春の訪れを告げる桜餅&よもぎ餅
- 2022/2/17
- フロント特集
コロナ禍でうっ屈とした日々が続いていますが、立春が過ぎ、梅の開花便りもチラホラ。春の気配はすぐそこまで。桃の節句を前に、和菓子店には、桜餅、よもぎ餅が並び始めました。春スイーツといえば“イチゴ”に目が行きがちですが、春を表す季語でもある桜餅とよもぎ餅には“いわれ”があります。
女の子成長を願って食べるのは
いちご大福? 桜餅? よもぎ餅?
春の訪れを感じる和菓子といえばいちご大福を挙げる人が多いですが、いちご大福は1980年代生まれの新参者。よもぎ餅は、その起源となる母子草餅が中国から日本に入ってきたのは9世紀ごろ、桜餅も江戸時代には誕生しています。
そして、女の子の健やかな成長を願う桃の節句によもぎ餅が食べられるようになったのは平安時代。もともと母子の健全を祈ってハハコグサをつき入れた餅が食べられていましたが、臼で“母子”を一緒につくことが忌み嫌われるようになり、モグサ(今のよもぎ)に置き換わったそう。一方、桜餅がいつからひな祭りに食されるようになったのかは不明です。なぜなら、桜餅にはよもぎ餅と桃の節句のような言い伝えがないから。春らしいからとか、端午の節句の柏餅に結び付けられたとも…。和歌山の和菓子に精通した和歌山大学客員教授で「紀州の和菓子と文化を考える会」代表の鈴木裕範さんにもう少し詳しく話を聞きました。
関心を持って“春”を味わおう!!
紀州に伝わる節句の行事食
緑・黄・白の菱餅が存在
「そうなんですよね。桜餅は春の和菓子ですが、ひな祭りとは直接関係しないんですよね」と鈴木さん。読者アンケートで、ひな祭りといえば桜餅と9割近くの人が回答してくれましたが(グラフ参照)、習わしとしてはよもぎ餅が正解。「ただ、昨今は、菱餅と桜餅を供えて、それが段々といちご大福に変わりつつありますね。それはそれで時代の流れなのでいいと思いますが、ひな祭りと和菓子のうんちくをお話しておきましょうか」
鈴木さんの調査・研究によると、桃の節句の行事食の中で、紀州には、他の地域にはあまり見られない特有の菓子文化があるそうで、それが菱餅だと言います。
一般的な菱餅は赤・白・緑の3色。これには中国の「陰陽五行思想」が関連していて、赤(紅)は桃の花、白は残り雪、緑はもえる草を表すなど諸説あります。「ところが、和歌山県の一部地域では、緑・黄・白の3色、赤・緑・白・黄の4色の菱餅が存在するのです」と鈴木さんは話します。
関西では、黄色の餅・まんじゅうは弔事で用いられますが、海南市下津、有田地方、日高地方には孫が生まれたときに「黄色の孫餅」を配る風習があります。「和歌山では黄色の餅・まんじゅうが必ずしも“不祝儀”ではなく、古くから祝儀に使われていたということ。黄色はクチナシの乾燥果実『山梔子(さんしし)』で色付けされ、赤ではなく黄色になった理由は、食紅が手に入らなかったという説もありますが、私は、これも陰陽五行思想から来ていると考えています。陰陽五行思想で黄色は『土』、あらゆる万物を育み、守る性質を表します」とのこと。
小梅日記に記述があるあみがさ餅
和歌山市と海南市の祝い菓子
もう一つ、あみがさ餅も、珍しいひな菓子文化。「幕末から明治にかけて書かれた川合小梅の『小梅日記』に、桃の節句によもぎのあみがさ餅を贈ったという記述があります。菱餅の緑にもよもぎが使われ、中にあんこが入ったよもぎ餅も全国的に食べられますが、あみがさ餅は私の知る限り、和歌山市・海南市にだけ伝わる行事食。今も両市の和菓子店ではこの時期になるとあみがさ餅を販売しています」と教えてくれました。
今年のひな祭りは、関心を持ってあみがさ餅を食べるも良し、桜餅を食べ比べてみるも良し。ちなみに、読者アンケートの「よもぎ餅のおいしい店」に、加太の「小嶋一商店」「先田本家」を挙げる人が多かったのですが、下記の店舗紹介は、あみがさ餅と特徴ある桜餅に焦点を当てました。
青木松風庵
100%自家製あんこにこだわり、毎日できたての和・洋菓子を販売。大阪・和歌山に27店舗・2工場あり、「みるく饅頭(まんじゅう)月化粧」や関西風いちご大福「おしゃれ」など、100種類以上展開。
問い合わせ | 青木松風庵 秋葉山店 |
