大阪・関西万博から南高梅を世界へ
未来につなぐウメ~話

リビング和歌山2025年2月8日号「大阪・関西万博から南高梅を世界へ 未来につなぐウメ~話 」

 大阪市の夢洲(ゆめしま)で、今年4月13日(日)〜10月13日(祝)の半年間、開かれる日本国際博覧会(大阪・関西万博)。そのパビリオンの一つ「EARTH MART(アース・マート)」に、和歌山県産の南高梅が展示されます。機運が高まる産地で話を聞きました。

天日干しを終えた梅干しを持つ、田辺市三栖地区の梅農家(左から、岩見健生さん、那須一令さん、小芝鉄也さん)

南高梅

皮が薄く、果肉が柔らかいのが特徴

小山薫堂さんがプロデュース
梅干しが世界に共有したい食に

 大阪・関西万博のメインテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。会場中央には、8人のプロデューサーそれぞれの主導で、テーマに沿った8つのパビリオン(シグニチャーパビリオン)が設けられます。

その中の1つを手掛けるのが、放送作家・脚本家の小山薫堂さん(左上写真)。「いのちをつむぐ」を関連テーマに、栄養や環境配慮、持続性、文化など10の視点から、世界に共有したい食(25品目)をリストアップ。それらを展示するパビリオン「EARTH MART」を展開します。スーパーマーケットをイメージした館内には、餅やコンブなどの他、梅干しの製造過程のウメを塩漬けにした木だるが並ぶ予定です。

ウメの展示で脚光が当たったのが和歌山県。今から約400年前の江戸時代、田辺領下で本格的な栽培を開始。現在、ウメの収穫量は全国の60パーセント前後を占め、1965(昭和40)年から連続して1位を誇ります(2024農林水産省統計)。

小山さんからのメッセージ

オレンジ・アンド・パートナーズ 代表取締役社長 小山薫堂さん

オレンジ・アンド・パートナーズ 代表取締役社長 小山薫堂さん

万博は、世界の人々に「梅干し」という日本ならではの保存技術を知っていただく最高の機会になると信じています。梅干しがもっと世界に広まるように、地域の皆さんで共に盛り上げましょう!

隈研吾さん設計、かやぶき屋根のパビリオン「EARTH MART」

EARTH MARTの詳細

https://expo2025earthmart.jp/

国内屈指のウメの産地に脚光
紀州梅の会が地域連携で協力

原料のウメを提供するのが、田辺市やみなべ町など6市町村、地元JA、梅干組合、生産者など、産地の自治体や団体で組織する「紀州梅の会」。ウメの良さを伝えることで、消費・需要を伸ばし、地域活性化につなげようと、県内はもちろん、全国各地でイベントや講習会を開くなど活動しています。

万博出展のきっかけは2023年、小山さんが代表を務める企画運営会社「オレンジ・アンド・パートナーズ」が、同会メンバーに南高梅の提供を打診したことから。事務局で田辺市梅振興室の天田安彦さんは当時のことを振り返り、「声を掛けてもらえたのは、とてもありがたいこと。皆で話し合い、地域一帯で連携して協力することに決まりました」と話します。

収穫時期の6月ごろをめどに、南高梅約1㌧(コンテナ50杯分)が会場に運び込まれ、木だるで塩漬けにして展示。演出として、同パビリオン内で塩漬け作業のライブパフォーマンスをするといった話も上がっています。

万博閉幕後、ウメは同会が持ち帰って保管。数十年後、天日干しをして加工・完成させた梅干しを、「EARTH MART」の来場者に贈る“タイムカプセル”のような構想も進行中。天田さんは「来場した人にとっては“あのとき見たウメ”と、万博の思い出になります。子どもや孫へのプレゼントにすることもでき、夢がありますよね。また、産地での受け渡しになるので、和歌山県を訪れてもらう機会にもなります」と伝えます。

25品目の中に梅干しが選ばれた理由について同社は、「電気や技術を使わず、自然の恵みと人の知恵でつくる日本の食文化に欠かせない保存食。昨今はビーガンフードとしても海外で注目されています。展示を通じ、梅干しの活用や調理法がさらに広がればと考えています」と話します。

和歌山から世界、未来へ。天田さんは「この好機を生かし、日本一のウメの産地として、世界にウメをPRできれば」と意気込んでいます。

甘い香り漂うウメの産地へ

梅農家に話を聞く他、梅林の情報など、お出掛けスポットを紹介します。紙面片手に現地を訪れ、五感でウメを楽しんでくださいね!

手作業で一粒一粒集める南高梅
世界にウメブームを巻き起こす

那須一令さん(なすかずのり)

ウメの枝を手に、「甘い香りが漂う畑で、満開の花を眺めているときが
1年のうちで一番ほっとしますね」と話す那須さん

いち早く春の訪れを感じさせてくれるウメの花。1月下旬、田辺市の三栖地区では、つぼみが膨らみ、薄紅色の花びらが見え始めていました。

1950(昭和25)年代からウメの栽培が盛んな同地区。小梅や古城梅(ごじろうめ)といった品種を手掛けていましたが、南高梅が種苗名称登録された1965(昭和40)年ごろから、南高梅への切り替えが進み、今では栽培面積のほとんどを占めます。同地区の梅農家・那須一令さん(なすかずのり、写真)の農園も、約50年前に主力の品種を南高梅に変更。現在、山の傾斜地などを含む計約4ヘクタールの畑に、約1200本の木が植えられています。

