季節の変わり目、秋口に多い!? ストップ!抜け毛
- 2016/9/8
- フロント特集
毎月第2週発行号は〝GoodLife(上質な暮らし)〞を提案。今回は「健康」をテーマに、女性が気になる抜け毛について。年齢に関わらず、抜け毛が多くてびっくり!という経験はありませんか。対策はあるのでしょうか?和歌山県立医科大学皮膚科の臨床准教授・吉益隆医師に聞きました。
体が疲れると髪にも影響
早ければ、20歳代からでも脱毛が
シャンプーをした後、ブラッシングをした後、ゴムで束ねていた髪をほどいてみると…。時折、抜け毛があまりに多くて、びっくりすることはありませんか?女性は髪に敏感です。どんなときに抜け毛は多くなるのでしょう。和歌山県立医科大学皮膚科で脱毛症専門外来を行っている吉益隆医師(有田市立病院皮膚科医長)に尋ねました。
「季節の変わり目に多くなる傾向にあります。気温や気候が変化すると、体に負担がかかって体調を壊しやすいですよね。抜け毛も同じで、体が無理をすると多くなるんです」。猛暑が続いた夏が終わって秋めいていきますが、こんな秋口も〝季節の変わり目〞。夏の疲れが出てくるころに、抜け毛が多くなる人がいるようです。「冬から春、春から夏、夏から秋…、どの時季に弱いかはその人の体質により異なりますが、毎年、ある時季に抜け毛が多くなるという人は、その季節に弱いタイプかもしれません」と、吉益医師は話します。
抜け毛が多くなると、心配になるのが、薄毛や脱毛症。吉益医師は「〝女性の男性型脱毛症〞といって、加齢によるものですが、早ければ20歳代でも脱毛が進んだことが気になる人はいます」とも。2面では抜け毛のケアから、女性が気になる脱毛症についても解説してもらいましょう。
体が健康であることが大切
髪の成長サイクルが崩れると
脱毛が進む
吉益医師によると、髪にはサイクルがあって、成長期・退行期・休止期を繰り返しています(毛周期、左記の図参照)。休止期に毛が抜けますが、そのまま成長期へ移行すれば、髪は〝抜けて・生える〞を繰り返します。しかし、年齢とともに毛包の細胞が衰えるなどの要因で休止期が長くなることがあります。休止期から成長期に移行しなければ、発毛せずに抜け毛・脱毛が進みます。
「女性の脱毛は、その多くは『女性型脱毛症』と『休止期脱毛症』に分類されます」と、吉益医師は解説します(下記参照)。
女性型脱毛症は、加齢とともに毛包の細胞が衰える生理現象ですが、その悩みを持つのはすべてが高齢女性だとは限りません。中には20歳代や30歳代で、女性型脱毛症に悩む人も。「髪が少なくなると感じるのは主観的な場合が多いので、年齢に関わらず、今までのご自身の髪の量と比べて急激に減ったと感じると、女性は特に心配になる人が多いようです」と話す、吉益医師。このような女性型脱毛症を予防することはできるのでしょうか。
髪や頭皮だけを意識するのではなく
心身トータルで健康を考える
「年齢による生理的な現象なので予防は難しいですが、日ごろのヘアケア習慣を見直すことで抜け毛を減らす工夫をしたり、頭皮環境をよくすることが大切です」。そう話す吉益医師は、ブラッシングやドライヤーの使い方などを指摘(下記)。頭皮の環境を健やかに保つためのポイントもまとめました。
また、急性と慢性に分類される「休止期脱毛症」の場合は、要因を探ることが第一手段。発毛を妨げる要因が分かれば、取り除くことで改善が期待されることもあります。
さらに吉益医師は、「これら一般的なものとは別に、自己免疫疾患である『円形脱毛症』の患者さんも増加傾向にあります。和医大では、免疫療法による治療を行っています(下記の図参照)。特に小児や女性では、悩みが深刻化するケースが多いですが、通院患者さんの多くは前向きに治療を続けています」
最後に、吉益医師は日ごろの過ごし方についてもアドバイス。「抜け毛や脱毛といえば、髪や頭皮だけを意識しがちですが、心身全般の健康を意識して過ごしてほしいと思います。規則正しい生活を送ること、なるべく決まった時間に起床・就寝・食事を取るなど、生活のリズムを大切にしてください。脱毛も、毛周期の乱れにより起こります。仕事や育児、介護などで忙しくされている人が多く、諸条件もありますが、睡眠時間を十分に取って、ストレスを軽減し、適度な運動習慣を身に付けるなど、心身の健康づくりをトータルに考えてほしいと思います」
女性が気になる脱毛症のこと
女性型脱毛症 髪が細く、やせてくるのが特徴
加齢により起こる“女性の男性型脱毛症”。特に閉経後に多くなりますが、中には、20歳代や30歳代などでも脱毛が進む場合があり、髪の多い人ほど、気になる傾向にあります。
髪が細くなり、髪の分け目が目立ったり、頭皮和歌山県立医科大学附属病院で、脱がよく見える薄毛につながりやすくなります。
対策 | 日ごろのケアが大切(上記)。脱毛が進むと、市販されている女性用の育毛剤(リアップレディなど)を用いるのが第一選択。男性には飲み薬がありますが、今は女性の脱毛症に適応する飲み薬はありません。 |
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休止期脱毛症 髪の太さは変わりませんが、生える密度が低くなるのが特徴
急性
例えば外科手術が必要になるなどの重大な病気やさまざまなストレス、ダイエットによる急激な体重減少など、何らかの身体に負担になる要因によるもの(一定の薬剤の使用なども)。また、出産後や経口避妊薬中止後に脱毛を生じる場合があります。
対策 | 原因となる疾患やストレスを特定し、それを排除することや治療することで、脱毛の改善が期待できます。鉄分や亜鉛が不足しているときはそれらを補ったり、ダイエットや偏食には栄養指導で改善する場合も。 |
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慢性
上記の急性休止期脱毛症を何度も繰り返すなど、原因が特定できずに休止期脱毛症が長引く場合。
対策 | 原因を特定できないことが多いので、効果的な手だてがなく、女性用育毛剤などを試してみます。 |
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円形脱毛症
女性型脱毛症や休止期脱毛症とは異なり、自己免疫疾患であり、原因も分かっていません。自らのリンパ球が毛包を異物と見なして攻撃するため、炎症が起きて髪が抜け、発毛も妨げられます。小さく単発のものは目立たず、自然に治ることも。大きいものや数が多かったり、さらに全頭型になると深刻な悩みとなります。
脱毛症専門外来から
和歌山県立医科大学附属病院で、脱がよく見える薄毛につながりやすくなります。毛症の専門外来を担当し、また、有田市立病院皮膚科では、常勤医として外来で診察にあたっている吉益隆医師。「女性にとって脱毛は、男性以上に敏感で、ナーバスな問題となる場合が多いです。もし、気になることがあれば気軽に皮膚科を受診していただければと思います。頭皮や抜け毛の様子を詳しく診察したり、血液検査をすることで、原因が分かる場合もありますし、お話を聞くことでアドバイスできることもあるかもしれません。決して後ろ向きにならずに、脱毛症と向き合えるサポートをしたいと思っています」
※和歌山県立医科大学の脱毛症専門外来は紹介状が必要です(予約制)。有田市民病院は一般受診が可能です