医療のデジタル化が進む中、禁煙治療中の患者をサポートするスマートフォンアプリが昨年12月、国内で初めて治療用アプリとして保険適用されました。禁煙外来での治療、アプリの特徴などについて、和歌山ろうさい病院第二呼吸器内科部長・庄野剛史さんに聞きました。
禁煙の2本柱はニコチン離脱と行動変容
喫煙は、がんや生活習慣病(高血圧や脂質異常症)など、さまざまな病気のリスクになるとされています。日本人の喫煙率(JT調べ)は、1966(昭和41)年の成人男性83.7%、成人女性18%をピークに減少し続け、2018(平成30)年で成人男性27.8%、成人女性8.7%に。しかし、健康に悪いと分かりつつも、習慣化してなかなかやめられない人も少なくありません。
「禁煙の2本柱は“ニコチン依存症を取り除く”“(日常生活での)行動を変える”です」と話すのは、禁煙外来を行っている、和歌山ろうさい病院第二呼吸器内科部長・庄野剛史さん(写真)。続けて、「たばこに含まれるニコチンは脳に働きかけ、リラックスや眠気を取るといった症状をもたらします。そのため、たばこを吸わないと、イライラしたり、集中力が低下したりする禁断症状が起こってきます。長年喫煙している人は、食後や寝起きなど、喫煙が習慣化していることが多いため、行動変容が大切です」と説明します。
禁煙外来は12週間で5回の診療が基本。吐く息がたばこによってどのくらい汚れているかを調べる一酸化炭素(CO)濃度の測定やニコチン依存症に対応した薬(貼り薬か飲み薬)の処方、カウンセリングが行われます。同病院受診者の禁煙達成率は約70%。庄野さんは「看護師や事務員みんなでフォローする他、禁煙のためのサポートメールサービスも活用しています」と伝えます。
禁煙外来は、通院と通院の間の意識付けと行動変容をどう定着させるかがカギ。そんな中、昨年12月、治療を補うものとして禁煙治療用アプリ「キュア・アップSC」が国内で初めて保険適用されました。医師が処方し、患者がスマートフォンにダウンロード、呼気CO濃度の測定機器と合わせて使用。患者の状況に合わせた助言や動画などで禁煙を支援する仕組みです。庄野さんは「今まで補えなかった患者の支援に役立つでしょう」とし、今後、導入を検討していくとしています。
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