訪れたときはちょうど枝のせん定作業の時期。那須さんは、「長く伸びた枝や混みあった部分の枝などを切り落とします。どの花芽にも太陽がよく当たるよう枝の高さ、長さを段違いに形づくるのが特徴。せん定する人によって形が異なり、花が咲いたときの木全体の姿も見どころの一つです」と説明します。

収穫は6月ごろからスタートし、7月上旬まで続きます。木から実を直接収穫する方法もありますが、南高梅を梅干し用として使う場合は基本、熟して地面に自然落下した実を拾い集めます。熟したウメの実は皮の表面に傷が付きやすいため、扱いには注意が必要。雨風関係なく、毎日、その日のうちに拾ってしまわなければなりません。

ウメがずらり並ぶ干し場は夏の風物詩

那須さんは、「朝5時から始め、昼過ぎには収穫を終えるようにしています。選別や塩漬け作業も待っているので、急ピッチで進めます。雨の日や強い日差しが照りつける日は、実が傷まないかなど心配です」と話します。

関西・大阪万博への出展の話を聞いたとき、「ぜひともその方向で」と賛成の声を上げたという那須さん。「チャンスを生かさなければ」と言います。

昨年は暖冬などで不作の年となりましたが、今年は気候の影響を受けなければ、例年並の収穫が見込まれています。「今年のウメは順調に成長しているので、いいウメになると期待できますよ」と笑顔。「伝統産業を後世につなぐためにも、世界にウメブームを巻き起こしたいです」と、未来を見据えています。

塩漬けしたたるは倉庫で保管。ウメの状態を確認する那須さん

名所で一足先に春を感じて

※開花情報により、開園期間が変更される場合があります

南部梅林

【開園期間】3月2日(日)まで 午前8時〜午後5時

南部梅林

「一目100万、香り十里」といわれる見渡す限りの梅の花。約100haのなだらかな山の斜面に南高梅など数万本が栽培されています。のんびりと散歩しながら一帯に広がる香りにいやされてください。

お問い合わせ 0739(74)3464 梅の里観梅協会
※3月上旬まで電話対応可
住所 みなべ町晩稲地内
駐車場 あり(有料)
入場料 [入場料]高校生以上500円、小・中学生200円
開花やイベントの情報はこちら https://minabebairin.com/

紀州石神田辺梅林

【開園期間】2月8日(土)~3月2日(日) 午前9時〜午後5時ごろ

紀州石神田辺梅林

 近畿屈指の標高約300mに位置。梅畑が里山や太平洋に向かってすり鉢状に広がる景色は圧巻です。昨年から新スポット「梅酒テラス」が誕生(土・日曜、祝日)。絶景を眺めながら梅酒を楽しんで!

お問い合わせ 0739(26)9931
紀州田辺観梅協会(田辺市観光振興課内)
住所 田辺市上芳養5057-2
駐車場 あり
入場料 無料
開花やイベントの情報はこちら https://www.tanabe-kanko.jp/view/sizen/kanbai/

グルメ甲子園、UME-1フェスタが開催

【開園期間】2月9日(日) 午前9時~午後3時 みなべ町保健福祉センター駐車場で

みなべ町などが主催する「UME―1フェスタin梅の里みなべ2025」が、2月9日(日)、みなべ町保健福祉センター駐車場(同町東本庄)で開催。メインは高校生がウメを使った創作料理を調理・販売する「グルメ甲子園」で、県内外10校が出場します。他にも、ゲームやダンス・歌などのステージイベント、地域物産展、軽トラ市など、盛りだくさんの内容です。入場無料。

和歌山信愛高等学校「うめのさき」も出場します

グルメ甲子園は午前10時20分〜午後2時。絶対満足してもらえるおいしさです!

“うめぇチヂミwith3種のソース”を考案して出場する河本優衣さん、木村心咲さん、池内結香さん、蒸野菜々花さん(左から)

 

毎年、大勢の人でにぎわいます

お問い合わせ 0739(33)9310
みなべ町うめ課(午前8時半~午後5時15分、祝日を除く月~金曜) 
ホームページ https://www.town.minabe.lg.jp/ume_kanko/02/02/2023042000010.html

100種類以上の梅酒の飲み比べを楽しもう

梅酒おたのしみ処 うめ子

JR紀伊田辺駅から徒歩約1分。白いのれんが目印です

 梅酒を切り口に地域を盛り上げようと、梅酒ツーリズム事業実行委員会が昨年末、JR紀伊田辺駅前の商店街に、梅酒の飲み比べと梅酒づくりが体験できるスポット「梅酒おたのしみ処 うめ子」をオープン。常時、100種類以上の梅酒がそろっています。味、色、香りなど、好みに合わせて選べる飲み比べセットは10種類以上(880円から)。ノンアルコールのオリジナル梅ドリンクもおすすめです。

さまざまな梅酒・梅ドリンクが並ぶ店内

テーマごとに厳選された3種飲み比べセット(880円から)

写真提供=オレンジ・アンド・パートナーズ、紀州梅の会、田辺市、みなべ町

お問い合わせ 0739(22)2180
住所 田辺市湊14-6
営業時間 午後1時~午後7時(OS6時45分)
定休日 月・火曜 
ホームページ https://www.tb-kumano.jp/umeshu-tourism/umeko/

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