和歌山県、旬の魚を訪ねて漁港巡り
伝統漁法と海の環境に恵まれた加太漁港

リビング和歌山2025年3月22日号「和歌山県、旬の魚を訪ねて漁港巡り 伝統漁法と海の環境に恵まれた加太漁港」

 「さかなをたべよう!」キャンペーンを展開中の全国リビング新聞ネットワーク。今回は和歌山市の加太(かだ)漁港で獲れる真鯛(マダイ)のおいしさに迫ります。

春先が旬のいきのいい真鯛

疑似餌

漁師さんたち自作の漁具。疑似餌にそれぞれの工夫がされている

地域の絆で漁場を守り育てる
加太の真鯛のおいしさの理由

 和歌山市の北西部にある加太は、和歌山市民にとって海水浴場としても人気の風光明媚(めいび)な港町。和歌山市駅から各駅停車の〝めでたい電車〟に乗って約25分で行ける身近な観光地です。

「友ケ島水道とその周辺海域は、真鯛の産卵場であり越冬場でもあるので、一年中真鯛が釣れるんですよ。春になると産卵を控え栄養分をしっかり蓄えた真鯛が、太平洋から瀬戸内の方へとのぼってくるのですが、その鯛がきれいな桜色をしているため桜鯛とも呼ばれています」と説明してくれたのは、加太漁業協同組合・組合長の市川智司さん。

加太の真鯛は、プレミア和歌山にも登録され〝明石(あかし)鯛〟や〝鳴門(なると)鯛〟と並び、トップブランドとして取り扱われるほどのおいしさだといわれます。

「おいしさにはいくつかの理由があるのですが一番は、真鯛に傷を付けない伝統的な一本釣り漁法だからだと思います。加太でも刺し網漁はありますが、9割は一本釣り。網の場合は、水揚げする際に魚が暴れ身が傷みますが、一本釣りの場合は、素早く釣り上げられ、ほとんど魚に触れることなく船内の生簀(いけす)に放たれるので身が傷みません。さらに漁場は、加太漁港から船で10分もかからないほど近く、生きたまま市場に水揚げされます。だか

ら新鮮というより、ほんの数分前まで目の前の海で泳いでいたんですからね(笑)」。

 市川智司さん(左)小鳥浩さん(右)

市川智司さん(左)小鳥浩さん(右)

片手で操船、片手で魚を釣る
アクロバティックな一本釣り

 また一本釣りといっても、加太の伝統的な一本釣りは竿(さお)を使わない独特な手法です。漁場は〝中の瀬戸〟と呼ばれる狭い海域。そこに何隻もの船が集まり、ぶつかりそうになりながら潮の流れに乗り、左手で操船、右手で魚を1人で釣ります。竿だと素早く対応できないからだそうです。また使用される漁具(写真左)は、木枠に錘(おもり)のついた仕掛け糸を巻きつけた簡単なもの。小さなビニール片の疑似餌も漁師たちの手作りです。

「それと加太では、漁だけでなく釣りを行う時でさえ、まき餌を禁止しています。だから魚たちは天然の餌しか食べることがなく、身が臭くならず、おいしいんですね。そして自分たちで休漁日や時間制限などを設け、魚の取りすぎなどにも注意してきました」と語るのは同専務理事の小鳥浩さん。

元々、加太沖は瀬戸内海と紀伊水道がぶつかるところなので、餌資源が豊富でまき餌をする必要もなく、また行わないことで美しい海が守られます。海の環境が健全に保たれると、海藻や稚魚が育まれ、海の生物多様性が守られてきました。

加太の漁師さんたちは、SDGs(※)という言葉すらなかった時代から、地域の絆と伝統ある一本釣り漁法を通じて自然環境を保護し、自分たちの未来と、加太の真鯛のおいしさを守ってきたといえます。

※SDGsとは、人類がこの地球で暮らし続けていくために2030年までに達成すべき持続可能な目標

加太漁協直営店だから
魚は全て、新鮮そのもの!

 加太の新鮮でおいしい鯛を食べたいなら、毎月第1土曜日に、加太大波止近くで開催される加太昼市がおすすめです。加太漁業協同組合が運営しているから魚はどれも新鮮。売り切れごめんですが、生簀で泳ぐ魚を必要に応じてその場でさばいてくれ、加太の豊富な海の幸を鮮度・味ともに最高の状態で持ち帰ることができます。

