和歌山市で「地域バス」実証運行
- 2022/11/10
- フロント特集
和歌山市内で今月から4カ月間、公共交通の利用が不便な7地区で「地域バス」の実証運行が始まっています。「地域住民の足」として根付かすことができるのか、地域の未来を見据えた取り組みについて伝えます。
地域住民が主体となって運行
買い物など、まずは体験して!
地方のバスや鉄道といった「公共交通」の危機が取りざたされて久しくありません。和歌山市の路線バスの年間利用者は年々減少し、20年度は新型コロナ感染症の影響で前年と比べて半減(上グラフ)。利用者の少ない路線は維持が厳しく、廃線になることも。同市内を走る路線バスはこの10年間で6路線21系統が廃止されています(右図)。
しかし、自家用車を使うなど、移動に不便のない人は自分ごととして捉えにくいもの。交通ネットワークやまちづくりを研究する和歌山大学経済学部・辻本勝久教授は、「車移動の人も高齢になり、免許返納などで移動手段がなくなる可能性があります。放っておくと買い物難民にもなりかねません」と指摘。続けて、「行政のサポートを受けながら地域の人が主体となって運行しているのが地域バス。県内でも地域の実態に応じてさまざまな形態が取られています」と話します。
そんな中、和歌山市内7地区で地域バスの実証運行がスタート。すでに本格運行している紀三井寺団地線を含め、利用料金は一律100円(未就学児無料)で、サブスクリプション方式の定期券も導入されています。同市交通政策課によると、期間終了後の運行については、今回の利用状況などによって決まる予定。
辻本教授は「実証運行で今後の課題も見えてきます。皆で考え、より暮らしやすくすることはまちの活性化にもつながります。まずは体験。買い物や最寄駅までなどいろいろな乗り方を楽しんでください」と話します。
以下で各ルートの詳細について紹介します。
来年2月まで、全地区1乗車100円で乗車可能
和歌山市内7地区8ルートで実証運行が開始されました。和歌山市交通政策課によると、7地区は路線バスの廃止などで公共交通への接続などが不便なエリア。商業施設や病院などを経由し、最寄りの鉄道駅やバス停に接続させることで、地域の特性に合った移動手段を検討していくというものです。バスは乗客9人~12人乗り。料金はすでに運行している紀三井寺団地線を含む、全地区1乗車100円。期間は来年2月28日(火)まで毎日運行(12月29日~来年1月3日除く)。
詳細・問い合わせ | 和歌山市交通政策課 運行に関する詳細は、同課のホームページ内か電話で確認 |
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電話 | 073(435)1016 |
バスの運行ルートを紹介
湊地区ルート(約8.4km)
湊文化会館▶湊4丁目▶鹿島建設前▶湊3丁目9▶湊5丁目6▶日本アクセス前▶大成木材前▶湊1丁目▶Kiyomi’s郷あゆむ前▶中洲出荷組合▶ガーデンパーク ※往路乗車・復路降車禁止▶サンキョー前▶和歌山市駅
有功地区ルート(約6.4km)
やまびこ公園▶ゆうやけ公園▶あさひ公園▶あおぞら▶東ニュータウン(上→三角公園→西公園→中央公園→下)▶西ニュータウン(さくら小公園→ポスト前)▶有功ヶ丘団地(1→2→3)▶オークワ六十谷店 ※往路乗車・復路降車禁止▶六十谷駅
木本・西脇地区ルート(約8.4km)
緑ヶ丘▶木ノ本ニュータウン▶警察学校前▶木ノ本ポンプ所前▶松源木ノ本店▶セブンイレブン和歌山西庄店▶ツルハドラッグ和歌山木ノ本店▶木ノ本こども園▶労災病院▶スーパーエバグリーン古屋店▶ジュンテンドー古屋店▶八幡前駅前▶松源西庄店▶西脇中学校前▶八幡台
川永地区ルート(約4.5km)
スーパーセンターイズミヤ紀伊川辺店▶神波▶川永団地バス停前▶川永団地2号棟▶ニューかわなが団地4号棟▶郵便局川辺集配分室前▶鴨居川団地前▶ノース・タツノⅡ前▶コンドーデンキ前▶紀伊駅西ローソン弘西店
安原地区ルート(約12.6km)
東部コミュニティセンター▶岡崎前駅▶東中学校前▶桑山▶吉原▶広原▶まきのクリニック前▶安原小学校前▶ENEOS江南店前▶松尾クリニック前▶本渡自治会館▶安原保育所▶若葉団地前▶セブンイレブン冬野店▶スーパー松源内原店
四箇郷地区ルート①(巡回・約9.2km)
シカゴテラス▶生協病院▶コープ中之島▶若宮八幡宮前▶Paltac前▶有本水源地前▶加納浄水場南▶松島北自治会館▶秀栄塾前▶スーパーエバグリーン四ヶ郷店▶加納団地自治会館前▶聞光寺▶シカゴテラス
四箇郷地区ルート②(和歌山駅・約3km)
シカゴテラス▶生協病院▶和歌山駅
四箇郷地区ルート③(和歌山市駅・約4.5km)
シカゴテラス▶生協病院▶和歌山市駅
紀三井寺団地
運行10年目に向けて
紀三井寺団地内を走る地域バスは、2013年4月から運行し、来年で丸10年を迎えます。きっかけは2009年10月、団地内を走る民間バスの路線が廃止され、住民の「なんとかならないか」という声を受けたことから。自治会でバス問題対策委員会を発足。和歌山市と協議を重ね、約3年半の月日を経て待望の本格運行へ。
しかし、継続には一定の乗車率を保つことが必要。紀三井寺団地地域バス運営協議会前々会長・小淵定美さん(写真左)は、「普段は自家用車を使っていても“いつか自分も必要に”、と定期的に利用する人もいます」と伝えます。順調だった乗客数が、コロナ禍で減少する中、車体広告で運行経費を確保するなど、知恵を出し合うことも多々。現会長・北岡博高さん(写真右)は「より便利で使いやすくするため、地域の皆で協力していければ」と話しています。