手術を必要とする出生直後の新生児期~15歳ぐらいの子どもの治療を行う小児外科。どのような疾患を扱っているのか、最新の治療法を含め、日本赤十字社和歌山医療センターで話を聞きました。
和歌山県内初のロボット手術も
小児外科とは、脳、心臓を除く、頭頸(とうけい)部、消化器、泌尿器など、体のあらゆる臓器の手術・治療を行う診療科のこと。主な疾患として、強い腹痛が起こる「急性虫垂炎(盲腸)」、おなかの中の臓器が飛び出して鼠(そ)経部が腫れる「鼠経ヘルニア」、精巣を包む膜の中に液体がたまる「陰のう水腫」などがあります。
「同じ病名でも、大人の治療とは違い、子どもの月・年齢や成長度合などで対応が異なります。先天性の原因があることが多いので、一人一人の体の特性を把握した上で、治療しています」と説明するのは、日本赤十字社和歌山医療センター小児外科・消化器外科の横山智至(さとし)副部長(写真)。続けて、「高度救命救急センターに指定されている当院は、小児外科学会が認定する専門医が2人在籍し、夜間や休日であっても、緊急手術ができる体制を整えています」と言います。
疾患の多くは、手術後、何も問題がなければ治療は終了します。しかし、生まれつきや生後まもなく発症する疾患の中には、生涯にわたり、定期的に診察を受けるものもあります。病気の早期発見が重要な疾患が多いことから、同院では、院内で生まれた新生児の内臓に異常がないか、小児外科医による診察も退院までに行われています。横山副部長は「多くの疾患が乳幼児・小児期に見つかりますが、無症状のために長年気づかず、成人になってから発見される疾患もあります。その際も、当院では成人の外科ではなく、小児外科で診察しています」と伝えます。
2022年4月、小児へのロボット支援下胆道拡張手術が保険適用になりました。同院は今年4月、これまで開腹で行っていた先天性胆道拡症の手術を、県内で初めて手術支援ロボットを使って実施。現在までに3例が行われています。国内で、小児のロボット手術ができる施設は限られているとした上で、横山副部長は「日頃から成人の外科でのロボット手術の経験が数多くあるからこそ、スムーズに導入することができました。何よりもロボット手術は、正確性が高まる利点があります」と話します。
同院は、できるだけ手術を日帰りで行ったり、学業への影響が少ないよう夕方に診察を行ったり、診療環境を整備。「手術の必要な子どもは可能な限り、県内で治療を受けられるようにしたいと考えています。日頃から地元の小児科と連携するとともに、移植などが必要な場合は適切な施設に紹介し、患者さんにとって最善の治療を心がけています。気になることがあれば、まずはかかりつけの小児科で相談を」と呼び掛けています。
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