日本人がかかる疾患で、がんに次いで多いのが心疾患。働き盛りの30代~50代で発症することも珍しくありません。今回は、心筋梗塞と狭心症について、日本赤十字社和歌山医療センターで話を聞きました。
胸や左肩の痛みなどがあれば受診を
心臓は1日に約10万回、収縮・拡張運動を繰り返し、全身に血液を送るポンプの役割りをしています。力強く動くには、冠動脈(血管)を通じて、心筋(心臓の筋肉)に酸素と栄養を十分に送ることが必要です。心疾患とは、何らかの原因で心臓の動きや、血液の循環に異常が起こる病気のことで、「虚血性心疾患」「心不全」「心臓弁膜症」「不整脈」などがあります。
取り上げるのは、心疾患の中でも「狭心症」「心筋梗塞」。心臓の血管が詰まり、心筋に十分な血液が送れなくなる病気で、気温の変化で血圧が不安定になる季節の変わり目に起こりやすくなります。原因は、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙の他、運動不足や肥満、家族歴、ストレスなども関係するとされています。
一般的に高齢者に起こるものと思われがちですが、日本赤十字社和歌山医療センター循環器内科・田﨑淳一副部長(写真)は、「高齢の患者さんは多いですが、若い世代でも起こりうるので注意が必要です」と話します。続けて、「若いころから高血圧や糖尿病、脂質異常症といわれているのに、治療をせず放っておくと、知らず知らずのうちに症状が進行し、40代~50代の比較的若い世代で発症することがあります」と説明します。
どちらも、冠動脈の血管壁に「プラーク」が堆積し、血管が厚く、硬くなる「動脈硬化」が要因。プラークで血管内が狭まると、十分な血液が送られなくなり、胸(心臓)に締めつけられるような痛みが生じます(下記参照)。田﨑副部長は「心筋梗塞で血管が詰まり、壊死すると、心臓に後遺症が残ります。命に関わる場合があるので、胸に強い痛みを感じたときは、ためらわずに医療機関を受診することが大切です」と言います。
治療はカテーテルによる手術となります。狭まったり、詰まったりしている部分の血管に筒状の金属製ステントを内側から支えるように入れて血管を広げ、血液の巡りを回復させます。同院では、夜間・休日を問わず、カテーテル手術ができる体制や、重篤な場合、補助人工心臓などで救命する体制が整っているのが特徴。術後はリハビリや再発予防のための薬の服用が必要です。「当院は心臓のリハビリに習熟した理学療法士が、専用のプログラムを組み、早期からリハビリを行っています。退院後は、近くのクリニックで薬による継続的な治療を受けられるように紹介もしています」と伝えます。
狭心症や心筋梗塞の予防には、日頃から適度な運動やバランスの取れた食事が大切。田﨑副部長は「毎年、健康診断を受け、自分の体の状態を確認することが重要です。特に心筋梗塞になった家族がいる場合は、若くても定期的に健康診断を受けるようにしてください」と呼び掛けています。
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