守りたい! 地元の伝統産業 紀州産棕櫚(しゅろ)たわし
- 2019/10/17
- コーナー
- LIVING Selection in 和歌山
国内で生産するたわしやほうきの大半を手掛ける海南市とその周辺地域。かつては原料となるシュロの一大産地として栄えていましたが、プラスチック製品の流通などで需要が激減。高齢化による職人の減少はもとより、シュロのほとんどを海外産に頼る中、「曽祖父の代から続く工房で、もう一度、和歌山産のシュロでたわしを作りたい」という、若い職人の思いが現実に―。
「諦めかける度に助けてくれる人が現れました。さまざまな人との出会い、そして応援があったからこそ」と話すのは、1922(大正11)年から続く、中西富一工房(海南市孟子)の4代目でたわし職人の中西裕大朗さん。職人になるきっかけは、今から約3年前、祖父が2代目として守ってきた工房で廃業の話が出たことから。祖父の背中を見て育った裕大朗さんは、迷うことなく、職人の道へと進みました。
同工房では、1970年代前半まで国産シュロがメインでしたが、弟子入りしたときは全てが海外産シュロ。県内で栽培してくれる人を母親で3代目のみちるさんと探し続け、昨年4月、有田川町で以前、シュロを栽培していたという山師と出会いました。その後、たわし作りに必要な設備を整えるなどし、今年8月にようやく「復刻紀州の棕櫚たわし」として商品化。復活させました。
使い捨てプラスチックの問題などから、“シュロたわし”が再び国内外で脚光を浴び、追い風が吹いています。 周囲の人の協力や応援があり、迷ったときも3代目と前に進み続けた3年間。裕大朗さんは「簡単そうに見えていた、シュロを切りそろえたり、針金を曲げたりする作業。さじ加減がなかなか難しくて」とはにかんで見せ、「地元の伝統産業を絶たやさないよう、技術を磨き、祖父のような職人を目指したいです」と意気込んでいます。
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