捕鯨文化が日本遺産 クジラに会いに
- 2016/8/4
- フロント特集
毎月第2週発行号で提案している〝GoodLife(上質な暮らし)〞。次号が休刊のため今週号でお届けします。今回のテーマは「趣味」。日本遺産に認定された熊野灘の捕鯨(ほげい)の歴史や文化に触れ、和歌山県内の〝クジラスポット〞を訪ねませんか。
「鯨(くじら)とともに生きる」
日本遺産と世界遺産で観光誘客へ
いよいよリオデジャネイロ五輪が開幕しますが、4年後の東京五輪に向けて〝日本の魅力〞を国内外に発信しようと文化庁が平成27年度から取り組んでいるのが「日本遺産事業」。地域の魅力や特色を通じて、日本の文化・伝統を語るストーリーを〝日本遺産〞に認定し、2020年までに100件程度にまで増やす考えです(現在37件認定)。
その日本遺産に今年4月、熊野灘沿岸地域の捕鯨文化に関するストーリー「鯨とともに生きる」が認定されたことはご存じでしょうか。同地域では、江戸時代初期に組織的な古式捕鯨が始まり、地域を支える一大産業として発展。現在も捕鯨が続けられ、クジラにまつわる祭りや伝統芸能、食文化などが息づいています。
「日本遺産は、文化財が認定されるのではなく、地域に根付いている文化や歴史に対して与えられる称号。目に見えるものではないだけに、今後、観光誘客にどう生かしていくかが課題ですが、環境整備を進め、〝世界遺産の紀伊山地〞〝日本遺産の熊野灘〞として今まで以上に熊野地域をPRしていきたい」と、「鯨とともに生きる」をストーリー化した和歌山県観光振興課の髙橋恭(ゆき)さんは話します。
巡って知ろう、クジラの今昔
クジラは富をもたらす神
捕鯨の面影を残す有形・無形の遺産
リアス式海岸が続く熊野灘は、近くを黒潮が流れ、クジラが頻繁に回遊。また、クジラをいち早く発見できる高台、捕獲したクジラを引き上げる浜といった古式捕鯨にとって重要な地理的要件を備えていました。さらにそこに住む人たちは、生きる糧(かて)を海に求めたため、造船や操船に秀でていました。当初は、浜辺に打ち上げられたクジラを食料や道具の材料に利用していましたが、生活を安定させるために捕鯨に乗り出し、熊野水軍で培われた知識と技術で、産業として確立させます。
一方、古来よりクジラは、富をもたらす神〝えびす〞としてあがめられ、信仰の対象となる特別な存在。人々は〝海からの贈り物〞であるクジラに感謝しつつ、捕鯨とともに生きてきました。同地域には、「鯨山見」や「鯨踊(おどり)」など、当時の捕鯨の面影を残す有形、無形の〝遺産〞が点在し、今も受け継がれています(下の地図参照)。
また、8月14日(日)には、古式捕鯨発祥の地とされる太地町の漁港で、古式捕鯨「網掛け式突き捕(と)り捕鯨法」を再現した「太地浦勇魚祭(いさなまつり)」が開催されます。勢子船(せこぶね)で巨大クジラ(模型)を追い込む姿は勇壮。太地勇魚会の井上正哉会長は「捕鯨文化が日本遺産に認定され、今年は一層気合いが入ります」と話しています。
A.太地浦勇魚祭
場所 | 太地漁港(東牟婁郡太地町太地) |
---|---|
電話 | 0735(59)2335(太地町産業建設課) |
営業時間 | 8月14日(日)午後5時半から |
料金 | 無料 |
7種42頭のクジラを飼育
世界有数のくじらの博物館
世界でも珍しいクジラ専門の「くじらの博物館」が太地町に存在します。
「当館は、古式捕鯨から近代捕鯨まで400年近く続く捕鯨文化の資料を残し、クジラとの付き合い方を知っていただくために昭和44年に開館しました。現在、7種42頭のクジラを飼育。これは日本の施設の中で最も多く、世界でも有数のスケールです」。副館長の桐畑哲雄さんはこう説明します。
同館には、追い込み漁で捕獲されたコビレゴンドウ、オキゴンドウ、ハナゴンドウ、バンドウイルカ、カマイルカ、マダライルカ、スジイルカが生息。「あれっ!!イルカ?」と思ったあなた、イルカは学術的に「クジラ目」。「クジラは、〝歯鯨〞と〝ひげ鯨〞に分けられ、成長しても4メートルに満たない歯鯨を〝イルカ〞と呼びます」と桐畑さん。
骨格や実物大の模型がある本館でクジラの生態や捕鯨の歴史について学んだ後は、クジラと触れ合って。えさをあげたり、タッチしたり、カヤックに乗って間近で観察したり…、かわいくて賢いクジラたちに癒やされ、大人も童心に返って遊べます。もちろん〝モデル〞を努めたハマタくんにも会えます。
さらに、同館のすぐ近くにある「くじら浜海水浴場」では、8月25日(木)までの期間、海水浴場内をくじらが遊泳(午前11時、午後1時の2回約15分間)。沖合いに出なくても、〝ホエールウオッチング〞が気軽に楽しめます。夏の思い出にぜひ!!
B.くじらに出会える海水浴場
場所 | くじら浜海水浴場(東牟婁郡太地町太地) |
---|---|
電話 | 0735(59)2335(太地町産業建設課) |
営業時間 | 午前8時~午後5時(くじらの回遊は午前11時、午後1時) |
定休日 | 無休※8月25日(木)まで、荒天時遊泳不可 |
駐車場 | あり |
料金 | 無料 |
C.太地町立くじらの博物館
場所 | 東牟婁郡太地町太地2934-2 |
---|---|
電話 | 0735(59)2400 |
営業時間 | 午前8時半~午後5時 |
定休日 | 無休 |
駐車場 | あり |
料金 | 大人1300円、小・中学生700円(各種体験別料金) |
D.くじら家
場所 | 東牟婁郡太地町常渡2902-115 |
---|---|
電話 | 0735(59)2173 |
営業時間 | 午前9時~午後4時(食事オーダーは午前10時~午後3時) |
定休日 | 木曜※8月31日(水)は臨時休業 |
駐車場 | あり |
E.レストラン漁火(いさなの宿 白鯨)
場所 | 東牟婁郡太地町太地2973-4 |
---|---|
電話 | 0735(59)2323 |
営業時間 | 鯨スタミナ丼が食べられるのはランチ営業 午前11時~午後2時(OS1時半) |
定休日 | 無休 |
駐車場 | あり |