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電話 | 073(448)3956 |
住所 | 和歌山市秋葉町4-25 |
営業時間 | 午前9時~午後7時 |
定休日 | 1月1日 |
ホームページ | https://www.shofuan.co.jp/ |
備考 | 駐車場あり、「あみがさ餅」「桜餅」は各店で取り扱い |
和菓子の店一寸法師
独自の「豆殺し」と呼ばれる炊き方であんこを作り続けてきた、1900年創業の「きたかわ商店」の和菓子店。四季にこだわり、味はもちろん目で楽しむ和菓子に定評があります。
問い合わせ | 和菓子の店一寸法師 |
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電話 | 073(425)0813 |
住所 | 和歌山市東紺屋町77 |
営業時間 | 午前10時~午後5時 |
定休日 | 日曜、祝日 |
ホームページ | https://issunboushi.buyshop.jp/ |
備考 | 駐車場あり |
春栄堂
もともと和菓子店で、今でも和菓子を作って販売していますが、春栄堂といえば「シューパリ」。洋菓子店と思っている人も。和菓子も洋菓子も気取らず、昔ながらの商品を手ごろな価格で売っています。
問い合わせ | 春栄堂 |
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電話 | 073(444)0571 |
住所 | 和歌山市和歌浦中1-5-13 |
営業時間 | 午前8時~午後6時 |
定休日 | 日曜 |
備考 | 駐車場あり |
紫香庵
和歌山市役所近くの和菓子店。季節菓子、伝統菓子を大切にしつつ、常識にとらわれない発想で、斬新な和と洋のコラボ菓子なども展開。関東風桜餅は今回特別に作って販売してくれます。
問い合わせ | 紫香庵 |
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電話 | 073(426)3250 |
住所 | 和歌山市七番丁11-1-103 |
営業時間 | 午前8時~午後6時 |
定休日 | 1月1日~3日 |
インスタグラム | @shikoan_wagashi |
総本家駿河屋善右衛門
560余年の歴史を誇る老舗和菓子店。和歌山で知らない人はいないといっても過言ではありません。昨年、屋号に創業者の名を入れ、伝統を守りつつ、新しい商品も生み出しています。
問い合わせ | 総本家駿河屋善右衛門 駿河町本舗 |
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電話 | 073(431)3411 |
住所 | 和歌山市駿河町12 |
営業時間 | 午前9時~午後6時 |
定休日 | 無休(臨時休業あり) |
ホームページ | https://www.souhonke-surugaya.co.jp/ |
備考 | 全店で取り扱い |
鶴屋忠彦
戦前、駿河屋で勤めていた先代が独立。茶席に用いられる上生菓子を得意としていて、お稽古から茶会までその需要が多いことから週替りで提供。粒あん、白あん、ゆずあんの「芦辺もなか」も人気。
問い合わせ | 鶴屋忠彦 |
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電話 | 073(431)0116 |
住所 | 和歌山市十番丁101 |
営業時間 | 午前8時半~午後7時(土・日曜は6時まで) |
定休日 | 火曜 |
ふく福団子(粉吉)
1889年創業、粉屋からスタートした和菓子の製造販売会社「粉吉」。「ふく福団子」、近鉄百貨店の「日方庵」で自社製品を販売。北海道産小豆など素材にこだわりつつ、リーズナブルに。
問い合わせ | ふく福団子(粉吉) |
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電話 | 073(425)5168 |
住所 | 和歌山市岡山丁31 |
営業時間 | 午前9時~午後6時半 |
定休日 | 1月1日〜7日、8月16日〜20日 |
インスタグラム | @hukufutuanzi |
備考 | 駐車場あり |