利害に関する争訟を行う訟務、人権擁護など、国民の財産や身分にまつわる業務を扱う機関です。例えば、婚姻や出生、終活の手続きなどのことで、どれも生活に密接しています。今月から始まる和歌山地方法務局の連載「ほ~ほ~法律」では、身近な問題や知っておくと便利な情報を伝えます。日々の暮らしに役立ててくださいね。
最長150年間保管、通知サービスも
第1回は、「遺言書の保管制度」を取り上げます。遺言書とは、自分の財産の分配について、生前に最終的な意思を記した書類のことです。遺言書がない場合は、法定相続の割合か相続人の間で協議して相続財産を分けることになりますが、残された財産を巡り、親族間で争いが起こることも少なくありません。自分の死後、争いを起こさないためにも生前に遺言書を検討してみてはいかがでしょうか。特に、子どもがいない夫婦や離婚した相手との間に子どもがいて、再婚した人には作成をおすすめします。
遺言書は主に自筆で作成する「自筆証書遺言」と公証人役場で公証人と作成する「公正証書遺言」の2種類があります。
公正証書遺言は、法律の専門家に相談しながら作成できるので、間違いのない遺言書を作成できる反面、手数料などの費用が必要になります。
自筆証書遺言は、自分で書いて任意の場所で保管するため、簡単に作成できます。しかし、紛失や改ざん、方式の不備で法律的に無効になる可能性がある他、遺言者の死亡後は、家庭裁判所の検認手続が必要となるため、スムーズに相続手続を開始できません。
そこで紹介したいのが、法務局の自筆証書遺言書保管制度です。法務局が遺言書を預かることで、このような問題の解消や検認手続を省略することができます。保管申請の費用は3900円です。また、通知サービスがあるのも特徴の一つで、遺言者が希望すれば、死亡後、指定しておいた1人に遺言書が保管されていることが知らされます。保管期間は、遺言者の死亡後、原本50年間、画像データが150年間です。申請後、内容変更のため撤回・再申請も可能です。
一方で、本制度は、自筆できない人や本人が法務局に来れない人は利用できません。加えて、法務局は遺言内容の相談に対応していません。内容が複雑な場合は、弁護士や司法書士に相談したり、公正証書遺言を選ぶことも視野に入れましょう。保管制度については、和歌山地方法務局供託課073(422)5131に相談を。※申請は完全予約制
(和歌山地方法務局供託課・松田卓)
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