篠原さん

「購入いただいた魚は、3枚下ろしまでいたします。遠慮なくお声がけください」と篠原さん

また、普段でも美味しい魚を食べたいなら、加太昼市を開催する加太鮮魚さんをぜひ訪れよう。一般のお客さんでも気軽に入店でき、購入が可能な常設店です。仲買人でもあるスタッフが、水揚げされたばかりの魚をその場で競り落とし、真横にある生簀に。サバやタコもありますが、やはりおすすめは、その生簀で元気に泳ぎ回る真鯛。「加太の漁師さんは魚の扱いが丁寧で上手なんですよ。魚にとって人間の手の温度は熱く、直接触るだけで身は劣化してしまうそうです。だから釣り上げた魚にほとんど直接手でさわらないんですね」と語るのは同社で活魚販売を担当する篠原將朗さん。他にも深場で釣り上げた魚は、水圧差の関係で浮き袋が大きく膨れ、そのまま船の生簀に収容してしまうと、すぐに死んでしまいます。そこで、肛門から棒状のものを突き刺して浮き袋の空気を抜くなどの処理を手早くするそうです。

「当社の鯛は、加太の飲食店だけでなく、和歌山市内や大阪の料理店にも直送しています。真鯛はまさに〝魚の王様〟。加太に観光の際でも、ぜひお立ち寄りください」

御手洗和昭さん

鯛を持つ漁師の御手洗和昭さん

加太鮮魚

電話番号 073(459)1268
住所 和歌山市加太141-5
営業時間 午前8時〜午後3時
定休日 問い合わせを
駐車場 あり
HP http://www.jf-kada.com/sengy

加太漁業協同組合

電話番号 073(459)0062
備考 加太昼市の開催はHPにて確認してください。

加太の真鯛を食べよう!!

加太MAP

新鮮そのもの! 食事どころで味わう

活魚料理いなさ

真鯛しゃぶしゃぶ小鍋セット 2970円

活魚料理いなさ 真鯛しゃぶしゃぶ小鍋セット 2970円

 創業74年を迎える老舗料理店で味わえる昼限定のメニュー。加太漁港で仕入れた真鯛を店内の生簀で泳がせ、さばきたてを提供。そのまま刺し身でも食べられる切り身を、好みの火の通り具合で。絶妙な厚みで食べ応えもあり、鯛の甘みを感じられます。吸い物も鯛のアラ入りで、うまみたっぷり!

その他のメニュー

★真鯛丼セット2530円
★お造りセット2530円
★真鯛のミニコース4400円
 (ー品、お造り3種、茶碗蒸し、鯛しゃぶ小鍋3枚、ご飯、香物、吸い物、デザート)

電話番号 073(459)0118
住所 和歌山市加太196
営業時間 午前11時~OS午後2時半、土・日曜は夜も営業(午後5時~OS8時)
※その他の曜日も夜は予約により営業
定休日 不定休
駐車場 あり
Instagram @inasa.kada

加太ゑびすや

海鮮丼1500円
海鮮丼1500円

魚のアラでとっただしをみそ汁に。豊かな味わい

 加太で揚がった魚介だけを刺し身にして丼に。しらすは隣町・西脇漁港の釜揚げ。伝統の一本釣りで漁師さんが丁寧に釣り上げた魚をできるだけ良い状態で提供したいと、注文が通ってから調理しています。この日は真鯛、マダコ、アジ、ハマチ、グレと魚種も豊富(日により異なる、鯛がない日もあり)。

その他のメニュー

★海鮮丼・魚増量(1.5倍) 2200円
★海鮮づけ丼 1500円
★大漁丼 2800円
 (魚・ご飯が通常の2倍)
★しらす丼1000円

電話番号 073(481)2282
住所 和歌山市加太211
営業時間 午前11時~OS午後5時 ※以降は予約により営業
定休日 水曜(火・木曜は休業の場合あり、予約があれば営業) 
駐車場 あり

SERENO -seafood&cafe-

加太の海の恵み定食1628円(数量限定)
加太の海の恵み定食1628円(数量限定)

刺し身4品にサクッとしたかき揚げ、小鉢、香物、みそ汁

 古民家をリノベーションしたおしゃれなカフェで味わう“加太ごはん”。魚はもちろんワカメやヒジキの海藻類も加太産、近隣農家が育てた野菜を使うこともあり、地元愛あふれる定食。季節の刺し身4品がきれいに盛り付けられています(写真は真鯛、アジ、ハマチ、タコ ※日により異なる、鯛がない日もあり)。

その他のメニュー

★加太の海の恵み定食
 ドリンクセット+440円
 ドリンク&スイーツセット+880円
★フィッシュタコスランチ(加太産フリットフィッシュのタコスプレート)1540円

電話番号 073(499)7017
住所 和歌山市加太1455
営業時間 午前11時半~午後5時(ランチはOS2時半 ※なくなり次第終了)
定休日 火・水曜
駐車場 あり
Instagram @___sereno___

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