意外と知らない水事情~私たちの暮らしと水
- 2019/7/11
- フロント特集
何気なく使っている水ですが、水道水はどのようにして私たちのもとに届いているのでしょうか。また、連日暑い日が続くこれからの季節、気になる水の飲み方などについてお伝えします。
身近な水道事情や効果的な水の飲み方を知ろう
私たちの生活に欠かせない水。日本で気軽に、安全に水を飲めるのは、厳しい水質基準にもとづいて水が作られているからです。今回は、身近なところにある水道事情について紹介。和歌山市企業局を訪ね、水が作られる流れなどを聞きました。
また、昨年は台風の影響による停電で断水が発生。復旧まで時間がかかった地域もあり、水が水道から当たり前に出てくることのありがたさを実感した人が多いのでは。いつ何時起こるか分からない、災害時における水の備蓄などの心得もお伝えします。
和歌山信愛女子短期大学食物栄養専攻・主任・教授の西出充德さんには、水の飲み方や、硬水・軟水の違いなどについて聞きました。総務省消防庁の「平成30年度の熱中症による救急搬送状況」によると、昨年5~9月の熱中症による救急搬送人員数は、全国で合計9万5137人。7月が最も多く、5万4220人、次いで8月が3万410人。熱中症を予防するには、こまめな水分補給が重要です。一方、ダイエットや“デトックス”を目的に1日に大量の水を摂取する人がいますが、水は飲みすぎると危険な場合もあります。普段何気なく飲んだり使ったりしている水ですが、実は知らないことが多いのかもしれませんよ。
和歌山市の水事情&水の飲み方
蛇口をひねれば流れ出る水 その背景には長い旅が
和歌山市の水道事情について、和歌山市企業局に聞きました。
和歌山市の水道水の源は、奈良県の大台ケ原山(おおだいがはらやま)にあります。山を流れる雨水が、大滝ダム(2013年完成)に貯水され、吉野川、紀の川へと流れます。その紀の川の水が取水口から取り込まれ、浄水場へ。そこで、私たちが生活するために必要な水が作られます。和歌山市にある浄水場は、真砂浄水場、出島浄水場、加納浄水場、滝畑浄水場の4カ所。中でも最も広範囲に水の供給を行っているのが加納浄水場で、和歌山市の約69%の水を作り出しています。
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着水井
紀の川の水が最初に入ってくるところ
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沈砂池
沈砂池では水の流れを遅くして水の中にある砂を沈めて取ります
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粉末活性炭接触池
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揚水ポンプ
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沈でん池
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ろ過池
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薬品混和井
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浄水池
きれいになった水を地下のタンクにためておきます
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送水ポンプ
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配水池
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蛇口から出る水道水はさまざまな工程を経て各家庭へ
浄水場には、「中央監視室」が設けられ、機械の動きを調節したり、異常がないかを24時間監視。さらに、作られた水の安全性が、「水質試験室」で確認されます。安全で良質な水を市民に届けるため、色や濁り、残留塩素濃度を調べる検査が毎日行われている他、月に一度「水質基準項目」に基づく水質検査が市内16カ所で実施されています。また、水源である紀の川の水質検査は毎月4~12カ所で実施。水質に関しては、平均硬度が64.2mg/l(加納浄水場)。配水管の腐食を防ぐカルシウムが、浄水過程で加えられています。和歌山市内の水道管の総延長は、約1500km(2017年度末)。和歌山市から、国後島までの距離と同じくらいなのだとか。「和歌山は、大滝ダムがあるおかげで、渇水が起こることはほぼない」と、同局の村上倫章さんは話します。
利用者への注意点として、「和歌山市の企業局や委託業者を装った、悪質な業者には注意が必要です。水道利用者からの依頼を受けずに、水質検査で家を訪問することはありません。浄水器の使用をすすめたり、販売したり、水道管の洗浄をすすめたりもしません」と同局の藤原健治さん。局員や委託業者が訪問するときは、証明書などが掲示されます。不審な人物の訪問があった場合は、企業局へ問い合わせを。また、地震や台風など、大きな災害が発生したときには、断水が起こる場合もあります。私たち利用する側も、普段から備えや知識を持っておくことが大切です。
当たり前のように使っている水道水ですが、水道施設で多くの過程を経て、いつでも飲める安全な水が生み出されています。雨水を蓄える山の森林の保全問題や、生活排水による河川・海の汚染などの環境問題を身近なものとしてとらえ、今一度暮らしを見直してみませんか。
お問い合わせ | 和歌山市企業局企業総務課 |
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電話番号 | 073(435)1124 |
災害時は、道路の交通規制や施設の被災状況によって、応急給水活動の体制が整うまで時間がかかることも。また、応急給水は人命優先。透析患者や救急患者の対応のため、医療の現場が最優先になります。「自助」による飲料水の備蓄・生活用水の確保を心がけてください。
また、近隣の住民と情報交換を行いながら、助け合う「共助」が大切です。単身で暮らす高齢者など、災害時に援助が必要な人を手助けし、互いに協力し合いながら、災害から身を守りましょう。
●1日に必要な水の量
一般成人の水の必要量は、およそ2.5ℓ。食事でとれる水分は、約1.1ℓ、摂取した栄養が体の中で分解されたときに生じる水分は約0.3ℓ。これらを差し引いた1.1ℓが、飲料水として必要な水の量です(赤ちゃんや高齢者など年齢、気温や湿度、スポーツや入浴などの活動の状況によっても異なるので注意)。
年齢が上がるにつれ、皮膚の保水力が低下。また、嚥下(えんげ)に問題のある高齢者は水分を避けがちになり、水分不足に陥りやすいので、積極的に水分補給を。
●温度について
夏場の熱中症対策や、脱水症状を起こしたときなどは、胃腸に問題がなければ、冷水を飲む方が吸収効率は良いといわれています。常温の水は、体への負担が少なく、代謝を促進させます。どちらが良いのかは賛否両論あり。
●水を飲むタイミング
一度にたくさん飲むのではなく、こまめに水分補給をすることが大切です。眠っている間も体はエネルギーを使っていて、水分を消費しています。朝起きたときに、コップ1杯の水を飲むといいでしょう。食事の直前や食後すぐに水を飲むと、胃液が薄まってしまいます。また、眠る前に飲むなら、横になる30分ほど前に。
●水のとりすぎは体に良くない
短時間に大量の水をとると、体のミネラルバランスが崩れる原因になります。特にナトリウムが失われ、「低ナトリウム血症」など重大な病気につながることが。腎機能に問題がある人は、特に注意してください。
●硬水と軟水の違いは
硬度は、水に含まれるカルシウムとマグネシウムの濃度の指標です。国によって基準は違いますが、日本の基準は、硬度100mg/ℓ以下が「軟水」、硬度101~299mg/ℓが「中硬水」、硬度300mg/ℓ以上が「硬水」とされています。ヨーロッパでは、山岳地帯に蓄えられた水が、長い時間をかけてミネラルを溶出するため硬水が多いのですが、雨量が多くて山から海までの距離が近い日本は、ミネラルの少ない軟水がとれます。
硬度の高い水(=ミネラルが多い水)を飲むと、おなかを壊す場合があります。マグネシウムを多く摂取すると、下痢を起こすことが。胃腸の弱い人や体調が悪いときには注意が必要です。ミネラルウォーターを選ぶときは、硬度や殺菌方法などが書かれたラベルをチェックしてみて(ヨーロッパの水は、ミネラル成分やおいしさを保つため、殺菌処理しないことが義務づけられています)。