所有者不明で動かなかった土地が流通
2017年度の国土交通省の地籍調査によると、不動産登記簿上で所有者の所在が確認できない、連絡がつかない「所有者不明土地」は全国土の約22%にのぼります。人口減少や高齢化など、今後さらに増加することが予想される中、今年4月、所有者不明の土地対策などが盛り込まれた改正案が成立しました。この改正について、和歌山県宅地建物取引業協会の広報啓発委員長・岩端芳則さんに聞きました。
「目的は、所有者不明土地の発生予防と利用円滑化。民法と不動産登記法が一部改正され、新たに『相続土地国庫帰属法』が成立しました」と岩端さん。
では、具体的に何がどうなるのか。まず、相続登記・住所変更登記が義務化されます。現状は義務ではないため、調査によると所有者不明土地の発生原因の3分の1は、未登記によるものだとか。義務化に伴い、罰則も設けられます。
次に、土地所有権の国庫帰属制度が創設されます。これにより、相続によって取得した土地を手放して、国に引き渡すことができるようになります。ただし、建物や土壌汚染がないなど一定の条件に加え、土地の性質に応じて算出される10年分の管理費用相当額を国に支払う必要があります。「宅建協会にも相続した空き家をどうにかしたい。売りたいけど、売れないといった相談がよく寄せられます。そういった方々の解決策になりそうですね」と。
さらに、放置されて荒廃した所有者不明の土地は、裁判所が管理人を選び、所有者に代わって管理や売却を行うことが可能になり、共有関係にある土地で不明共有者がいても、共有物の利用や処分ができるようになります。また、水道管やガス管などのライフラインを自分の土地に引き込む際、隣地の所有者が不明でもあっても対応しやすくなります。
施行日は、原則として公布(2021年4月28日)後2年以内の政令で定める日。「これまで所有者不明で手が付けられなかった不動産を“動かせる”ようになるので一歩前進。空き家問題の解決につながり、休眠状態だった土地が流通すれば街並みも良くなります」と岩端さんは話していました。
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